情勢コーナー
朝鮮の弾道ミサイル発射に韓米・日米の対抗軍事行動、進む韓米日軍事協力…尹政権は米国に対する追従姿勢を改めよ!
【2022年6月17日】
韓米日3カ国は6月3日、朝鮮担当高官による会合をソウルで開いた。米国務省のソン・キム担当特別代表は冒頭、朝鮮が7回目の核実験を準備していると指摘し、「韓国、日本との緊密な協力により、あらゆる状況に備える」と述べた。キム氏は、朝鮮半島の完全な非核化という目標に変わりはないとし、「違法で不安定を招く北朝鮮(※正しくは朝鮮)の行動には代償が伴う」と警告。そのうえで、前提条件なしの対話という提案に前向きに応じるよう朝鮮に促した。韓国外交部の金健(キム・ゴン)朝鮮半島平和交渉本部長も韓米日3カ国の協力は欠かせないとし、日本外務省の船越健裕アジア大洋州局長は、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権下で3カ国の協力が一段と進展することに期待を示した。3氏は会合で、朝鮮の核実験の動きなど朝鮮半島情勢に対する評価を共有し、協力強化策を議論した。核実験の可能性に関連して、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は8日、記者団に対し、「非常に注視している」と述べ、核実験を強行した場合は「断固たる対応」を取ると警告した。
こうした中、朝鮮は5日、短距離弾道ミサイル8発を発射した。金健氏と滞在中のソン・キム氏はソウルで緊急会談を行い、船越氏を加えた3者電話会談も行った。3氏は、朝鮮の弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会の多くの決議に反するもので、朝鮮半島と地域の緊張を高める挑発だと指摘するとともに発射を強く非難した。尹大統領は国家安全保障会議(NSC)終了後に報告を受け、常時の対応態勢を強固に維持し、韓米ミサイル防衛訓練を含む韓米の拡大抑止力と連合防衛体制を持続的に強化するよう指示した。韓国政府は8日、国会で開かれた政府と与党、大統領室による協議で、朝鮮の弾道ミサイル発射に対応するため、軍の「韓国型3軸体系」を一層強化していくと表明した。
朝鮮が短距離弾道ミサイル8発を発射したことに対抗し、韓米両軍は6日に地対地ミサイル「ATACMS」8発を東海(日本海)上に発射し、最新鋭のステルス機を含む戦闘機20機を黄海上空に飛行させ、空中での武力も誇示した。自衛隊と米軍は5日に共同弾道ミサイル対処訓練を行った。
中国外交部の趙立堅報道官は8日、韓米の対抗したミサイル発射に対し「関連国は冷静な姿勢を維持し、現在の緊張局面を激化させるどのような行動も避けるよう望む」と述べた。
韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防部長官は11日、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)が開かれているシンガポールで、オースティン米国防長官、日本の岸信夫防衛相との3カ国国防相会談に臨んだ。李長官は会談後、記者団に朝鮮の核・ミサイル脅威に対する韓米日の安全保障協力の重要性で一致し、協力の意思を互いに確認したと説明した。また、韓米日の共同訓練について「包括的水準で議論した」とし、ミサイル警報訓練や弾道ミサイルを探知・追跡する訓練などについて具体的に協議したと明らかにした。
一方、国連総会は8日、安全保障理事会で先月26日、対朝鮮制裁を強化する米国主導の決議案が、中国とロシアの拒否権行使により否決されたことを受け、両国に説明を求める会合を開いた。会合は、安保理で5常任理事国が「拒否権」を乱用するのを防ぐため、4月に総会が採択した決議に基づくもので、初めて開かれた。
多くの加盟国が朝鮮や中ロの拒否権発動に非難の声を上げたが、中ロは「朝鮮の懸念に応えていない。米国には制裁緩和や韓米合同軍事演習の終了などできることが多くある」「制裁強化は状況を悪化させるだけだ」と米国批判を展開した。米国は「中国、ロシアによる拒否権行使は、朝鮮に(ミサイル実験などへ)暗黙の了承を与えたことになる」と主張。韓国の趙顕(チョ・ヒョン)国連大使は、朝鮮の弾道ミサイル発射を「最も強い言葉で糾弾する」としながら、挑発をやめて「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」による朝鮮半島の平和に向け、対話の要請に応じるよう促した。これに対し、朝鮮の金星(キム・ソン)国連大使は「自衛権の行使は誰も否定できない主権国家の適法な権利だ」として、兵器の近代化は米国の直接的脅威から安保と根本的利益を守るための適法な自衛権だと主張した。
米国は朝鮮の短距離弾道ミサイルの発射に続いて、核実験の可能性を取りざたしながら、朝鮮に対する国際的な「警戒」世論の水位を高め、そうした中、韓米・日米の対抗軍事行動が展開されたように、韓米日軍事協力を強化し韓米日「軍事同盟」へと進展させることを目標にしている。しかし核実験はいまのところ行われていない。米国政府は、朝鮮の「核実験」を口実に、韓米日の軍事協力・軍事強化を進めているといっても過言ではない状況だ。いわゆる「新冷戦」の下で、米国が主導する国連を舞台にした制裁などの国際的圧迫は、中ロの反対でいまや機能しない。国連があてにならないとなると、米国政府は朝鮮に対する韓米日軍事協力体制の強化に、ますます力を入れるだろう。
尹政権は5月の韓米首脳会談で韓米同盟がグローバル包括的戦略同盟へと引き上げられたとし、同盟関係の地域と分野における拡大を求めた米国に対する追従姿勢を明らかにした。実際、尹政権は米国のインド太平洋戦略により対中包囲網に組み込まれ、また、北大西洋条約機構(NATО)との関係を強化しながら、ウクライナ事態の中で対ロ包囲へ加わる可能性も否定できなくなっている。韓国はグローバル包括的戦略同盟の名の下に、米国政府が展開する覇権戦略の前進基地の役割を担わされようとしている。朝鮮に対し対決姿勢を示す尹政権では、南北関係の改善は進展しない。中ロとの関係悪化も避けられない。尹政権は米国への追従をやめ、朝鮮に対する対決政策を放棄し南北合意の実践を通じて関係改善を図り、中ロとの関係も維持すべきである。尹大統領の覚醒を強く促す。