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中央本部

釜山から春川まで、涙をぬぐいながら映画に見入る人たちとの出会い

【2021年12月17日】

―映画『私はチョソンサラムです』韓国上映会に参加して―

韓統連中央本部 事務長 金昌五

 日本と韓国で自主上映が行われ、大きな反響を呼んでいるドキュメンタリー映画『私はチョソンサラムです』が、12月9日から韓国で劇場公開されることになった。それに伴い、金哲民監督から招待を受け、12月2日から11日まで韓国を訪問することになった。新型コロナによる厳しい入国規制がある中で、いくつものハードルを越えて「2週間の隔離免除許可」を得て、いよいよ12月2日の朝、関西空港に向かっていると金哲民監督から電話があった。「新型変異種オミクロンの発生に伴い、12月3日以降、2週間の隔離免除許可を得ている者も含めてすべて10日間隔離されることになりました」とのことだった。一日遅ければ韓国への出張を取りやめればならないところだった。

 強運にも恵まれ、予定通り12月2日午後2時に仁川空港に到着し、一日のみの検査隔離を経て、12月3日から公式日程が始まった。12月9日の劇場公開を前にして各地で試写会が行われていた。試写会を主催するのは、「キョレハナ(民族は一つ)」「朝鮮学校とともに歩む市民の会」「北側オリニ(子どもたち)栄養パン工場」「全教組(全国教職員組合)」「韓国進歩連帯」「進歩党」などの人たちだ。

 最初に参加したのは12月3日、慶尚北道・大邱(テグ)の上映会だ。会館の会議室などを借りて行う自主上映とは異なり、劇場公開前の試写会はすべて一般の映画館で行うことになっており、私は初めて映画館で映画『私はチョソンサラムです』を見ることになった。ゆったりとした座席といい、スクリーンの大きさといい、音響の迫力といい、日本で経験した自主上映会とはまったく別物だった。映画を見ながら客席にも目を向けたが、身を乗り出してスクリーンに見入る人、涙をぬぐう人の姿に胸が打たれた。映画上映後、金哲民監督と私が紹介され、司会者の進行のもと約1時間にわたり「観客との対話」の時間がもたれた。とてもなごやかな雰囲気の中で、活発な質疑応答と映画を見ての感想が語られた。劇場近くで行われた打ち上げは大いに盛り上がり、気がつけば午前1時だった。こんなに遅くまで飲んだのはいつ以来なのか思い出せないほどだった。

 映画上映会の合間をぬって12月5日には、自主民主平和統一民族委員会のユーチューブ生放送「民族委が会う」に出演した。金哲民監督とともに出演した対談は、映画『私はチョソンサラムです』の音楽を担当したノレペ(歌手グループ)・ウリナラのペク・チャ氏の司会で1時間にわたって放送された。

 12月6日には、慶尚南道・釜山(プサン)の上映会に参加した。折しもコロナ感染者が7千名を越えたということで、ワクチン接種完了・PCR検査陰性証明の確認などが厳格に適用されたため、会場まで来ながら映画を観られずに帰った人がいたのはとても残念だった。この日も「観客との対話」の時間がもたれたが、大邱上映会以上に多くの質問と意見が交わされ、その内容は釜山在住の統一運動家、キム・グアンス政治学博士がインターネット新聞「民プラス」で紹介されている(記事はこちらを参照)。

 12月7日には、ドラマ『冬のソナタ』で有名な江原道・春川(チュンチョン)の上映会に参加した。江原道は唯一南北にまたがる広大な道(どう)で、朝鮮に近い鉄原(チョロン)や東海(日本海)に近い江陵(カンヌン)などの遠方から2時間かけて映画を観に来た方が多数おられた。この日は、たまたま私の66歳の誕生日だったが、サプライズでバースデーケーキとプレゼントを用意してくださり、♪チュッカハムニダ・センイル(ハッピバースデー・トゥーユー)…の大合唱で祝ってくださった。

 12月8日には、京畿道・仁川(インチョン)の上映会に参加した。多くの若い学生たちが映画を楽しみにしていたが、コロナ感染者が急拡大したため参加できなくなったことをとても残念がっておられた。もちろん春川・仁川でも映画上映後に「観客との対話」が行われた。

 12月9日、いよいよ劇場公開の日を迎えた。劇場公開は、ソウル10ヶ所、釜山5ヶ所をはじめ全国43か所で行われるとのことだった。ソウル劇場公開の初日に当たるこの日の「観客との対話」には、金哲民監督と私とともに、映画には出演していないが映画上映を応援する立場で、東京オリンピック柔道銅メダリストの安昌林(アン・チャンリム)選手がボランティアで出演してくれた。

 今までの試写会とは異なり、劇場公開は一般の人が自らチケットを買い自分の観たい映画を観るというものだ。ちょうど正月映画の『スパイダーマン』も上映されていて、果たして何人入ってくれるのか金哲民監督はとてもやきもきしていた。韓国ではコロナによる規制で映画館の入場者数は客席数にかかわらず100名以下に制限されていたが、ほぼ定員いっぱいの100名近い方が鑑賞してくれた。それまでの試写会とは異なり観客のほとんどは20代の女性で、どうやら安昌林選手のファンが大半を占めていたようだが「安昌林選手に会いたくて来たが、とてもいい映画を観ることができて良かった」との感想が多数寄せられていた。

 この日で最後となった映画上映後の「観客との対話」。司会者に「最後に一言を」とマイクを向けられ、金哲民監督に感謝の言葉を贈った。「在日同胞に対する深い愛情と、祖国統一に対する情熱で、多くの人々に希望と勇気を与える映画『私はチョソンサラムです』をつくってくれた金哲民監督に、心から敬意と感謝の気持ちを伝えたいと思います。金哲民監督、本当にありがとう」。

 釜山から春川、そしてソウルの劇場公開まで、映画『私はチョソンサラムです』の韓国上映会で、多くの国内同胞と出会えたかけがえのない日々だった。

 『私はチョソンサラムです』の劇場公開は1月上旬までの予定で、その後はインターネットで有料配信される予定だという。