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李大統領、米・日首脳と会談…「韓米同盟の現代化」「韓米日協力の強化」強調

李大統領、米・日首脳と会談

李在明(イ・ジェミョン)大統領は8月23日、東京で石破茂首相と会談し、歴史問題に触れないまま「未来志向の韓日関係」を発展させることで一致。25日には米ワシントンでトランプ米大統領と会談した。

その後、李大統領は米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で演説。「わたしとトランプ大統領は『国益中心の実用同盟』の新たな地平を開いていきたい」とし、「きょうのトランプ大統領との首脳会談で、韓米同盟を安全保障環境の変化に合わせて現代化させることで一致した」と述べた。

李大統領は、「韓米同盟の現代化」の具体的な方法として「韓国は朝鮮半島の安保を守る上でより主導的な役割を果たしていく」と説明した。その一方で「米国の対韓防衛公約と韓米連合防衛体制は堅固に維持される」とも明言した。さらに「韓米同盟は朝鮮半島をこえて世界レベルにグレードアップされ、2万8500人の在韓米軍もより安全になるだろう」と述べた。また、米国側からの代表的な要求とされる国防費の増額を表明したが、具体的な規模は明らかにせず「増額された国防費は韓国軍をスマート強軍に育成するのに使われる」と述べるにとどめた。

北の核問題の解決策については「トランプ大統領と朝鮮半島の平和定着と非核化に向けて緊密に協力することを決めた」と述べた。

李大統領は「韓米両国は北の挑発に強力に対応する」と言及する一方で、「強力に制圧するが、米国の現実的脅威にならないようにする現実的な方法を探さなければならない」とし、「貧しいがどう猛な隣人は抑圧することだけでは解決されない。適切に管理する手段も必要だ」と述べた。さらに「北との対話に向けた努力も並行する」とし、「和解と協力の南北関係こそが韓国と北の双方、ひいては韓米両国の利益になるだろう」と強調した。

日本に対しては、「韓米同盟の新たな歴史に欠かせないもう一つのパートナー」とし、「トランプ大統領と共に韓米日協力を緊密に固めながら、3カ国が北の核・ミサイルの脅威に共同で対処する」と述べた。

李大統領は最後に、韓米関係について「安保、経済、先端技術の3本柱の上にそびえ立つ未来型包括的戦略同盟」と規定し、「共に進みましょう」と述べて演説を終えた。

李大統領は29日の閣議で、「米国、日本歴訪で形成した信頼関係に基づいて国益を守り、別の周辺国との協力もより拡大していく」と述べた。また、9月8日に開催された与野党代表との会合では韓米首脳会談にも言及し、「いまは非常に厳しい状況」として、「今回の会談は何かを得るための会談ではなく、何かを守るための場だった」と振り返った。その上で「今後も韓国全体の利益のため、共に力を合わせれば、対外交渉でも大きく役に立つと思う」と呼びかけた。

国民主権政府にふさわしい外交を

韓米首脳会談については、韓日首脳会談と異なり合意内容が文書で発表されなかったため、内容を正確に把握できないとの声がある。そのことを念頭に置きながら、会談後に李大統領が米CSISで行った演説内容を取り上げる。

まず、李大統領が掲げてきた「国益中心の実用外交」は韓米首脳会談を通じて、韓米同盟を「国益中心の実用同盟」へと変化させた。国益中心の実用外交とは国益を最優先に考えて、米国はもちろん中国やロシアとの関係も安定的に管理するという意味だという。だが実用同盟という表現は現時点では十分に真意が伝わらない(国益を守るために、少なくとも垂直的な同盟関係を水平的なものに変えていくとの趣旨なら歓迎すべきだが、後述する「同盟の現代化」を意味するなら警戒すべきだ)。

また「韓米同盟の現代化」をトランプ大統領と合意したとする。同盟の現代化とは包括的戦略概念だが、基本要素は△戦略的柔軟性△対中国前哨基地化△安保費用転嫁の三つだ。戦略的柔軟性は在韓米軍と韓国軍が台湾などの韓国領土外で合同作戦を展開すること。対中国前哨基地化は在韓米軍基地と韓国軍基地を対中国戦争基地につくりかえること。安保費用転嫁は韓国の防衛費分担金と国防費を引き上げ米国の国防負担を減らすことだ。その一環として李大統領は韓国の国防費増額を発表した。これは米国製兵器のさらなる購入につながるものだ。

その一方で、これまで通り「北との対話に向けた努力も並行する」としたが、北を「貧しいがどう猛な隣人」と表現し、当然ながら北を激怒させた。何度も指摘するが、「韓米同盟・韓米日軍事協力の強化」「合同軍事演習の強行」と「南北関係の改善」「朝鮮半島の平和実現」は相いれない。相手の嫌がる言動は「対話に向けた努力」とはみなされない。

現在の韓米関係においては、まずは米国による韓国に対する経済収奪・安保威嚇を厳しく非難しなければならない。安保威嚇は前述したが、経済収奪については関税爆弾にとどまらず、対米投資で建設中の現代自動車系工場(米ジョージア州)で約300人の韓国人労働者を逮捕・拘禁するという蛮行まで引き起こしている。米国が韓国に投資を強要しながら自国労働者を雇用しろと圧力をかけたものだが、同盟国を収奪対象とする一方的でごう慢な姿勢だ。

こうした事態を認識すればするほど、「国民主権政府」を自任する李政権が首脳会談の場で国民主権をしっかりと発揮することが切に求められる。国民主権は対内的には民主を、対外的には自主を志向する。李大統領は「今回の会談は何かを得るための会談ではなく、何かを守るための場だった」と振り返った。守りながらさらに何かを得るためには、そして李政権がトランプ政権に堂々と対応するためには、国民が国民主権政府の背中を押し、国民主権政府は国民を信頼し支持を得て主権を発揮しなければならない。そうしてこそ国民主権政府の名にふさわしい自主外交を進めることができるはずだ。

(2025年9月10日)

※写真-トランプ大統領と会談する李在明大統領(左)