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尹錫悦大統領、英米カナダ歴訪…期待外れの「惨事外交」、批判集中・支持率低下
【2022年9月28日】
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は9月18日、英国女王エリザベス2世の葬儀に参加するため同国を訪問した後、米ニューヨークへ移動。20日、国連総会で就任後初の一般討論演説を行った。尹大統領はある国で個人の自由が脅威にさらされた時、共同体の構成員が連帯して脅威を取り除かなければならないと述べたうえで、「国際社会のどの国で自由が脅威にさらされても、国際社会は連帯して自由を守らなければならない」と力説した。尹大統領は国連発足後、最初の意味あるミッションは韓国を朝鮮半島唯一の合法的な政府と承認し、国連軍を派遣して韓国の自由を守ったことだったと述べたうえで、「国連の努力のおかげで現在の成長を達成した大韓民国は世界市民の自由を守るとともに、自由を広げて、平和と繁栄のために国連と共に責任を果たす」と明言した。
21日には国連総会出席のためニューヨークを訪問中の岸田文雄首相と約30分間会った。大統領府はこれを「略式会談」と発表、日本政府は会談形式ではなく「懇談」と発表した。韓日首脳会談が行われるのは中国で開催された韓中日首脳会談にあわせて当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と安倍晋三首相が会談した2019年12月以来となる。徴用被害者(徴用工)問題について、韓日外相はニューヨークでの19日の会談で、「外交当局間の建設的なやりとりを評価しつつ、協議を継続する」ことで一致した。両首脳はこの外相会談に言及して、外交当局間の協議を加速するようそれぞれ指示することを確認。尹大統領は韓国政府による解決策の検討状況について説明したとみられる。
また、尹大統領は感染症対策のための資金調達について協議するバイデン米大統領主催の会合に出席し、バイデン氏と立ち話をした。韓国大統領室関係者は記者団に「尹大統領は出席対象者ではなかったが、会合に招待された」と明らかにした。尹大統領は会合後、各国首脳が自由に会話を交わす途中、バイデン大統領と約50秒間(48秒)立ち話をした。会話の内容は明らかになっていない。尹大統領は訪米後、カナダを訪問した。
尹大統領のこうした歴訪を振り返り評価する。
尹大統領は英女王の弔問を交通事情を理由に取り消し、葬儀とレセプションにだけ参加した。弔問外交だとしながら弔問ができず、また遅く到着した参加者の中でも弔問した首脳らがおり、尹大統領と大統領室に対する「弔問バッシング」が沸き起こっている。
国連総会演説では「自由」をキーワードに国連と国連を主導した米国を持ち上げた。
韓日首脳会談については、大統領室は今月中旬、国連総会に合わせた韓日首脳会談の開催に「合意した」と発表したが、日本側は韓国が会談の開催を公表したことに不快感を示すなど、両国は今回の会談が行われるまで神経戦を繰り広げた。こうしたぎくしゃくした状況を反映し、会談の冒頭発言は公開されず、記者も同席しなかった。また、韓国が「略式会談」と表現したのに対し、日本側は「懇談」と発表。日本側が「懇談」と位置付けたのは、徴用被害者問題の解決策を韓国側が提示しない限り、正式な会談に応じないとする日本政府の強硬姿勢があらわれたもの。韓国政府は「首脳同士が会ったこと自体が重要だ」と評価に努めたが、韓国政府の前のめりの対日低姿勢は「屈辱韓日懇談」として批判を浴びている。
韓米首脳会談は、バイデン大統領がニューヨーク滞在期間を短縮したことで見送られたといわれる。韓米首脳会談が開催されれば、米国の「インフレ抑制法」による韓国製電気自動車(EV)の差別問題が取り上げられることが強く期待されていた。48秒の立ち話では、懸案に触れることは到底不可能。EV差別問題の解決は遠のいた。
また、尹大統領がバイデン大統領主催の会合に出席後、朴振(パク・ジン)外相らと一緒に歩きながら、「議会でこの野郎どもが承認してあげなかったら、バイデンが赤っ恥だ」と、低俗な言い方で話したように聞こえる映像がカメラに捉えられ、物議を醸している。
「共に民主党」などの野党は、弔問問題と期待はずれの韓米・韓日首脳「会談」をあげて、尹大統領の外交力を批判、「外交惨事」だと政権への攻勢を強めるとともに、尹大統領の「低俗発言」に「驚がくを禁じ得ない」とした。尹大統領は帰国後、メディアと野党を攻撃することで、こうした批判をかわそうと懸命だ。
世論調査会社の韓国ギャラップが23日発表した調査結果によると、尹大統領の支持率は再び28%と20%台に下落、不支持率は61%となり、拙速計画で批判され撤回した「大統領執務室の移転・迎賓館問題」とあわせて尹大統領歴訪への批判的反応が示された。
外交、特に対米・対日における自主性の欠如が混乱を生み、いわゆる「国格」をき損する「外交惨事」を引き起こした。また、尹大統領が主張する専門(政治)家を使う「管理型政治」もまったく機能せず、「外交惨事」の原因をなしている。外交だけでなく内政でも成果があがらない尹政権。国民の不満と不信は増大するばかりだ。