情勢コーナー
3特検が進展、内乱勢力清算の始まり…李政権、惨事・災害に積極対応

海兵隊員殉職事故、元捜査団長の無罪確定
2023年7月に起きた海兵隊員の殉職事故に絡み、捜査に圧力がかけられた疑惑を政府から独立して捜査する特別検察官チームは7月9日、事故の調査過程で上官の命令に従わなかったとして抗命および名誉毀損の罪に問われた元海兵隊捜査団長、朴禎勳(パク・ジョンフン)大領(大佐)の刑事裁判に対する控訴を取り下げた。これにより、朴氏の無罪が確定した。特別検察官チームは11日、捜査に圧力をかけた疑惑を持たれている前大統領・尹錫悦(ユン・ソンニョル)の自宅を家宅捜索した。
民主労総、労組法2・3条改正に全力
民主労総は16日、労組法2・3条の即時改正と尹政権の反労働政策の即時廃棄、労働者側と政府との交渉を要求し、ソウル汝矣島をはじめ全国10カ所で全面スト集会を開催、約8万人が結集した。2・3条改正案は、労働者と使用者の概念を現状にそくして拡大し、下請けなど間接雇用労働者も元請けを対象に実質的な労使交渉ができるようにし(2条)、使用者側が労組弾圧の手段とする損害賠償請求訴訟を制限する(3条)ことが核心内容。与党「共に民主党」は8月臨時国会で成立させる方針を明らかにしている。民主労総は続けて19日、ソウル市内で「全面スト・総力闘争 大行進」を開催し、社会大改革の実現を訴えた。21日からは労組法2・3条改正運動本部と共に国会本館前で記者会見を開催しろう城に入った。一方、金民錫(キム・ミンソク)首相は22日、民主労総を訪ねヤン・ギョンス委員長ら執行部と懇談、社会的対話を強調した。
梨泰院惨事、検・警含む調査団編成へ
李在明(イ・ジェミョン)大統領は16日、2022年10月に159人が死亡したソウル・梨泰院の雑踏事故(梨泰院参事)の犠牲者遺族に旧大統領府の青瓦台で会い、検察と警察が参加する真相究明調査団を編成すると約束した。大統領室報道官が17日の記者会見で伝えた。李大統領は、昨年発足した事故特別調査委員会には捜査権が与えられていないとして、必要であれば調査団には強制調査権を与える考えを示したという。また、李大統領は20日、16日から続く豪雨で大きな被害を受けた地域を特別災難(災害)地域に指定する案を迅速に進めるよう指示し、21日には被災地の慶尚南道山清郡を訪れた。
金建希・特検、旧統一教会本部を家宅捜索
尹錫悦の妻、金建希(キム・ゴニ)に絡む疑惑を捜査する特別検察官チームは18日、京畿道加平にある世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の本部とソウル本部の家宅捜索に入った。旧統一教会を巡っては、元幹部が2022年、「コンジン法師」と呼ばれるチョン・ソンベ氏を通じ、金建希にダイヤモンドのネックレスや高級バッグなどを渡した疑いがある。旧統一教会のカンボジア・メコン川開発事業やニュース専門テレビ局・YTNの買収、国連事務局の韓国誘致、大統領就任式への招待などで便宜を図るよう働きかけたとされる。特検チームは21日、尹錫悦に29日に、金建希に来月6日に出頭するよう通知したと発表した。
地裁、尹錫悦の逮捕適否審査請求棄却
ソウル中央地裁は18日、12.3「非常戒厳」宣言を捜査する特別検察官チームが尹錫悦を逮捕したことの適切性を判断する適否審査で、逮捕は不当とし釈放を求める尹側の請求を棄却した。特検チームは19日、尹錫悦を職権乱用権利行使妨害、虚偽公文書作成・同行使、大統領記録物法違反、公用書類損傷、大統領警護法違反、特殊公務執行妨害、犯人逃避教唆の罪で起訴した。
李大統領、支持率64%
世論調査会社の韓国ギャラップが18日に発表した調査(15~17日)結果によると、李大統領の職務遂行について、「うまくやっている」と答えた人は前週に比べ1ポイント上昇した64%だった。「うまくできていない」と回答した人は23%で、前週と変わらなかった。政党支持率は与党「共に民主党」が前週より3ポイントあがった46%。第1野党「国民の力」は19%で、前週と変わらず。
3特検が進展、内乱勢力清算の始まり
李政権の重要課題は内乱勢力の清算と社会大改革の実現である。前者については三つの特別検察官チームが発足し、順調に活動を推進し成果をあげていると言える。聖域なき捜査・調査、内乱・外患行為の真相究明、関連者に対する責任追及と処罰、そして制度的な再発防止を徹底して進めなければならない。「法の下での平等」を無視し法技術を駆使して拘束・調査・裁判をなんとか逃れようとする首謀者・尹錫悦をそのまま放置してはならない。また、広場と野党による5・9共同宣言では「内乱行為に対する徹底した真相究明と法的責任を問うために、特別検察法を推進し、『反憲法行為特別調査委員会』を設置する」と合意している。特検と同委員会が両輪となり内乱勢力の清算を強力に進めることが求められる。
政府が国民の生命と安全を守ることは国民主権の観点からも当然のことだが、朴槿恵(パク・クネ)政権時のセウォル号惨事や尹政権時の梨泰院参事のように、保守政権下でそのことが軽視されてきたのは事実だ。李政権は国民の生命と安全を守ることが政府の最も重要な使命だとし、これまでの重大惨事に対し真相究明、責任者処罰、遺家族への補償・賠償・慰労、再発防止に積極的に取り組む姿勢を示している。16日からの集中豪雨の被害についても、李大統領自ら被災地を訪問し適切に対応している。
労働者の基本的権利を守ることも政府の重要な使命だ。李政権は労働懸案を労働界と疎通しながら解決するとし、まずは労働法2・3条の改正作業を進めている。民主労総委員長出身の雇用労働部長官も同様のスタンスだ。韓国オプティカルハイテック労組の争議も早期解決するよう期待したい。
(2025年7月23日)
※写真-民主労総のヤン・ギョンス委員長と握手する金民錫首相(左)