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情勢解説

韓米は対話環境を整えてから終戦宣言の提案へと進め!

【2021年11月5日】

鄭義溶外交部長官は10月31日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて訪問したイタリア・ローマで、ブリンケン米国務長官と会談した。外交部の会談結果資料によると、両者は朝鮮半島情勢の安定的管理が重要だとの認識で一致し、朝鮮戦争の終戦宣言を含む朝鮮半島平和プロセスの早期再稼働策について真摯に協議したという。ところが米国務省の会談結果資料では、終戦宣言という言葉そのものが登場せず、朝鮮半島の完全な非核化に対する共同の意志を強調している。一方、外交部の資料には非核化についての言及はない。文在寅大統領が国連総会で提起した終戦宣言については、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が26日の記者会見で、韓国政府と協力しているとしながらも「われわれは、それぞれの措置のための正確な順番、時期、条件に関して、多少違う観点を持っているかもしれない」との認識と慎重な姿勢を示していた。これに対して外交部の安恩珠副報道官は同日の定例会見で、終戦宣言の法的効果について「終戦宣言は信頼構築に向けた政治的・象徴的な措置」として、「現在の停戦体制の法的・構造的な変化を意味しない」との認識を示し、魯圭悳朝鮮半島平和交渉本部長は25日に開かれたフォーラムで「終戦宣言は北(※正しくは朝鮮、以下同じ)に対する敵視政策がないことを最も象徴的に見せる措置で、北側との対話再開の重要なモメンタム(勢い)になり得る」との考えを明らかにしていた。

米国政府は、韓国政府が終戦宣言を「対話再開のモメンタム」としたいことには理解を示しているものの、その方式などには「違う観点」を持っていると自ら明らかにしている。バイデン政権は、終戦宣言が南北主導(もしくは「南北主導で中国協力」)で進み、米国がその枠組みに追従せざるをえなくなること、言い換えれば、終戦宣言が朝鮮半島の停戦協定体制を平和協定体制へと転換を促し、そのことにより米国の朝鮮半島政策に決定的な影響が出ること(具体的には平和協定締結による韓米同盟の解消・在韓米軍の撤退)への警戒があると思われる。また韓米外相会談の資料は、バイデン政権が結局は終戦宣言よりも非核化が重要だとの観点を持っているとの推測を生む。実際、バイデン政権は「終戦宣言を支持する」と明言したことはない。韓国政府はこうした米国の「憂慮」に配慮し、終戦宣言の位相を低め、韓米間に異見はなく同じ方向性であることを強調しながら、頻繁に協議を継続している。朝鮮戦争の当事国が会し発する終戦宣言は、朝鮮半島の平和的環境をつくり出し、そのもとで平和協定の締結(朝鮮戦争の終結)へと進展し、朝鮮半島の恒久平和を実現していくところに重要な意味がある。朝鮮は終戦宣言も含む対話・協議には「二重基準と敵視政策の(実質的な)撤回」を先決条件として求めるとともに、韓国政府には南北共助と民族自主の姿勢を望んでいる。韓米両政府は対話のための条件を満たし、そうしてつくられる対話の場で終戦宣言を提案するのが道理だろう。終戦宣言を提案したからといって敵視政策がないことの証にはならない。