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尹政権、南北関係改善に向け「大胆な構想」を提案…李明博政権の「非核・開放3000」の再版、韓米合同軍事演習は強行…朝鮮は拒否

【2022年8月26日】

韓国政府は8月15日、ソウル・龍山の大統領室庁舎前で光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)77周年記念式典を開催した。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は演説で、「北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)の非核化は朝鮮半島と東アジア、そして全世界の持続可能な平和に必須のもの」だとし、「北朝鮮が核開発を中止し実質的な非核化へと転換するならば、段階に合わせて、北朝鮮の経済と民生を画期的に改善する大胆な構想を提案する」と述べた。

「大胆な構想」の内容としては、「北朝鮮に対する大規模食糧供給プログラム、発電所・送配電インフラ支援、国際貿易のための港湾と空港の発展プロジェクト、農業生産性向上のための技術支援プログラム、病院と医療インフラの発展支援、国際投資・金融支援プログラム」を羅列した。大統領室の金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長は同日の記者会見で、「大胆な構想」に関し「政治と軍事部門の協力ロードマップ(行程表)も準備してある」と補足説明した。

尹大統領は就任から100日となる17日、大統領室庁舎で初の公式記者会見を行い、「大胆な構想」に言及しながら、朝鮮が核開発を中止すれば、朝米関係の正常化を含む外交的支援と通常兵器の軍縮議論を行うと表明した。

今回の「大胆な構想」は、大統領就任式(5月10日)で明らかにした「大胆な計画」を具体化したものだが、朝鮮の非核化措置に合わせて韓国が経済支援を行う方案は、すでに失敗した李明博政権の「非核・開放3000」の再版といわざるを得ない。

 そもそも、南北共同宣言と朝米共同声明で明らかなように、「朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」であり、「先非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化と平和体制構築の同時履行」である。また、朝鮮が敵視行為として中止を求める韓米合同軍事演習が、「大胆な構想」の提案時にはすでに「乙支フリーダムシールド」として、22日から規模を拡張して実施することが決定されている。さらには、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)は戦勝69周年記念式(7月27日、朝鮮戦争停戦協定締結日)の演説で、朝鮮の核・ミサイルへの対応能力拡充に動く尹政権を名指しで批判している。

 結局、金与正(キム・ヨジョン)党副部長が19日の談話で、「大胆な構想」について「愚かさの極地」と非難したうえで、「絶対に相手にしない」と拒否する意思を明らかにした。「大胆な構想」はわずか4日後にはしぼんでしまった。

 尹大統領の就任100日記者会見は、南北関係だけでなく他の分野も含めて、これまでの国政に対する診断とこれからの対策、失政に対する反省と謝罪がないまま自画自賛に終始した。尹大統領は「国民の応援も、厳しい叱責もあった。国民が心配しないよう最善を尽くして国民の意をくみ取りたい」と述べているが、具体性のない決意を繰り返すだけでは、支持率20%台の危機的状況を抜け出すことはできないだろう。