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情勢解説

バイデン政権は朝鮮に制裁圧力を加えるな!

【2021年12月24日】

 米国政府は12月10日、「世界人権の日」に合わせ、人権侵害や抑圧に関与したとして、朝鮮の李永吉国防相ら15個人・10団体を制裁対象に指定した。バイデン政権下で朝鮮高官に対する制裁は初めて。在米資産が凍結され、米国人との取引が禁止される。この措置に関し、統一部の李種珠報道官は13日の定例会見で「(政府は)朝鮮半島の状況を安定的に管理しながら、朝鮮半島における平和定着と南北関係の発展、そして北(※正しくは朝鮮)の人権の促進をバランスよく進展させるため、一貫して努力してきた」と述べた。その上で「今後もこうした方向で米国などの国際社会と協力し、南北間協力のきっかけをつくっていく」と伝えた。米国の制裁実施そのものについては「米国政府が自国の法律に基づいて取った措置に対し、統一部が論評することはない」と述べるにとどめた。また、国連総会本会議は16日、朝鮮の「人権侵害」を強く非難し、改善を求める決議案をコンセンサス方式(議場の総意)により投票なしで採択した。同種の決議採択は17年連続。韓国は2019年から共同提案国に名を連ねていないが、コンセンサス方式での採択には賛同した。

 サリバン米大統領府国家安全保障補佐官が12月17日、米国外交協会の座談会に参加、「戦略的忍耐」を標榜したオバマ政権は「朝鮮の核問題」を放置し、トランプ政権は一括妥結を求めて推進したとした上で「本質的にわたしたちの政策の趣旨と目的は、オバマ政権とトランプ政権の間に位置しているが、朝鮮半島の完全な非核化という究極目標に向けて、段階的進展を成すために、外交的に関与する準備ができている」と明らかにした。サリバン氏は「わたしたちは2018年シンガポール首脳会談で提示された基本事項に関して、進展を成すために努力する準備ができていると、直接的・公開的に継続して明らかにしている」としながら、朝鮮が呼応しないとボールを朝鮮側に投じた。

 バイデン政権は朝鮮に対し「敵視していない」として、無条件対話を提案してきたが、人権問題を口実とした制裁の継続や圧力は明らかに敵視行為である。サリバン補佐官の発言は「段階的進展」を強調したものだが、敵視政策を平然と続けていては「段階的進展」へと進むどころか、最初の扉さえ開かないのは当然だ。「朝鮮が呼応しない」と責任転嫁するのは筋違いだ。