情勢コーナー
トランプ政権の3500億ドル投資強要…国をあげてはねのけよう

高まる「米国の投資強要」糾弾世論
与党「共に民主党」と祖国革新党、進歩党、基本所得党、社会民主党の4野党に所属する65人の国会議員は9月25日、国会で記者会見を開催し、「政府に対し関税交渉に堂々と臨むことを求め、米国の3500億ドル(約51兆5400億円)対米投資要求の撤回および韓国人労働者の人権保障を求める決議案」を国会に発議することを発表した。また、10月2日には同じく13人の議員がソウル光化門の米大使館前で記者会見を開催し、米大使館に抗議書簡を伝達した。
決議案を提案した進歩党のユン・ジョンオ議員は「3500億ドルを現金で投資すれば、韓国は深刻な金融危機に見舞われる」と警告し、特に「わたしたちが投資して生まれる利益の90パーセントを米国が持ち去るというのは前例もなく、常識を疑う要求」だと厳しく非難した。
また「米ジョージア州で合法的に働いていた韓国人労働者を理由もなく拘禁した」と指摘し、「国家間の平等な関係は強要と差別ではなく、相互尊重と協力においてこそ維持される」と主張した。
進歩党は9月23日、「略奪的対米投資阻止週間」を宣言し、米大使館前で徹夜演説大会の開催など集中行動を展開。党大会(28日、京畿道高陽市)ではトランプ略奪阻止特別決議文を採択した。
民主労総は26日、光化門で「対米投資全面中止! 拘禁労働者に対する謝罪要求!」緊急行動を実施。同行動に続いて、民主労総など市民社会団体と進歩政党で構成する「トランプの威嚇を阻止する共同行動」も緊急行動を展開し、共に米大使館までデモ行進した。
対米投資の先払い要求に8割が「不当」
韓国の世論調査会社・リアルメーターが10月3日に発表した調査結果によると、韓米関税交渉において韓国の対米投資3500億ドルを米国側が先払いするよう要求したことに対し、80.1%が「不当だ」と答えた一方、「受け入れ可能だ」との回答は12.4%にとどまった。
調査は1~2日、全国の18歳以上の1008人を対象に実施された。
リアルメーターは、不当だとする意見が80%に上ったのは、ジョージア州で多数の韓国人労働者が拘禁された問題などともあいまって「脅迫的な要求」と認識されたためだとして、「国民の国益保護意識が非常に強いことの表れ」と分析した。
米国の要求は受け入れられないとの立場を維持しながら対話と交渉を続ける韓国政府の対応は「適切だ」との回答は61.9%、「適切でない」との答えは30.5%だった。
国をあげて米国の要求をはねのけよう
トランプ政権は韓国政府に、関税を25%から15%に下げる代わりに3500億ドルの対米投資を要求している。元来、韓米自由貿易協定により関税をかけることはなかった上に、投資については、米国が投資先を決定し、現金の先払いを要求し、利益の90%を取るとする。さらに、合法的に働く韓国人労働者を拘禁し、米国民を優先雇用しろとの圧力を露骨にかけた。韓米同盟・駐韓米軍を通じて韓国の安保維持に貢献しているのだから、同盟国・韓国はこれぐらいの要求は飲んで当たり前だと言わんばかりの一方的で傲慢な姿勢。まさに韓米同盟の存在理由が問われる事態だ。
韓米同盟を重視し経済面では米国からの対韓投資も促進させたい李在明(イ・ジェミョン)大統領は米国の3500億ドル投資要求の扱いに苦慮しているようだ。すでに5000億ドルで米国と合意した日本を引き合いに出し、日本と韓国とでは状況が異なると強調しながら、なんとか「韓米両国の利益が符合する」線で交渉をまとめることができればと考えているようだが、米国側の姿勢は頑強だ。
市民社会団体だけでなく国会も呼応しながら、経済略奪するトランプ政権糾弾の世論は急速に高まりつつある。李大統領には、こうした国民世論に依拠して国家主権、自主権を全面的に発揮する対米交渉の推進を期待する。それこそが国民主権政府を自任する李政権にふさわしい「国益重視の実用外交」となるはずだ。
政府も国会も国民と共に力を合わせて、トランプ政権による不当な対米投資強要をはねのけよう。
※写真-米国大使館前で抗議書簡を掲げる国会議員団