情勢コーナー

情勢解説

尹大統領弾劾請願、2週間で100万突破…「国民の審判」無視し「独断と専横」続ける政権に国民の怒り

【2024年7月12日】

国会弾劾請願「100万突破」

韓国国会ホームページの国民同意請願に寄せられた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案の発議を求める請願(「尹錫悦大統領弾劾訴追案の即時発議要請に関する請願」)に対し、同意者が7月3日午前に100万人を超えた。

同請願は6月20日に公開され、公開後4日目の23日に請願受け付け要件である「5万人以上の同意」を満たし、24日に法制司法委員会(法司委)に回付された。請願期間は30日間で期限は7月20日まで。

同意者は急増し、尹大統領が梨泰院惨事と関連した陰謀論に同調していたとの発言が公開されてからは、毎日約10万人以上が賛同している。一時は請願サイトへの接続遅延状態が続き、国会側はサイトの増設など対応に追われた。

民主党「請願民意をしっかりと受容」

「100万請願」を受けて第一野党の「共に民主党」では扱いについて考慮中。まずは請願内容を精査し弾劾事由を点検した後に、必要であれば関連の聴聞会を開催する案があがっている。請願では尹大統領の弾劾事由として△海兵隊チェ上等兵殉職事件捜査への外圧疑惑△金建希(キム・ゴニ)大統領夫人のブランドバッグ授受疑惑およびドイツモータース株価操作関与疑惑など△福島原発の放射能汚染水放流のほう助△日帝強制動員問題の「親日」解決法の強行△戦争の危機を助長と5項目を掲げている。

法司委所属のある民主党議員は3日、メディアのインタビューで「100万人をこえた民意を無視してはならない」「請願の最終数を確認し、民意をしっかりと受容しどう受け止めていくのか論議し決定する」と述べた。法司委は9日、聴聞会を19、26日に開催することを可決した。

常任委員会次元では大統領弾劾訴追案の発議権はない。国会在籍議員の過半数150人以上が発議に参与し、在籍議員三分の二の200人以上の賛成で憲法裁判所(憲裁)に弾劾審判を請求できる。憲裁では9人の裁判官の内6人以上の賛成で弾劾が決定する。

尹政権「違法事項・弾劾事由ない」

一方、大統領室と与党「国民の力」は「100万請願」に対し「弾劾は不可能」の立場で対抗している。国民の力のカク・ギュテク首席報道担当は3日、メディアに対し「弾劾請願は国民の自由」としながらも、「弾劾事由がないのは誰が見ても明白だ」と主張した。大統領室の関係者は「明らかな違法事項がない限り、弾劾は可能ではない」「政治的に弾劾に継続して言及しながら、国政がうまく回らない状況をつくり出している」とメディアの質問に答えた。

 こうした政権側の発言に対し民主党のパク・チャンデ代表職務代行兼院内代表は議員総会で「国民の怒りを引き続き無視するならば、国民により追い出されるだろう」「尹大統領と国民の力を断罪し、国の未来と国民の生活を守るために最善を尽くす」と強調した。

拡大・成長する反尹政権の民意

請願者は「尹大統領の就任以後、韓国は総体的危機に直面し、大統領の拒否権行使により民主主義の根幹が揺らいでおり、国を危機に追い込み反省するところのない大統領をこれ以上このままにしてはおけない」「国民の安全と国家の利益を守るという憲法精神を否定する尹大統領の弾劾事由は満ち溢れている」と請願趣旨を明らかにした。市民社会団体などが屋外集会などで展開する主張がそのまま国民請願の形を取ってあらわれた。ここに2週間で100万人をこえる国民の同意が集まった。

尹政権は、総選挙で示された「国民の審判」を謙虚に受け止めて反省し国政の基調を転換するどころか、変わらぬ「独断と専横」の姿勢を堅持し続け、国民の怒りは天を衝く勢いだ。世論調査でも政権の肯定評価は20%台後半から30%台前半、否定評価はその約2倍以上という状況が続いている。

弾劾を実現する上ではまず大統領の違法事実を明らかにしなければならない。諸疑惑に対する特別検察法の導入が欠かせない。そして国会での発議・議決、憲裁の決定。法と手続きがハードルとして続くが、法と手続き以前に今回の請願であらわれた国民の熱気を重要視しなければならない。

「尹政権を許さない」と訴え「尹政権は退陣しろ」と求める反尹政権の民意は、「政権審判」から「100万弾劾請願」へと確実に拡大し成長している。勢いを増す流れは誰も止められない。

※写真-弾劾請願サイト。申請者が殺到し、接続が大幅に遅延している