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情勢解説

米国政府に戦時作戦統制権の無条件早期返還を求める

【2021年12月24日】

 国防部のプ・スンチャン報道官は12月14日の定例会見で、米国側が米軍主導の韓米連合軍が持つ有事作戦統制権の韓国軍への移管に向け、有事作戦統制権を将来的に行使することになる韓国軍主導の未来連合軍司令部の完全運用能力(FOC)検証を来年の夏に行うと表明したことについて、「韓米の軍事当局が緊密に協議している」と従来の立場を改めて示した。米国防総省のカービー報道官は13日の記者会見で、オースティン国防長官が韓国側とFOC検証を「来年の夏」に行った後、秋に再検証することで合意したと明らかにした。夏とは下半期の韓米合同指揮所演習期間を意味するとみられる。FOC検証は有事作戦統制権の移管後、未来連合軍司令部の作戦統制権の行使能力を評価するための3段階の検証手続きのうち第2段階にあたる。徐旭国防部長官とオースティン氏は2日、ソウルで開かれた韓米定例安保協議(SCM)で、FOC検証を来年に実施することで合意。オースティン氏はSCM後の記者会見で、来年下半期の合同指揮所演習に合わせて行うと表明した。ただ、オースティン氏が文在寅大統領を表敬訪問した際、FOC検証の早期実施が議論され、両軍当局の協議が再び行われている。

 有事作戦統制権の韓国軍への移管は、米側が主張するように運用能力検証を云々する必要はなく、時期を決めて無条件で返還すればすむ問題である。韓国側は可能な限り早く能力検証を求めることで、早期の返還を想定しているが、米側と意志一致しているとはいいがたい。また、能力検証が一方で韓米合同軍事演習を実施する理由のひとつとされていることを考慮すると、有事作戦統制権の無条件早期返還は、合同軍事演習を実施する必要性がない根拠を与えていくことにもつながる。