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ハリス米副大統領が訪韓、グローバル包括的戦略同盟が実働…朝鮮は弾道ミサイル発射

【2022年10月7日】

安倍晋三元首相の国葬に参列するため訪日したハリス米副大統領は9月27日、同様に訪日した韓悳洙(ハン・ドクス)首相と都内のホテルで会談し、米国の「インフレ抑制法(IRA)」によって韓国製電気自動車(EV)が不利益を受けるとの懸念に関して、「韓国側の憂慮はよく承知している」とした上で、「韓国メーカーのEV生産が米国内で始まるまでの過渡期の懸念を解消するための策について、韓国側との緊密な協議の下で引き続き模索していく」と述べた。趙賢東(チョ・ヒョンドン)外交部第1次官が会見で伝えた。

ハリス氏は29日、ソウルで尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と会談。尹大統領は「韓米同盟は朝鮮半島を超え、グローバル同盟に発展しており、軍事同盟から経済技術同盟に拡大している」と評価。「国民の自由、安全、繁栄を守る心強い支えとして、引き続き韓米同盟を発展させていきたい」と述べた。ハリス氏は「この70年間、韓米同盟は朝鮮半島とインド太平洋、そして世界で安全保障と繁栄の核心軸となってきた」として、「訪韓の目的は両国の力を強化し、共同の努力を強固にするため」と応じた。同会談について(韓国)大統領室は「台湾海峡と関連して平和と安定が重要だとする両国の基本的立場を再確認した」とし、米ホワイトハウスはハリス氏が「日韓関係改善の利益を強調した」とコメントした。

ハリス氏は、朝鮮との軍事境界線沿いにある非武装地帯(DMZ)を訪問し、「米国と世界は、北朝鮮(※正しくは朝鮮)がもはや脅威ではない安定した平和な朝鮮半島を追求する」と表明した。

一方、朝鮮は25、28、29、10月1日と4回、短距離弾道ミサイルを発射。韓米両軍は26~29日に東海(日本海)で原子力空母「ロナルド・レーガン」などが参加する合同海上演習を行ったのに続き、30日には韓米日が東海で朝鮮との対潜水艦戦を想定した合同演習を約5年ぶりに実施した。こうした合同演習とハリス氏の訪韓・DMZ訪問、10月1日の「国軍の日」などに朝鮮が反発しけん制したものだと韓国メディアは報じた。合同演習実施と弾道ミサイル発射の応酬はその後も続いた。

韓米両政府は5月の首脳会談で、韓米同盟を「グローバル包括的戦略同盟」にグレードアップすることに合意した。尹大統領が「韓米同盟は朝鮮半島を超え、グローバル同盟に発展しており、軍事同盟から経済技術同盟に拡大している」と評価したのは、まさにこの「グローバル包括的戦略同盟」を念頭に置いての発言だ。

しかし実態はどうだろうか。韓国政府は中国政府の憂慮を横目に、米国主導の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」や半導体供給網「チップ4」への参加を決定し対米協力姿勢を示した。それにもかかわらず、バイデン政権はIRAによる韓国製EVへの差別措置を取り、尹政権はこれに驚き米側の善処を哀願するばかりだ。すでに米議会を通過した同法に手を入れるのは不可能で、韓米間の各級会談で繰り返される米側の発言はリップサービスに過ぎない。

また、グローバル包括的戦略同盟の名の下に、米国政府は韓国を米国の新冷戦覇権戦略に組み込むことを既定方針としている。台湾有事への言及、韓米日合同軍事演習の実施、(韓米日軍事協力のための)韓日関係改善への圧力などはその実動であり、ハリス副大統領の訪韓目的はここにある。朝鮮の反発は当然だろう。

尹大統領はグローバル包括的戦略同盟を評価している場合ではない。このままでは国益を喪失し、米国の尖兵の役割を「グローバル」に担わされだろう。無条件の対米追従をやめ、自主的な姿勢で国益を守る政策へと転換しなければならない。