情勢コーナー
広場と野党、緊急集中行動を展開…「憲裁は尹錫悦に対し罷免を即刻宣告しろ!」

尹錫悦罷免要求全国行動に100万人結集
「尹錫悦(ユン・ソンニョル)即刻退陣・社会大改革 非常行動」(非常行動)は3月15日、ソウル光化門一帯で「内乱首謀者・尹錫悦即刻罷免 3.15全国行動」(ソウル「尹錫悦即刻退陣! 社会大改革 15次汎市民大行進」)を展開し、100万人の参加者は「憲法裁判所(憲裁)は内乱首謀者・尹錫悦を即刻罷免しろ」と一斉に声をあげた。全国行動はソウルを始め全国15の道・市で同時展開された。また、民主労総・全国集中労働者大会、全国農民大会、「5野党共同 非常時局対応のための汎国民大会」などが事前開催された。
17日には非常行動代表団と即刻罷免に同意する国会議員、市民ら1500人が緊急時局宣言(600団体、個人7700人が賛同)を発表し、憲裁に決断を迫った。19日は「民主主義守護の日」として終日、多様な罷免要求行動を展開した。
非常行動、3次緊急集中行動に突入
憲裁の罷免決定が遅延を重ねて広場の市民の憤怒が高まる中、非常行動は21日、光化門の断食ろう城現場で記者会見を開催。
22日から尹錫悦即刻罷免を求める3次緊急集中行動に突入し、さらに強力な闘いを展開するとした。そのために、尹錫悦が釈放された8日から同日まで続けた共同議長団の断食を中止した。
22日、全国17カ所で市民が結集する中、光化門一帯で16次汎市民大行進が開催され、参加した200万人の参加者は、内乱首謀者・尹錫悦の罷免宣告を遅延する憲裁を糾弾し、「市民の力で尹錫悦を罷免しよう」と声をあげた。
非常行動は集中行動における27日総力闘争として、全農「全琫準(チョン・ボンジュン)闘争団」(※1)のトラクター行進、民主労総の全面ストとそれと結合した全国市民全面スト(27日)を予定。闘争団は25日から警察の規制弾圧に抗して、「南泰嶺の大勝利」(※2)を市民と共に再現しながら、ソウルへ進撃した。また、25日には青年学生が緊急行動を展開。ノーベル文学賞を受賞したハンガン氏ら作家414人は各自の1行メッセージを集めた声明を、韓国作家会議と文学者2487人は時局宣言をそれぞれ発表した。
野党は広場との連帯を強化している。共に民主党は24日、光化門にテント本部を設置し最高委員会議を継続開催。民主党は26日から憲裁前で1000人無期限断食闘争に突入すると明らかにした。
憲裁、韓悳洙への弾劾訴追を棄却
憲裁は24日、韓悳洙(ハン・ドクス)首相の弾劾訴追を棄却した。裁判官8人の内、罷免には当たらないとする「棄却」の意見を示したのは5人。2人は弾劾訴追の手続きに不備があったとして「却下」、1人は罷免を認める「認容」とし、判断が分かれた。罷免には裁判官6人が認容する必要がある。棄却の判断を出した5人中4人は、国会が推薦した憲裁の裁判官候補3人の任命を保留したことは違憲とした。ただ、「国民の信任を裏切ったと断定することができず、罷免を正当化する理由があるとは言えない」とした。非常戒厳の違憲性については判断を示さなかった。
国会は尹錫悦の非常戒厳宣言を共謀したり黙認・ほう助したりしたとして、韓首相を弾劾訴追していた。
憲裁の決定に対し、韓首相の弁護士は「憲裁が賢明な判断を下したことに感謝する」と述べた。
韓首相を弾劾訴追した国会側は、棄却決定に遺憾の意を示しながらも、尹錫悦の弾劾審判の判断と関連したメッセージを憲裁が出したとの解釈を示した。
国会側の弁護士は「韓首相が憲裁の裁判官を任命しなかったことは違憲・違法だが、全体的には(罷免までには)不十分だと判断したようだ」とした上で、「だが、韓首相が国政運営を適切に行わなかったというメッセージはあると思う」と指摘。「(尹錫悦による)『非常戒厳』の実質的な実行に関与したという具体的な証拠がないため、憲法と法律に違反したと言えないとしたが、逆に非常戒厳を積極的に実行した首謀者は憲法に違反したということだ。非常戒厳自体の影響を考慮すると、これがいかに重大なのかという判断がついたと思う」と主張した。
非常行動は光化門の政府ソウル庁舎前で緊急記者会見を開催し、「内乱共犯・韓悳洙を復帰させた憲裁を糾弾する」「憲裁は内乱首謀者・尹錫悦を即刻罷免しろ」と主張した。
李在明代表に「逆転無罪」判決
ソウル高裁は26日、2022年の大統領選に絡み虚偽の事実を述べたとして、公職選挙法違反の罪に問われた第1野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表について、懲役1年、執行猶予2年とした1審判決を破棄し、無罪を言い渡した。判決に対し同党は検察に謝罪を要求し、与党「国民の力」は遺憾を表明した。検察は上告する方針を示した。(※3)
憲裁は罷免を即刻宣告すべき
憲裁は韓悳洙に対する弾劾審判において、違憲行為があったと判断しながらも棄却決定を下した。理解しがたい論理展開であり、憲裁に向けて糾弾の声があがるのは当然だが、国会側は「逆に非常戒厳を積極的に実行した首謀者は憲法に違反したということだ」と指摘し、戒厳首謀者・尹錫悦に対する罷免決定を見通した。
いずれにしても、韓首相に対する決定が出たことにより、憲裁に係留された大部分の弾劾審判が整理されたと言える。事実上、尹錫悦に対する弾劾審判の宣告だけ残っている状況だ。
予想をこえる憲裁の決定遅延に対し、広場と野党は連帯を強化し、闘いの水位をあげながら、早急に罷免宣告をかちとる決意を示している。一方、憲裁の姿勢は結果的に弾劾反対を叫ぶ尹錫悦支持勢力、すなわち内乱・反乱勢力を勢いづかせ、暴力・テロ行為も憂慮される状況をつくり出すなど、社会全般に深刻な混乱を引き起こしている。こうした勢力を清算し内乱を終息させ、民主主義と憲政秩序を守り抜かなければならない。憲裁は尹錫悦に対し罷免を即刻宣告すべきだ。現在の情勢はそのことをますます明らかにしている。
※1「全琫準闘争団」 全琫準(1854~1895年)は甲午農民戦争(1894~1895年)の指導者。全国農民会総連盟(全農)はトラクター闘争部隊を全琫準闘争団と名付けた。
※2「南泰嶺の大勝利」 2024年12月21日、地方から全琫準闘争団のトラクター部隊が尹錫悦即刻退陣要求集会に参加するためにソウルへと向かう中、警察が南泰嶺(ソウル市の冠岳区、瑞草区と、京畿道果川市との間に位置する峠)で警察バスのバリケードを設置してトラクターを阻止、暴力鎮圧する事件が発生。その様子がSNSで拡散されると、市民が次々に現場に駆け付け、闘争団と夜を徹して共に闘い、闘争団は警察の壁を打ち破りソウルに堂々と入った。この闘いは農民と市民の共同闘争で勝利した画期的なもので「南泰嶺の大勝利」と呼ばれている。
※3 情勢記事<「共に民主党」李在明代表の「司法リスク」>(ニュースレター101号、2月14日)参照
(3月26日)
※写真-尹錫悦即刻罷免を要求する16次汎市民大行進の参加者