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自衛隊の進出の道を開く尹錫悦政権の5段階の経路

【2024年10月11日】

日本は自衛隊の朝鮮半島進出のために安倍首相が政治的条件を、菅首相が外交的条件を、岸田首相が軍事的条件を確保した。岸田政権は防衛予算を増額し、敵基地攻撃能力を明文化し、自衛隊に攻撃兵器を配備しその能力を育成した。安倍、菅、岸田首相と続く過去10余年の期間を経ながら、日本は戦争を遂行できる国家体制を完成してきた。自衛隊進出はすなわち日本が戦争を遂行できる国家への変貌を意味する。岸田首相が推進する自衛隊進出の軍事的条件を確保する上で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は決定的な役割を果たした。民プラスの記事(9月14日)を紹介する(一部省略)。

第1段階「布石」:韓米グローバル包括的戦略同盟へ格上げ

尹錫悦政権は発足から11日後の2022年5月22日に韓米首脳会談を開催し、韓米同盟を「グローバル包括的戦略同盟」へ格上げすることで合意した。最も重要な単語は「グローバル」。2021年に米日同盟が「グローバル同盟」へ格上げされたように、2022年5月には韓米同盟がグローバル同盟へ格上げされた。「グローバル同盟」の重要な点は、韓国と米国が、米国が関心を持つ地球規模の問題について、米国が関与するすべての地域で共に行動することだ。

このように韓国と日本は、米国とそれぞれ「グローバル同盟」体制を確立することにより、「間接的に」連結され始めた。安倍政権時代に悪化した韓日関係が、自衛隊進出を容認する関係へと転換できる布石が打たれた。

第2段階「韓米日の外交的統合」:プノンペンで韓米日軍事同盟の協議が開始

米国が推進する「グローバル同盟」は、中国、ロシア、朝鮮、イランなど、米国の覇権に抵抗する勢力を封鎖しけん制する国々の間に、政治軍事共同体をつくることだ。このために、2022年6月のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議は、NATO30余カ国とアジア4カ国(韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランド)が一堂に会する「グローバル企画」だった。これにより、NATO同盟とアジア同盟は米国の新冷戦戦略の実行のために一つに連結された。

必要なのはアジアの同盟国のネットワークを構築することであり、その出発点が韓米日同盟であった。2022年11月にはプノンペンで韓米日首脳会談が開催され、韓米日「同盟体制」構築に合意する。

安倍首相の路線を継承した岸田首相はこうした機会を逃さなかった。米国とのグローバル同盟、NATOとアジア同盟の統合、韓米日「軍事同盟」構築の流れは、自衛隊進出、戦争を遂行できる国家をつくることが可能な最適の条件となった。

岸田首相は2022年12月に安保関連3文書を改定しながら、こうした流れを本格化した。安保関連3文書は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」を指し、日本の安保政策実行の根幹となる文書。岸田政権は「侵略を抑制する鍵となるのは反撃能力」だとし、「防衛力の抜本的強化」を力説した。日本は反撃能力を「有効な反撃を可能にし、スタンドオフ(敵の射程圏外から攻撃)防衛機能を活用する自衛隊の能力」と規定した。「防衛」という名称を使用するが、実際には敵に対する攻撃能力が自衛隊の能力であるべきだということだ。

このようにプノンペン首脳会談は、岸田政権が自衛隊が攻撃兵器で武装し、戦争を遂行できる日本の国家体制を構築する決定的な契機となった。

第3段階「韓日の外交的統合」:第3者弁済案と韓日シャトル外交の復活

第1段階と第2段階は米国が仲介する「間接的」接近だった。次に韓日の直接の接近が必要だ。このために尹錫悦政権は強制動員「解決策」として第3者弁済案を強行推進し、韓日シャトル首脳会談を推進する。

韓国の財団が国内企業から寄付金を受けて強制労働被害者に賠償する「第3者弁済案」が発表されたのは2023年3月6日。被害者と野党、市民社会団体からの反発、そして全国民的な批判世論は尹錫悦政権には通じなかった。

そして尹錫悦大統領が向かったのはまさに日本。3月16、17日の両日、東京を訪問し、韓日首脳会談を行った。ここで尹錫悦大統領は「韓日関係の新しい出発」を強調し、岸田首相は「未来のための日韓関係」を強調した。

尹錫悦大統領と岸田首相はシャトル外交の再開、韓日軍事情報包括保護協定(GSОMIA)完全正常化、経済安保協議体の発足を正式に決定した。これにより日本は自衛隊進出を阻む最大の障害である「非正常的な韓日関係」を解消した。

