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国情院が前元院長を告発…前政権・前与党に対する尹政権の露骨な「北風」攻撃

【2022年7月22日】

2020年に起きた朝鮮軍による韓国公務員男性射殺事件と、亡命を希望していたとする朝鮮の住民2人を朝鮮に送還した2019年の事件を巡り、国家情報院(国情院)は、当時、国情院長を務めていた朴智元(パク・チウォン)氏と徐薫(ソ・フン)氏を大検察庁(最高検)に告発した。国情院が7月6日発表した。

国情院が独自の調査を行った結果、朴氏については、黄海を漂流していた韓国の男性公務員が朝鮮軍に射殺された2020年の事件を巡り、諜報に関連した報告書などを無断で削除した疑いがあるという。同事件を巡って海洋警察は、男性が行方不明になった8日後に中間捜査結果を発表し、軍当局と情報当局が傍受した朝鮮の通信内容や本人の債務などを根拠に、男性が自ら朝鮮に渡ろうとしたとの判断を示した。だが、先月に発表した最終捜査結果では、自らの意思で越境したと断定できる根拠は見つからなかったとして、約2年前の判断を覆した。

徐氏については、海上で韓国軍当局に拿捕された漁船に乗っていた朝鮮住民2人を朝鮮に送還した2019年の事件を巡り、当時行われていた合同調査を強制的に早期終了させた疑いがあるという。2人は漁船内で乗組員16人を殺害して逃走中だったとされる。亡命の意思を示していたものの、凶悪犯罪者は国内関連法における保護の対象ではなく、国際法においても難民として認められないなどとして、朝鮮に追放された。統一部は、事件当時は2人が凶悪犯という事実に焦点を合わせ、強制送還の正当性を強調したが、現在は当時の写真と映像を相次いで公開して亡命の意思があったことを強調するなど、事実上、立場を覆した。朴氏は6日、「全くの事実無根」と反論した。徐氏は現在、米国に滞在している。

与党「国民の力」は14日、2019年の事件について国政調査権の行使や特別検察による調査などの可能性を示唆し、文在寅(ムン・ジェイン)前政権と当時与党だった野党「共に民主党」に対する攻勢を強めている。大統領室も13日、真相究明を進めるとの方針を示したが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は18日、「(大統領として)全ての国の事務が憲法と法律にのっとって行われるべきだという原則論のほかに言うことはない」と、これまでと異なり支持率急落を意識して踏み込んだ発言を避けた。共に民主党は「16人を殺害した猟奇的な凶悪犯までも韓国の国民として受け入れるべきだというのか」と反論し、「3年前の事件を持ち出して前政権を追い込もうとしている」と与党を批判した。

一方、朝鮮の対外向け週刊紙「統一新報」は9日、対外宣伝メディア「統一のメアリ(こだま)」は13日、尹政権が両事件を政治的に利用する「新北風」に走っていると批判した。

国情院は5月末に金奎顕(キム・ギュヒョン)氏が院長に就任後、両事件の再調査チームを内部に構成したが、わずか一か月後に結論を出し、二人の前元院長を告発した。尹大統領は再調査の過程に合わせるかのように、2020年の事件について先月17日に「以後さらに捜査が進展するのでは。待ってみてください」、2019年の事件について「多くの国民が不審に思い問題提起されているが、一度調べているようだ」と発言。また、尹大統領は検事時代の側近であった曺尚駿(チョ・サンジュン)弁護士を国情院の人事と予算を統括する企画調停室長に任命していた。前元院長の告発は大統領の意中が実現したものだ。

尹大統領が布陣した検察出身者が過去の事件をむやみに取り上げ利用して、前政権と当時の与党を「親北勢力」と非難し追い込もうとしている。尹政権の朝鮮との対決姿勢が、国内では「北風」攻撃としてあらわれているとみることができる。政権にとって南北関係は政治的判断の最高の政治領域であり、尹政権のこうした政治攻撃は決して許されるものではない。支持率急落から国民の目をそらすことはもちろん、国民の支持を得ることもできない。