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李大統領が北への無人機侵入に遺憾表明、金委員長は評価…南北関係進展の一歩に

李大統領、北への無人機侵入に遺憾表明

李在明(イ・ジェミョン)大統領は4月6日の国務会議(閣議)で、韓国無人機の北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)侵入事件について「わが政府が意図したことではないが、一部の無責任で無謀な行動により不必要な軍事的緊張が誘発されたことに対し、北側に遺憾の意を表する」と述べた。関係官庁に対しては再発防止に向けた制度改善と直ちに実行可能な措置を迅速に進めるよう指示した。

李大統領は「大韓民国の憲法と法律は個人が私的に北側を挑発する行為を禁止している。国家戦略上、必要に応じてそのようなことが起きるとしても、極めて慎重であるべきだが、個人的にこのような挑発行為を行ったという事実が非常に残念だ」と述べた。

これまで李大統領は同事件について強く批判してきたが、北朝鮮に対し直接遺憾の意を示したのは初めて。政府レベルでは鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が2月に正式に遺憾の意を表明した。

李大統領は「世界各地の紛争で共通の規則と互恵に基づく国際秩序が大きく揺らいでいる」とし、「このような時期こそ朝鮮半島の平和と安定が何よりも重要だ」と強調した。

ソウル中央地検は先月、北朝鮮に向けて無人機を飛ばしたとして、30代の大学院生ら3人を一般利敵や航空安全法違反、軍事基地法違反などの罪で起訴した。

金委員長、李大統領の遺憾表明を評価

朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹、金与正(キム・ヨジョン)党総務部長は6日、韓国無人機の朝鮮侵入事件を巡り遺憾を表明した李在明(イ・ジェミョン)大統領について、「われわれの国家首班はこれを率直かつ大胆な人の姿勢を見せたものと評価した」とする談話を発表した。

朝鮮の国家首班である金正恩氏が、李大統領の遺憾表明に前向きな反応を示したものと受け止められる。

朝鮮中央通信によると、金与正氏は談話で、「大統領が直接遺憾の意を表し、再発防止措置に言及したのは非常に幸いで、自らのために賢明な措置だった」と評価した。ただ、自らの安全のためにも朝鮮に対する無謀な挑発行為を中止すべきで、いかなる接触の試みも断念すべきとし、韓国との対話には依然として否定的な姿勢を示した。

大統領府・統一部、「平和共存」強調

青瓦台(大統領府)の関係者は6日、「今回の南北間の迅速な相互意思確認が、朝鮮半島の平和共存に寄与することを期待する」とし、「政府は朝鮮半島の平和共存に向けた努力を継続していく」と述べた。

統一部は7日、声明を通じて「軍事的な緊張を不必要に高める行為の停止に向け、南北両首脳の意思が迅速に確認され、意思疎通が図られた。朝鮮半島の平和共存に向けた意味のある進展だ」と評価した。

大統領府、「侮辱的な言葉は平和に寄与せず」

大統領府は8日、北朝鮮外務省で韓国との関係を担当するチャン・グムチョル第1次官が韓国に対し「最も敵対的な国であることに変わりはない」とする談話を出し、敵対路線を改めて示したことについて、「非難や侮辱的な言葉は朝鮮半島の平和と安定に寄与しない」との認識を示した上で、「政府は相互尊重を基に朝鮮半島の平和共存に向けた努力を続け、北側も応じることを願う」との立場を示した。

南北関係進展の一歩に

鄭長官の次元にとどまらず、李大統領自ら無人機侵入事件に対し遺憾表明した。民間人が主導した事件だとしても、大統領として何らかの発信が必要だとの考えに加えて、李大統領の発言にあるように、国際情勢が激動する中、南北の軍事緊張を緩和し、朝鮮半島の平和と安定を維持することが何よりも重要だとの認識からだろう。さらには5月に中国・北京で行われる米中首脳会談に向けた環境造成も念頭にあったと思われる。

李大統領の遺憾表明から約10時間後に金部長が金委員長の評価を伝えたことで、間接的な形ではあるものの、南北首脳が意思を交わした形となった。朝鮮が李大統領の発言に肯定的な反応を示し、「李在明韓国大統領」という正式な呼称を使用したのも、李政権発足後初めてだ。大いに歓迎すべきことだ。

もちろん、今回のやりとりがすぐさま南北関係の改善へとつながるものではない。金部長の談話でも韓国との対話には依然として否定的であり、チャン次官の談話は従来どおりの姿勢だ。しかし、南北が敵対することは双方にとって利益にならないのは自明であり、緊張を緩和し平和を実現する上で、有効な機会を求め続けることは必要である。現在の不安定で予測不能な国際情勢の下ではなおさらである。

(4月8日)

※写真-国務会議で発言する李在明大統領