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情勢解説

韓国総選挙、尹政権を厳しく審判…院内外を貫く反尹戦線で尹政権の早期退陣を!

【2024年4月12日】

韓国総選挙、野党圧勝・与党惨敗

地域区254と比例区46の計300議席を争い4月10日に実施された第22代国会議員総選挙。第一野党「共に民主党」が4年前の総選挙に続いて圧勝を収め、与党「国民の力」は前回に続いて惨敗。主権者である国民は尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権(政府・与党「国民の力」)を厳しく審判した。

地域区では、共に民主党161、国民の力90、進歩党1、「新しい未来」1、改革新党1議席を占めた。比例区では共に民主党・進歩党・新進歩連合と市民社会団体「連合政治市民会議」による選挙連合政党「共に民主連合」14、国民の力の系列政党「国民の未来」18、祖国革新党12、改革新党2議席を獲得した。

共に民主党と共に民主連合で175(改選前156)、進歩党(地域区)と祖国革新党を加えた野党陣営で190議席に迫る。国民の力と国民の未来で108(同114)、国民の力は改憲・弾劾阻止ラインの101議席はこえた。

進歩党は共に民主連合からの2議席に加えて野党一本化を実現した蔚山北区で当選者を出し、選挙前は1議席だったが3人の国会議員を擁することになった。また総選挙と同時に実施された再補欠選挙で富川市議と済州特別自治道議に各1人当選した。正義党と「緑の党」による選挙連合政党「緑の正義党」は当選者を出せず院外政党に転落した。同党重鎮の沈相奵(シム・サンジョン)氏は落選し政界引退を表明した。第3地帯を標榜した「新しい未来」と改革新党。新しい未来は地域区で1人当選し李洛淵(イ・ナギョン)代表は落選した。改革新党は地域区で李俊錫(イ・ジュンソク)代表が辛勝し比例区は2議席を確保した。比例区で候補をたてた祖国革新党は地域区は共に民主党への投票を呼び掛けた。曺国(チョ・グク)代表は当選し国会議員となった。

最終投票率は67.0%で、前回総選挙(66.2%)より0.8ポイント高く、1992年の総選挙(71.9%)に次ぐ高さとなった。

「国民の力」韓委員長、辞任…尹大統領「国政刷新」

共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は11日、総選挙での圧勝について「党への支持と声援に心から感謝申し上げる」としながら、「党の勝利でなく、わが国民の偉大な勝利」とたたえた。

一方、国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委員長は同日、総選挙で惨敗した責任を取って辞任すると表明した。執行部不在の与党で「親尹」対「反尹」の権力争いが本格化するのは避けられない見通し。尹大統領は選挙結果を受けて「総選挙での国民の意思を謙虚に受け止め国政を刷新し、経済と国民の生活安定に向け最善を尽くす」と述べた。韓悳洙(ハン・ドクス)首相は尹大統領に口頭で辞意を伝え、国家安保室を除く首席秘書官級以上の大統領室高官も全員辞意を表明した。

噴出した尹政権審判の民意

無能と無責任、独断と専横、反民生・反民主・反平和、対米追従・対日屈従・対北対決で一貫する尹政権に対し国民は総選挙を通じて厳しく審判した。尹政権の失政・悪政は枚挙にいとまがないが、投票日が迫る中で飛び出した尹大統領の「長ねぎ一束875ウォン(約98円)騒動」(尹大統領がスーパーマーケットを視察した際に、長ねぎの値段を合理的な価格だと述べ、民生破綻の実情を知らないことが露呈した)と、紆余曲折を重ねた前国防長官の李鐘燮(イ・ジョンソプ)駐豪大使の件(海兵隊兵士殉職事件に関連した捜査を避けるため、尹大統領が李氏を駐豪大使に任命し赴任させた)は国民の怒りに対し火に油を注ぐ結果となった。

尹政権審判の民意は日毎にうねりを増しながら、劣勢の中で韓委員長は、李在明代表と曺国代表を裁判中の犯罪者と規定し攻撃する「李曺審判論」を振りかざしたが、これでは有権者の呼応を得るのも難しく、攻勢へと転じることはできなかった。野党、特に進歩政党に対する「運動圏審判」(従北攻撃やアカ攻撃)も党内から選挙への悪影響を憂慮して自重を求める声があがるほどで、保守政党の手垢にまみれた常套手段であることを自認する結果となった。

政権審判の民意は尹政権の長官・次官出身候補を直撃した。選挙戦に身を投じた朴振(パク・ジン)外交部長官をはじめ国家報勲部、産業通商部、国土交通部の各長官、国防部次官らが次々と落選した。一部の候補を除けばすべて支持基盤の強固な嶺南圏(慶尚南北道)で出馬した候補だけが生き延びた。大統領室出身候補らも怒りの民意を避けることはできなかった。政務第1秘書官、政策調整企画官、人事秘書官、自治行政秘書官を務めた候補らが苦杯をなめた。こちらも一部を除いて当選者はほとんど嶺南圏から出ただけだ。

野党の圧勝は尹政権に対する怒りの民意が政権審判として全面的に噴出した結果である。政権審判論が最も強かったのはやはり首都圏だった。共に民主党はソウル48カ所中37カ所、京畿60カ所中53カ所、仁川14カ所中12カ所を獲得、実に首都圏全体122議席中102議席という圧倒的な成績を残した。

また、共に民主連合の結党を背景に共に民主党と進歩党の候補一本化がスムーズに進行され、政権審判論にさらに力を与えた。祖国革新党の出現と曺国代表の鮮明な「尹政権審判」攻勢は、共に民主党と進歩政党への一定の不満も吸収しながら、政権審判の民意を集めることに成功し、新党ながら一挙に12人の国会議員を擁する第3政党の出現となった。

尹政権退陣闘争を力強く推進しよう

選挙を通じて尹政権審判の民意は明確となった。問題は尹大統領がこれからどのような国政基調で国政運営をするかだ。選挙結果を受けた言葉だけの反省や決意だけでは国民は容赦しないだろう。しかし、医学部定員増問題でよく示されたように、この間の尹大統領の独断と固執から判断すると、国政基調が全面的に変更される可能性はほとんどないと見てよい。

それゆえに、総選挙で明らかになった政権審判の民意を政権の早期退陣へと発展させていくことが必要だ。政権審判の民意を土台に、進歩民衆勢力が軸となる政権退陣闘争を院内外を貫く幅広い戦線で力強く推進しながら、汎国民的退陣闘争へと拡大発展させていくことが、政治的、組織的にさらに重要な課題となるだろう。

※写真-出口調査の結果に喜ぶ「共に民主党」幹部ら