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尹大統領、総選挙惨敗への立場表明…「反省・謝罪」なく「国政基調の維持」強調

【2024年4月26日】

尹大統領、立場表明 

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は4月16日、テレビ中継された閣議の冒頭発言で、10日に実施された総選挙で与党「国民の力」が惨敗したことについて言及。「今回の総選挙で明らかになった民意を皆が謙虚に受け止めなければならない」とし、「より低い姿勢とより柔軟な態度でより多くコミュニケーションを取り、わたしから民意に耳を傾ける」と強調した。「就任後の2年間、国民だけを見て国益のための道を歩んできたが、国民の期待に及ばなかった」とし、「正しい国政の方向を定め、実践するために最善を尽くしたにもかかわらず、国民が体感できるほどの変化をつくるまでには及ばなかった」との認識を示した。そのうえで、「大きな枠組みでは国民のための政策といっても細かい部分で不足していた」と述べた。また、「国会とも緊密に協力しなければならない」とし、「国民生活の安定のため必要な予算と法案は国会にしっかり説明し、より多くコミュニケーションしなければならない」と強調した。

野党、発言を非難

尹大統領の発言に対し「共に民主党」は、「疎通のない国政運営への反省の代わりに、方向は正しかったが実績が良くなかったという弁明だけ繰り広げた」と厳しく非難。進歩党は「海兵隊員殉職事件、梨泰院惨事、金建希女史の特検については一言もなく、『長ねぎ一束875ウォン(約98円)騒動』に象徴される物価対策への代案提示もなかった」と指摘した。

民意に背く尹大統領は退陣しろ

尹大統領が総選挙の敗北に対する立場を明らかにした。国政運営に対する反省や謝罪はなく、むしろ「わたしは正しかった」としながら、国民が変化を感じるほど速度を出すことができなかったというもの。総選挙で明らかになった民意が間違ったということなのか。立場表明は記者会見ではなく閣議で扱われ、一方的疎通の反省も見られなかった。

尹大統領の発言後、野党と市民社会から一斉に非難の声があがると、大統領室関係者が「尹大統領が非公開会議で『国民の意思をしっかり察し、受け入れることができず申し訳ない』と述べた」と伝えた。「わたしは正しいが、国民が理解できなかった」という姿勢なので、大統領が国民の前で「直接」謝罪できないということなのか。

尹大統領は総選挙期間中に進行した民生討論会を持続し、「尹錫悦式」労働・教育・年金・医療改革を引き続き推進すると明らかにした。大統領室関係者は「国政の方向は正しい。ただ運営スタイル、疎通方式などに問題がないか、これが多数ないし絶対多数意見」だと述べた。国政の「基調刷新」より「基調維持」に重点を置いているのは明らかだ。

総選挙で国民から厳しく審判されても総選挙前と変わるところが一つもない尹大統領。総選挙で民意を示しても変化がないのは「わたしは正しい。国民が間違っている」とする「信念」からなのか。民意に背き国民と対立しようとする尹大統領には退陣の道しかない。

※写真-ソウル駅でのテレビ中継の様子