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情勢解説

大統領選挙動向 尹候補、支持率急落 国民の力、選対が解散…関心は安候補との一本化へ

【2022年1月11日】

 各世論調査会社が年末年始に発表した今年3月の大統領選候補の支持率は、与党「共に民主党」の李在明候補が上昇傾向、第一野党「国民の力」の尹錫悦候補が下降傾向をおおむね示した。李氏は1カ月前に比べ3~5ポイント程度上昇しながら40%前後の状況にある一方で、尹氏は2桁に近い下落幅を記録、両候補の差が10ポイント程度まで広がった。また野党「国民の党」の安哲秀候補の支持率は一部の調査では2桁台を記録するなど、明確な上昇の勢いを示した。

 李氏の支持率上昇は、同候補の政策が着実に浸透するとともに、国民との対話を熱心に実践していること、党内予備選挙を争った李洛淵元首相を選挙対策委員会に迎え入れ選挙体制を強化したことなどが、理由としてあげられる。一方、国民の力は昨年12月6日、選挙巧者・金鍾仁氏を総括選挙対策委員長に据えて、尹氏の言動を国民情緒に合わせて管理する体制を固めようとした。しかし、尹氏の失言は止まらず、加えて妻の経歴詐称問題、尹氏の側近である趙修眞党最高委員と李俊錫党代表の対立による内紛などが影響して、支持率が下落したと指摘される。

 こうしたなか、尹氏は1月5日、記者会見を開き、大統領選に向けた選挙体制の立て直しとして、選挙対策委員会を解散し選挙対策本部として改編すると表明した。尹氏は会見で「今までやってきたこととは違う姿でやり直す」と表明。「選挙対策委員会と国民の党をしっかり引っ張り、国民に安心感を与えなければならなかったが、そうできなかった」とし、「すべてがわたしの責任」と述べた。同党は翌6日、最高委員会を開き、選挙対策本部の本部長を兼任する新たな事務総長に、党の重鎮で元駐中国大使の権寧世国会議員を任命。また同日の非公開議員総会では、一部幹部が李氏に党代表としての責任を問う辞任決議を提案した。こうした党内情勢を反映して尹氏と李氏は劇的に和解した。

 国民の力の内紛が「一段落」したことで、野党候補の一本化への関心が浮上し始めた。安候補の支持率が15%の大台に乗った(後記)ことで、候補の一本化なくして政権交代を論じるのは難しいとの認識が野党内に広がっている。李氏は6日の議員総会で「2~3週以内に世論が候補の一本化の議論に火を付けるはずだが、一本化で必ず勝たなければならない」と述べた。安氏は同日、KBSニュースのインタビューで、野党候補の一本化に関して、世論調査のグラフを指しながら「(一本化は)必要ないという方もこれほど多い」と述べた。尹氏から会談の提案があればとの質問に「政治家同士が会おうといえば会うことはできる」とする一方、「そこで協議するかどうかは別の問題だ」と語り消極的な姿勢を示した。

  世論調査会社の韓国ギャラップが7日に発表した大統領選候補の支持率は、李候補36%、尹候補26%。安候補の支持率は15%となり、同社の調査で最高を更新した。選挙法上、15%以上の得票率を獲得した候補は選挙費用が全額補てんされるため、支持率15%は候補が選挙を完走する可能性を測る重要な材料とされる。野党「正義党」のシム・サンジョン候補の支持率は5%。3週前の調査に比べると、尹氏は9ポイント下落した一方、安氏は10ポイント上昇した。国民の力の内紛が続く中、尹氏の支持が安氏に移ったとみられる。世代別の支持率では18~29歳で李氏(24%)、安氏(23%)、尹氏(10%)の順で高かった。若い世代が安氏の支持率を押し上げたとみられる。次期政権の国政課題としては経済回復・活性化、不動産問題解決(いずれも32%)、新型コロナウイルス対応(15%)、雇用(9%)などが優先課題としてあがった。政党支持率は共に民主党が34%、国民の力が29%、支持する政党がない無党派は24%。文在寅大統領の支持率は41%、不支持率は50%となった。調査は4~6日、全国の18歳以上の1002人を対象に実施された。

 国民の力は20、30代の若い世代からの支持を得るために、議員経験のない36歳の李俊錫氏を党代表に据え、「ミスター検察」「正義の検察官」として名をはせたものの政治経験のない尹錫悦氏を大統領候補として迎え入れ、予備選挙を通じて党候補として確定した。ところが、李代表はリーダーシップを発揮するでもなく、また党内では代表をバックアップしようとの雰囲気もない。党内で自身が軽視されるなど不和や葛藤が生じたりするたびに、辞任を主張し姿を消すという事態を繰り返してきた。また尹候補は政治ビジョンの欠如と政策の不在に加えて、絶え間なく暴言と失言を発し、金鍾仁氏から「決めたとおり演技だけすればよい」と露骨にくぎを刺されるほどであった。国民の力には、党の理念を重視し目標を実現できる適格な人物を立て、党全体でその人物を中心に団結し目標を達成しようとする公党としての基本的な姿勢がみられない。今回の同党の内紛の遠因はここにあり、起こるべくして起こったといわざるを得ない。また、これを機に選挙体制の再建を早急に図ろうというよりは、すでに関心は安候補との野党候補一本化に向かっており、その態度も上から目線で真摯なものとはいいがたい。ましてや、国民の力と国民の党の統合交渉は早い時期に決裂しているのにだ。国民の力のこの間の経緯は、守旧保守勢力の実態をまざまざと示すものとなった。