2023年3月の第3者弁済案、同年夏の汚染水放流の黙認などは、シャトル外交復活のために尹錫悦大統領が岸田首相に送った「贈り物」だった。

第4段階「韓米日の軍事的統合」:キャンプデービッド首脳会談で韓米日軍事同盟に合意

昨年8月、米大統領の別荘であるキャンプデービッドで開催された韓米日首脳会談は、韓米日関係の歴史に新しい章を開いた。韓米日「軍事同盟」が合意された。もちろん韓米日「軍事同盟」は一般的な形態の同盟ではない。韓日関係の歴史的特殊性により、正式な同盟条約が可能でないことを3首脳は共に認識していた。

韓米日が「キャンプデービッド精神」「キャンプデービッド原則」「3首脳の公約」という3文書を採択し、「同盟条約」の性格を脱却した。しかし、その内容は誰が何と言おうと同盟条約だ。朝中ロを安保上の脅威と規定し、地理的範囲を「インド太平洋およびそれ以外」と設定し、「挑発行為が発生した場合は速やかに協議する」との協議義務を明記し、ミサイル警戒情報のリアルタイム共有、弾道ミサイル防衛協力、毎年の韓米日軍事演習など軍事協力の具体的内容に合意し、同盟の期間を「いまから永遠に」とし、首脳会談と軍事安保分野の閣僚級会談などの協議機構を創設した。

その後、韓米日の軍事的統合は破竹の勢いで進行されている。2024年6月には韓米日軍事演習「フリーダムエッジ」が実施され、7月には韓米日安保協力覚書(MОC)が締結された。安保協力覚書は昨年8月にキャンプデービッドで合意した韓米日「軍事同盟」の出発を意味する。これにより韓米日次元の軍事的統合は事実上、完了した。残るはただひとつ、韓日次元の軍事的統合だけだ。

第5段階「韓日の軍事的統合」:退任を前にした岸田首相の訪韓の理由

退任を前にした岸田首相の訪韓は日韓の軍事的統合のためだった。まさに韓日・物品役務相互提供協定(ACSA)に代表される韓日軍事協力の制度化だ。ACSAとは、兵力を除外した、弾薬・燃料や輸送・医療サービスを必要時に相互提供する協定。韓米日「軍事同盟」が韓米日間の兵力の相互協力と支援を含んでいるため、韓日ACSAが締結されたならば、事実上、韓日軍事同盟締結と同じ効果を生む。韓日ACSA締結はすなわち韓日「軍事同盟」を意味する。

日本外務省所属の研究財団である日本国際問題研究所は2024年2月に、「激動の世界」という副題がついた「戦略年次報告2023」を発刊した。報告書は「日米韓キャンプデービッド会談をより効果的なものにするため、指揮統制分野での協力を深める」ことを求め、「自衛隊が米韓連合軍司令部と国連軍司令部へ連絡要員を派遣する」ことやACSAを締結することを勧告している。

日本国際問題研究所は、戦後の日本外交の基礎を築いた吉田茂氏が創設した「事実上、政府主導の研究機関」である。初代理事長は吉田氏で、現在の所長は安倍政権時代に駐米大使を務めた佐々江賢一郎氏。日本政府の外交指針を提供する役割を担当する研究機関ということだ。

「戦略年次報告2023」で勧告されたことは現在、日本政府の政策として現実化している。日本は自衛隊の統合司令部を設置することにより、指揮統制分野における日米協力を深めている。国連軍司令部と日本を連結するための作業もまた最近、推進されている事案でもある

韓日関係における軍事的統合は、韓日ACSA締結によりステップとして一段落する。岸田首相の訪韓はまさにこのステップを踏む次元のものである。

尹錫悦政権は日本のこうした動きに歩調を合わせている。キム・ソノ国防部次官が8月27日に国会で、韓日ACSAが「われわれの準備態勢を強化する次元で必要な措置」だと発言した。その日の午後、「現在、国防部で協定と関連した内容について検討したことはない」と発言を訂正したが、韓日ACSA締結という尹錫悦政権の「本心」が世間に明らかになったものだ。

尹錫悦政権は昨年6月、陸上自衛隊水陸機動部隊の司令官が訪韓することを許可した。日本の水陸機動部隊は2018年に創設された3000人規模の自衛隊戦略部隊。水陸作戦と沿岸への浸透および作戦などの任務を担当する。

整理すれば、尹錫悦政権は自衛隊進出のための総力外交を繰り広げているということだ。

原文 http://www.minplusnews.com/news/articleView.html?idxno=15297