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情勢解説

韓国政府、日本政府の「佐渡島の金山」ユネスコ世界文化遺産登録推進に抗議 

【2022年2月14日】

韓国外交部は2月3日、鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官が同日午後に日本の林芳正外相と電話会談を行い、日本政府が朝鮮半島出身者の強制労働の歴史を無視したまま、「佐渡島の金山」(新潟県)を国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界文化遺産登録に推進することを先月28日に決定し、1日にユネスコに推薦書を提出したことに対して、深い失望と抗議の意を伝えたと発表。また、自民党の外交、文部科学両部会などが2日の合同会議で、「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録に向け、「韓国独自の主張には間断なく事実に基づいて正々堂々と反論し、国際社会に粘り強く説明する」ことを政府に求める決議をまとめたことなどについても、懸念を表明した。鄭氏は、2015年に長崎県の軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録される際、日本政府は、戦時の朝鮮人強制労働を含めて「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」とユネスコ世界遺産委員会で表明したことを念頭に、日本政府が約束した措置を忠実に履行することを強く促した。鄭氏は強制労働や旧日本軍「慰安婦」など過去の歴史問題をめぐり、被害者が受容できる解決方法を模索するために、日本側がより積極的な姿勢を示すよう求めた。このほか、日本の輸出規制や福島第1原子力発電所の処理済み汚染水の海洋放出問題など、両国の懸案に関する韓国政府の立場も改めて伝えた。

ユネスコは第2次大戦後、二度と戦争を起こさないために「人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」(憲章前文)との決意を込めて設立された。憲章には、平和が「人類の知的および精神的連帯の上に築かれなければならない」と明記。この理念に基づき1972年に世界遺産条約が採択され、人類に普遍的価値を持つ遺跡や自然を未来に引き継ぐことが定められた。日本政府は「佐渡島の金山」を世界文化遺産に登録しようとするならば、侵略戦争と植民地支配の歴史に誠実に向き合い、朝鮮半島出身者を戦時中に強制労働させた事実とその誤りを認めることから始めなければならない。また、「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録される際の国際的な約束も当然、実行されなければならない。昨年の世界遺産委員会は、この点について日本に「強い遺憾の意」を示し、適切な措置をとるよう求める決定を採択した。しかし、日本側には応じようとする姿勢はまったくみられない。関連して安倍晋三元首相は「いまこそ、新たな『歴史戦チーム』を立ち上げて、日本の誇りと名誉を守り抜いてほしい」(1月27日付「夕刊フジ」インタビュー)と主張。岸田文雄首相は2月1日、内閣官房、外務省、文部科学省で構成する作業部会を立ち上げ、「正しい歴史認識」の形成や「いわれなき中傷」への対応を掲げた。侵略戦争と植民地支配を反省し謝罪するどころか、これを全面的に肯定し、さらにはその思想と精神を維持し強化拡大する日本の「植民地主義」は、ついには「歴史戦」へと進み、とどまるところを知らない。厳しく批判しなければならない。