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統一部、業務報告…対米自主を政策理念の柱にすべき

統一部、李大統領に業務報告

李在明(イ・ジェミョン)大統領は12月19日、鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官から統一部の業務報告を受けた。統一部は2026年には△朝鮮半島の平和共存と北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)の呼応を誘導するために先制的措置を持続するなど、「朝鮮半島問題」の当事者として主導的役割を強化し△北朝鮮の「敵対的2国家関係」を「統一志向の平和的2国家関係」へ転換することについて、「国民多数の賛成」が確認されただけに、これを積極推進すると明らかにした。「国民多数の賛成」は、統一部と世論調査会社・ギャラップが今月、共同実施した世論調査で69.9%が賛成したことを指す。

そして、南北関係を中心に据えて朝鮮半島の問題解決を推進するとし、△南北および多国間の交流・協力を支援するために対北制裁緩和方案を協議・推進する△先民後官(政府よりも民間を優先する)および多国間協力を通じた多角的な関係改善を模索し△朝鮮半島平和特使の稼働など「ペースメーカー」の役割を積極的に試みるとする対応戦略を提示した。

また、「対北政策の成功を左右するカギとなる時期」は来年4月だと予測した。来年初めに予想される韓中首脳会談を決定的な契機として、4月予定の米中首脳会談に続いて朝米首脳会談が開催されれば、米・中・南・北の環が完成するというもの。

重点推進課題としては△韓米共助と周辺国の協力を通じた朝米対話の再開を推進する△先制的・実践的な平和措置で南北対話の再開を推進する△「統一志向の平和的2国家関係」を基盤とする朝鮮半島平和共存の制度化を提示した。

対米自主を政策理念の柱に

統一部の業務報告では、韓米合同軍事演習の調整により南北関係改善の契機をつくり出せるのではとする意見に対する言及が全くなかった。

また、韓米ワーキングシートの具体化である「韓米対北政策調整協議体」の構成や運営についても、統一部と外交部間の異見を調整する次官級協議が設定されたものの、報告では原則論が述べられただけで、明快に整理されなかった。同協議体に対しては、歴代の統一部長官と市民社会団体から「第2の韓米ワーキンググループ」だと批判が起こっている。(情勢短信を参照)

韓国側非武装地帯(DMZ)への非軍事目的の立ち入りを韓国政府が承認できるようにすることなどを盛り込んだ「DMZの平和的利用に関する法律(DMZ法)」を巡り、米軍主導の国連軍司令部は声明を通じて、DMZへの立ち入りを規制する権限は休戦協定によって同司令部にあることが定められていると強調し、DMZ法の制定に反対する立場を示した。これに対し鄭氏は「領土主権に関する問題」などと指摘し同司令部を非難していた。統一部の姿勢は当然で理にかなったものだが、政府次元での後続措置がきちんと伴わなければ実効性に限界があるのも事実だ。

「来年4月がカギ」説は「そうなればよい」次元での構想で、実現性に乏しいといわざるを得ない。

統一部は業務報告を通じて、南北関係に関する限り主導性を発揮する意志を重ねて明らかにした。そうした決意は尊重すべきだが、現状のように対米追従を深めながら韓米同盟を強化し合同軍事演習を展開していては、南北関係の改善も朝鮮半島の平和実現も、さらには「統一志向の平和的2国家関係」樹立など到底おぼつかない。対米自主を政策理念の柱にしなければ、掲げた目標を達成することは不可能だ。具体的には韓米合同軍事演習について調整(延期、縮小など)から開始し、最終的には中止までもっていくべきである。そうしてこそ展望が開かれるのではないだろうか。平和と統一を実現するために、統一部の覚醒に期待すると共にさらなる奮闘を望みたい。

(12月24日)

※写真-業務報告で発言する鄭長官