情勢コーナー

情勢解説

第20代大統領選挙の結果と展望

(韓統連 2022年3月11日)

●僅差で尹錫悦候補が当選

3月9日投票の第20大統領選挙の開票結果、「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンニョル)候補が48.56%の得票率で当選した。「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補の得票率は47.83%。両候補間の得票差は約25万票で歴代大統領選挙における最小票差を記録した。一方、正義党のシム・サンジョン候補は2.37%で3位。進歩党のキム・ジェヨン候補は0.11%、労働党のイ・ベギュン候補は0.02%にとどまった。投票率は77.1%。大統領選挙と同時にソウルなど5カ所で実施された国会議員の再・補欠選挙は、国民の力が候補者を擁立した4カ所で勝利した。(※得票率、投票率は暫定値)

●「政権交代」を求める声が尹候補に

今回の大統領選挙は「政権再創出」と「政権交代」をめぐる闘いとなった。結果は僅差ではあるが、政権交代を望む民意が尹候補を当選させた。選挙運動の過程では「政権交代が必要」との世論調査結果が過半数を占め、尹候補を支持する理由も「政権交代のために」との回答が圧倒的だった。尹候補が政治ビジョンの欠如と政策の不在を露呈し、暴言・放言・失言を繰り返し、自身と家族の疑惑が提起されても、大統領候補としての資質や力量より、政権交代を求める声が結局は第一野党候補に集まったということだ。

●文在寅政権に対する国民の失望

政権交代を求める国民の声は、いいかえれば現政権に対する失望から生じたものだ。キャンドル革命を背景に誕生した文在寅(ムン・ジェイン)政権に対し、キャンドル市民は積弊清算の継続を求めたが、文政権は期待に応えられなかった。格差が大きく広がり、雇用・生活・住居といった国民の生存権が脅かされるなかで、特に不動産(住居)問題への怒りが政権交代の世論の中心となった。様々な要因があるにせよ、文政権は不動産政策に失敗し、国民に謝罪した。実際、約25万の票差は不動産問題に最も敏感なソウル地域での票差と重なる。コロナパンデミック対策でも、最近では零細商工人と自営業者に対する補償が十分でないとの批判を受けている。また、2018年の南北首脳会談と南北合意により推進してきた南北関係改善は現在、停滞状況にあり、残念ながら国民の支持を得るものとはなっていない。文政権を継承する李候補には、政権交代論は不利な条件として働いたが、李候補は政権交代に対し、「政治改革」「政治交代」を粘り強く主張しながら選挙を闘った。一方、尹候補と「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)候補との一本化については、「効果はほとんどなく、むしろ李候補陣営の結束を固めた」との報道が出ている。

●前途多難な尹政権

尹政権は5月9日の大統領就任式を経て発足する。尹政権の前途には数々の困難が予想される。一つは国会における与小野大である。現在、共に民主党が172議席(定数300)を占める状況で、首相をはじめとする人選や法案処理など国政運営はたやすくない。もう一つは、尹氏と安氏が一本化の際に、政府の共同運営と両党の合併に合意した点。大筋で合意しただけで詳細は決まっておらず、両党内からは両氏の一方的な決定に不満と不快を示す声も出ている。これも実現は簡単な道のりではない。尹当選者にとっては前途多難な政治状況が早速まちかまえている。

●憂慮される強硬政策

尹当選者が選挙過程で明らかにした政策を鑑みると、政治・社会・統一外交安保など、すべての分野における葛藤とあつれきが激化すると憂慮される。特に統一外交安保において、尹氏は「力による平和」「韓米同盟強化」などをひたすら主張し、南北合意を無視した朝鮮に対する先制攻撃論、サード(THAAD、高高度ミサイル防衛システム)基地追加配備論に加え、「有事に日本自衛隊の韓国進入」を示唆する発言もするなど、「新冷戦」とも称される緊迫した国際情勢のなかで、極めて危険な構想を無責任に発してきた。また、現政権を「積弊勢力」と決めつけ、捜査を強行する可能性にも言及した。そうなれば、まさに「検察共和国」の到来である。

●進歩勢力は新たなスタートを

進歩勢力は今回の大統領選挙運動の過程で、「不平等社会の打破と平等社会の実現」「政権交代ではなく体制交代」をスローガンに掲げ、進歩勢力の団結を図りながら、さらには候補の一本化にも積極的に取り組んだ。しかし、進歩大連合と一本化は実現せず、選挙結果はこれまでの実績にも及ばなかった。自主的民主政権の樹立には進歩勢力の強化と発展が欠かせない。進歩陣営全体が今回の成果と課題を共有し、新たなスタートを始めることが求められている。

●自主・民主・統一運動を前進させよう

韓統連の運動路線は、韓国に自主的民主政権を樹立し自主的平和統一・連邦制統一を成し遂げることで、自主・民主・統一を実現することである。いま、そのなかで特に重要な課題は、「積弊清算の貫徹、国家保安法の廃止、南北の平和・統一促進」であり、そのことを実現するために、新政権に対しては、「対話と交渉、批判と闘争、代案とけん引」で堂々と対応していく覚悟だ。どのような政権であろうと、韓統連が進む道は、自主・民主・統一の実現へと続く勝利の道であることを再度明らかにする。