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カイスト卒業式で卒業生を強制排除…尹政権、暴力で民主主義を弾圧

【2024年2月23日】

韓国中部・大田にある理工系最高レベルの国立大学、韓国科学技術院(KAIST、カイスト)で2月16日、学位授与式(卒業式)が行われ、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が出席し祝辞を述べた。祝辞の途中、ある卒業生が尹大統領に向けて抗議すると、警護員たちが学生の口をふさぎ、腕や足を持ち上げて会場の外に強制的に連れ出した。

大統領室は「(大統領)警護区域内での警護安全確保や会場の秩序確立のため」に男性を会場から退場させたとして、「法と規定、警護原則による不可避な措置だった」と説明した。

この卒業生は同日午後、X(旧ツイッター)に「富裕層への減税を中止し研究開発(R&D)予算を復元するよう求めた」「これから鎮圧の不当性を明らかにしていく」と投稿。カイスト卒業生らは17日、記者会見を開き、予算削減と強制排除に関連して尹政権を糾弾し謝罪を求めた。

野党はこの弾圧事態を一斉に批判。進歩党のユン・ヒスク常任代表は「尹大統領はカイスト卒業式で『科学強国』のためにR&D予算を大幅拡大すると発言したが、政府は今年のR&D予算を前年対比で15%削減している。こうした予算削減は1991年以来はじめて」と指摘。「選挙が近づけば、なんでも発言できるのか」「口をふさがなければならないのは尹大統領自身ではないのか」と非難した。

先月18日にも「全北特別自治道」発足式で、進歩党のカン・ソンヒ国会議員が尹大統領に「国政基調の転換」を訴えたところ、大統領の警護員に口をふさがれ強制退場させられる事態があった。

尹政権は国会議員の口をふさぎ、今度はカイスト卒業生の口をふさいだ。聞きたくない言葉には耳を傾けようとしない尹大統領、それを忖度し聞かせようとしない大統領室。国民との疎通を拒否する尹大統領には大統領としての資格はない。暴力で民主主義を破壊する政権の末路を尹大統領は考えてみるべきだ。

※写真-警備員に阻止される卒業生