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与党「国民の力」が新たな非常対策委員会設置へ…李前代表と裁判所判断に対抗
【2022年9月9日】
与党「国民の力」は9月2日、常任全国委員会を開催し、非常対策委員会体制への移行の要件となる「非常状況」を具体的に記載した党憲(党綱領)改正案を全会一致で承認。5日に開催した全国委員会で承認し、新たな非常対策委員会の設置に向けた条件を整えた。同党は暫定的な党トップとなる非常対策委員長を選定するなどし、秋夕(中秋節、今年は9月10日)連休入り前の非常対策委員会発足を目指している。
同党は7月に李俊錫(イ・ジュンソク)前代表が党員資格停止6カ月の懲戒処分を受けた後、8月に非常対策委員会体制に移行し、李氏を代表から解任した。これに反発した同氏は非常対策委員会体制移行の効力停止を求める仮処分を申し立てた。地裁は主張の一部を認め、非常対策委員会を置くほどの「非常状況」は同党には生じていないとし、朱豪英(チュ・ホヨン)氏の非常対策委員長としての職務執行を本案判決の確定時まで停止すべきとの判断を示した。
一方、韓国世論調査会社・リアルメーターが9月5日に発表した調査(8月29日~9月2日、全国の18歳以上の2516人を対象に実施)結果によると、尹大統領の支持率は32.3%で前週から1.3ポイント低下した。不支持率は1.6ポイント上昇の64.9%となった。
同社は「大統領室の『尹核関(尹大統領の核心関係者)』(と呼ばれる)秘書官・行政官の入れ替えでムード刷新を図ったものの、支持率は4週ぶりに下落した」と指摘。保守層、大邱・慶尚北道など従来の支持基盤での支持率急落が目立つという。
また、与党の内紛が、尹大統領と尹核関に対する李前代表の攻撃に党が対抗するパターンになっていることから、大統領支持率は当分低調に推移するとの見通しを示した。
非常状況を裁判所に認められなかった国民の力は、具体的に党憲に書き込むことで、新たな非常対策委員会体制への道を開いた。これが李前代表と裁判所判断への対抗策であることからすると、内紛は容易には沈静化しないだろう。安保、経済、民生と課題が山積みの中で、政権と与党は役割を果たせず、国民の不信は増大するばかりだ。