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情勢解説

朝鮮が新型長距離巡行ミサイル、鉄道機動ミサイルの試射に成功/米国は「敵対的な意図はない」を行動で示せ!

【2021年9月23日】

朝鮮中央通信は、国防科学院が9月11、12日の両日、新たに開発した新型長距離巡航ミサイルの試射を行い、同ミサイルは、朝鮮の領土と領海上空に設定された楕円および8字形飛行軌道に沿って7580秒間(約2時間)飛行して1500キロメートル先の標的に命中、成功したと報じた。また同通信は、中部山岳地帯に機動して800キロメートル界線の標的地域を打撃することに関する任務を受けた鉄道機動ミサイル連隊が、鉄道機動ミサイルシステムの運営規範と行動順次に従って機動および展開し、15日未明、朝鮮東海上の800キロメートル水域に設定された標的を正確に打撃したと報じた。ミサイルは移動式発射台(TEL)ではなく、列車から発射され、同通信が公開した写真によると、3月に発射したロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の朝鮮版と推定されるという。

米インド太平洋司令部は長距離巡航ミサイルの試射について「北朝鮮が軍事計画の進展を重視し続け、近隣諸国や国際社会の脅威になっていることを浮き彫りにした」と強調、短距離弾道ミサイルの試射については「米国の国民や領土、同盟国に対して直接的な脅威を与えるものではないと判断している。北朝鮮の不法な武器プログラムが状況を不安定にさせることを確認させるだけ」と述べた。米国務省は「北朝鮮のミサイル発射を糾弾する。今回の発射は複数の国連安保理決議に違反している」とする一方で、「われわれは北朝鮮に対する外交的アプローチに引き続き専念しており、対話に関与する準備ができている」と強調した。韓米日の北朝鮮担当首席代表による協議が14日、東京で行われ、米国務省のソン・キム代表は協議の冒頭、米国と同盟国の安全保障を増進するため目に見える進展を追求するとした上で、「米国は北朝鮮に対する敵対的な意図はない」と述べた。国連安全保障理事会は15日、朝鮮の弾道ミサイル試射を受け非公開の緊急会合を開いたが、安保理としての声明は出さなかった。なお巡航ミサイルの発射は国連の安保理制裁決議の禁止項目ではない。

現在、朝鮮で進められている国防力・戦争抑止力を強化するためのプロセスは、今年1月に開かれた朝鮮労働党第8回大会で採択された路線と方針に沿ったものだとされている。金与正朝鮮労働党副部長は15日の談話で「われわれは誰かを狙い、ある時期を選んで『挑発』しているのではなく、党大会決定貫徹のための国防科学発展・兵器システム開発5カ年計画における初年度の重点課題遂行に向けて通常の自衛的活動を行っている」と述べた。こうした朝鮮の軍事力強化プロセスが進む中、バイデン政権は韓日両政府に共同歩調を取らせながら、人道支援を入口にして、なんとか朝鮮を協議の場に引き出そうと苦心している。朝鮮は対話自体に反対したことはないが、米国が対話と圧迫の二重基準を維持する限り、相手にしないだろう。米国が真に対話局面を望むならば、キム氏の発言「敵対的な意図はない」を言葉だけではなく、行動で明確に示すことから始めなければならない。