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情勢解説

6月1日に韓国、地方統一選挙…与党圧勝、第一野党惨敗、進歩党躍進

【2022年6月6日】

韓国で6月1日、統一地方選挙が投開票された。地方選は4年に1度で、17広域自治体(道・広域市)の首長(知事・市長)と教育監(教育委員会に相当する教育庁のトップ)をはじめ、基礎自治体首長、広域自治体と基礎自治体の議会議員などを選出する。今回は国会議員の補欠選挙も7選挙区で実施された。

与党「国民の力」は広域自治体17カ所の首長選のうち、首都圏のソウル市や仁川市のほか釜山市など12カ所で当選し圧勝した。現職のソウル市長、呉世勲(オ・セフン)氏は再選を果たし通算4期目となった。補欠選挙は4カ所を維持し1カ所を第一野党「共に民主党」から奪った。大統領選で尹錫悦(ユン・ソンニョル)候補との一本化で辞退した安哲秀(アン・チョルス)氏も当選を決め、国民の力の国会議員となった。

共に民主党は広域自治体では、支持基盤の全羅道地域など5カ所を押さえるにとどまり惨敗した。前回の2018年には同党が14カ所で勝利したが、今回は逆の展開となった。大激戦が予想された京畿道知事選は、同党のキム・ドンヨン氏が国民の力の金恩慧(キム・ウネ)氏に競り勝った。補欠選挙では2か所を維持し、大統領選に出馬した李在明(イ・ジェミョン)氏は国会議員となった。

民主労総と進歩4政党が一本化候補を軸に選挙戦を展開した進歩陣営では、進歩党が金鍾勲(キム・ジョンフン)蔚山東区区長の当選をはじめ広域自治体議会議員3カ所、基礎自治体議会議員17カ所で当選した。正義党は広域議員2カ所と基礎議員7カ所で当選し、緑色党と労働党は当選者を出せなかった。金氏は国民の力の候補を大きく退けて当選し、全国で唯一の、そして11年ぶりの進歩自治体長となった。進歩党は総数21人の当選者を出し、基礎議員10人だけ擁していた同党は、今回2倍以上の成果をあげた。同党の金在妍(キム・ジェヨン)常任代表は「これまでの政治を変える新しい政治を示していく」とし、「進歩一本化候補の勝利を土台に、進歩政治の力量を強化拡大するために努力する」と述べた。

今回の地方選では、有権者が尹政権への「けん制」より「安定」を選んだといわれる。尹大統領は地方選について「選挙結果は生活をより良くしてほしいという国民の意思」とし、「国民生活の安定に全力をあげる」と強調した。共に民主党は大統領選挙敗北後、非常対策委員会体制で党の再建を図ってきたが、党内反発などで進まない上に、性的スキャンダル疑惑で同党国会議員を除名する事態まで起こり、地方選で有権者の支持を得ることはできなかったとみられる。惨敗の責任をとり執行部は2日、総辞退した。

一方、中央選挙管理委員会は今回の地方選の投票率を50.9%と暫定集計した。有権者の半数が棄権した。先の大統領選挙の77.1%に比べると約3分の2、前回の地方選と比べても9.3%低いが、国民の選挙意識は決して低くないはずだ。投票結果は「けん制」より「安定」を示したのだろうが、有権者全体からみると、国民の力に対する圧倒的な「安定」期待が示されたとはいいがたい。大統領選挙における尹候補の僅差による勝利からも、このことは推察できる。「期待せざるを得ないが、果たして、うまくやれるのだろうか」という国民の声が聞こえてくるようだ。

進歩陣営は大統領選挙での共闘成果を引き継ぎ、今回の地方選では共同キャンペーンと候補一本化に努力した。こうした進歩陣営の枠組みの中で、とりわけ進歩党は大きく躍進した。進歩勢力の団結の下で、地域で二大政党制の打破を掲げ、新しい政治への展望を訴えながら、粘り強く民衆運動を展開したことが成果を生んだものだ。本格的な進歩大連合へと進む貴重な始発点となった。