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情勢解説

朝鮮が核実験とICBM発射実験の再開を示唆…韓米合同軍事演習を中止せよ!

【2022年1月28日】

朝鮮中央通信は1月20日、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長・朝鮮労働党総書記が出席する朝鮮労働党中央委員会第8期第6回政治局会議が19日に開かれたと伝えた。同会議では「米国の日増しにひどくなる対朝鮮敵視行為を確実に制圧できる、より強力な物理的手段を遅滞なく強化発展させるための国防政策課題に関する指示を改めて出した。また、われわれが先制的・主導的に取った信頼構築措置を全面的に再考し、暫定的に中止していたすべての活動を再稼働する問題を迅速に検討するための指示を該当部門に対して出した」と報じ、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験の再開を示唆した。朝鮮は2018年4月、党中央委員会総会で核実験場を廃棄し、ICBM発射実験を中止すると決定していた。通信によると、会議では「シンガポール朝米首脳会談以降、われわれが情勢緩和の大局面を維持するために尽くした誠意ある努力にもかかわらず、米国の敵視政策と軍事的脅威が黙認できない危険なラインに達した」と指摘。「米国との長期戦に備え、国家の尊厳と国権、国益を守るためのわれわれの物理的な力を確実にする実際的な行動に移らなければならないと結論付けた」という。また、米国に対し「米国はわが国を中傷冒涜し、約20回の単独制裁措置を取る妄動を行った」とし、「米帝国主義という敵対的な実体が存在する限り、対朝鮮敵視政策は今後も続けられる」と主張した。

外交部の崔泳杉(チェ・ヨンサム)報道官は20日の定例会見で、朝鮮が核実験とICBMの発射実験の再開を示唆したことに対し「最近の朝鮮半島情勢を重く受け止め、北(※正しくは朝鮮、以下同じ)の一連の動向を注視している」とし、「今後も対話と外交によって朝鮮半島問題を進展させるとの原則を堅持する」と強調した。また、外交部の当局者は「堅固な韓米合同防衛態勢を維持する中で朝鮮半島の状況を安定的に維持し、北と速やかに対話を再開してより進展した外交環境をつくることに最善を尽くす」との立場を改めて示した。統一部の当局者も「一連の北の動向を緊張感を持って注視している」と述べた上で、「朝鮮半島の緊張が高まり、南北関係が悪化した過去の状況に戻るのではなく、平和の未来に進むためには対話と外交のみが答えだと考える」として対話の再開を促した。

バイデン米大統領と日本の岸田首相は21日、オンラインによる初の首脳会談を開催。米政府の報道資料は「両首脳は国連安保理決議違反である北の弾道ミサイル発射を糾弾した」とし、「朝鮮半島の完全な非核化に向け、両首脳は韓国と歩調を合わせて北の問題について緊密な調整を維持すると約束した」と伝えた。朝鮮のこの間のミサイル発射実験および核実験・ICBM発射実験の再開示唆以後にバイデン大統領が「糾弾」を明らかにしたのは初めて。

朝鮮労働党は昨年1月、第8回党大会で提示した「国防科学発展および兵器体系開発5カ年計画」で「核心5大課業」、つまり△超大型核弾頭の生産△1万5千キロメートル射程圏内の打撃命中率の向上△極超音速滑空飛行戦闘部の開発導入△固体燃料エンジンICBM(水中・地上)の開発△原子力潜水艦と水中発射核戦略兵器(SLBM)の保有を言明した。最近の極超音速ミサイルの発射実験はこれに基づいたものといえる。19日の政治局会議ではこうした国防政策課題についての指示が改めて出されたうえに、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験の再開を示唆した。前者と後者は結びついたものではあるが、今回の決定の背景は△シンガポール朝米首脳会談以降、朝鮮は情勢緩和に努力してきたが△米国の敵視政策と軍事的脅威は危険ラインに達しており△米国との長期戦に備え、自衛のための軍事力を担保しなければならないというもの。バイデン政権はこの間、朝鮮に対し「敵視していない、無条件対話を望む」と対話と交渉を看板にしながらも、実際には朝鮮の自衛的国防力を否定し、単独制裁まで発動し国連などを利用して国際的な朝鮮圧迫包囲網を画策するとともに、最近では朝鮮の核・ミサイルに対して「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)」を要求する国際世論を意図的につくり出している。朝鮮は第8回党大会で「朝鮮の前進を妨げる基本障害物、最大の主敵である米国を制圧し屈服させることに対外政治活動の焦点を合わせる」と決定し、「強対強・善対善」の原則をあげた。政治局会議ではこれに基づきながら、この間の情勢推移を分析し、「制圧・屈服」を念頭に「強対強」原則で今後の対米方針を決定したとみられる。朝鮮の決意は確固としたものであり、状況は大きく変化したとみるべきだろう。朝鮮が先行条件として要求してきた「二重基準と敵視行為の(言行一致を伴う)撤回」をバイデン政権は無視し続けてきた。同じ線上で3、4月に予定されているとする韓米合同軍事演習を平然と強行してはならないのはいうまでもない。韓国の現政権はもちろん次期政権も合同軍事演習の中止に全面的に乗り出さなければならない。そして、わが民族世論と国際世論で韓米合同軍事演習を必ず中止に追い込まなければならない。