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NATO首脳会議「戦略概念」改定、中ロは強く反発 韓米日首脳会談「3カ国軍事協力」確認、8月下旬から韓米合同軍事演習
【2022年7月15日】
スペインのマドリードで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は6月29日、向こう10年間の行動指針を示す「戦略概念」を12年ぶりに改定し、ロシアを安全保障の「最大で直接的な脅威」と位置付けた。ロシアに対抗するため、東欧を中心にNATOの防衛態勢を長期にわたって大幅に増強する軍拡計画を確認した。戦略概念で具体的な国を「脅威」と位置付けるのは冷戦後初めてで、大きな転換となる。
戦略概念としては、中国に初めて言及。「中国の野心や威圧的な政策はNATOの利益や安保、価値観への挑戦」と指摘して、対抗する姿勢を明確化。またロシアと中国の戦略的な連携の深まりが、「ルールに基づく国際秩序をむしばんでいる」と警戒感をあらわにした。
またインド太平洋の情勢が「欧州・大西洋の安全保障に直接影響する」として、首脳会議に招いた韓国、日本、ニュージーランド、オーストラリアのパートナー国との連携を確認。4カ国による首脳会談と韓米日3カ国首脳会談も開かれた。
およそ5年ぶりの3カ国首脳会談では、核・ミサイル開発を進める朝鮮への対応についての議論が主題となった一方、対中国を念頭に太平洋地域における3カ国の軍備強化を確認した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、朝鮮の核・ミサイルの高度化に対する3カ国の協力の重要性を指摘。大統領府の発表によると、尹大統領は朝鮮の挑発には強力に対応していくと表明した一方、朝鮮を対話のテーブルに戻すための協力を呼びかける意向を示した。バイデン大統領は「われわれ3カ国の協力は、朝鮮半島の完全な非核化と自由で開かれたインド太平洋の実現という共通の目標の達成に向けて不可欠だ」と述べ、太平洋地域における対中国軍備網の連携を強調した。岸田首相は、核実験を含めた朝鮮の挑発行為の可能性への懸念に言及した上で、「日米同盟、米韓同盟の抑止力を高めることを含め日米韓の連携強化は不可欠だ」と主張した。
NATOの新戦略概念にロシアと中国は当然、強く反発。また、朝鮮外務省は11日「米国は今回のNATO首脳会議を通じて、欧州の『軍事化』とアジア太平洋地域の『NATO化』を実現し、中ロを同時に抑制し包囲しようとしており、米日南(韓国)3カ国軍事同盟をその実現のための重要な手段としている」と非難した。さらに、米国の核戦略資産(核兵器搭載爆撃機、水中発射核ミサイル・SLBM搭載潜水艦など)が動員された韓米合同軍事演習が実施される場合、朝鮮の対応措置を誘発して「核戦争」につながる可能性があると警告し、「造成されている情勢は国家防衛力強化の切迫性をさらに高めている」と主張した。
韓米は8月22日から9月1日まで大規模な合同軍事演習を行う予定。コンピューターシミュレーション方式の合同指揮所訓練(CCPT)のほか、野外での実動訓練の実施も検討しているとされる。
NATOの新戦略概念はロシアを「最大で直接的な脅威」と位置付け、中国がNATOの利益や安保、価値観に挑戦していると指摘した。また中ロの戦略的な連携の深まりに警戒感も示した。NATOは以後、中国をけん制するために、欧州をこえてインド太平洋まで活動の範囲を広げ、それは米国がインド太平洋戦略の下で主導する対中国包囲網と重なりながら結合することになる。
今回のNATO首脳会議に招請された韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランドはインド太平洋地域のパートナー国として、NATOとの協力を積極的に求められ応じる関係が強化されていく。
韓米日首脳会談では、米国のインド太平洋戦略の下、対朝鮮に加えて対中国も視野に入れた韓米日3カ国軍事協力の必要性が確認された。同盟関係にある韓米、日米の軍事協力を進めながら、いずれは実質的な韓米日3カ国軍事「同盟」を構築しようとする意図だ。当然、その前提として韓日関係の「改善」が求められ、「改善」に向けた動きがすでに始まっている。
5月に開催された韓米首脳会談で、両首脳は韓米同盟を地域と分野をこえた「グローバル包括的戦略同盟」へと格上げすることに合意、韓国はバイデン政権の「新冷戦」覇権戦略の重要なピースとして確実にはめ込まれた。NATO首脳会議を経て8月下旬から強行されようとする韓米合同軍事演習は、朝鮮だけでなく中ロをも想定し、そして韓米日軍事協力をも意識したものとなるだろう。
「反米自主」と「反戦平和」の旗をさらに高く掲げなければならない情勢を迎えている。朝鮮半島にとどまらない軍事緊張を引き起こす韓米合同軍事演習の中止を強く求める。