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情勢解説

「朝鮮人強制連行被害者追悼碑」を群馬県が撤去

【2024年2月9日】

「韓日歴史正義平和行動」朝鮮人追悼碑の撤去を非難

日本による植民地時代に徴用された朝鮮半島出身者を追悼するために県立公園「群馬の森」(高崎市)に設置されていた「朝鮮人強制連行被害者追悼碑」を、群馬県が撤去したことについて、韓国の市民団体「歴史正義と平和な韓日関係のための共同行動(韓日歴史正義平和行動)」は2月2日、「追悼碑を強制撤去したのは日本の強制動員の歴史を否定する行為」と非難する声明を出した。声明は「追悼碑には日本の植民地支配・強制動員の歴史を反省し繰り返さないという決意が込められていた」として、「群馬県は歴史の前に恥じなければならない」と指摘した。

追悼碑の撤去を強行した群馬県

追悼碑は2004年に建てられた。日本語と韓国語、英語で「記憶 反省 そして友好」と刻まれている。碑の背面には「朝鮮人に対し、多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、心から反省し、二度と過ちを繰り返さない決意を表明する」などと記されている。

群馬県は2014年、追悼碑の前で開かれた追悼式典の参加者が「朝鮮人強制連行」に言及するなど政治的発言をしたとして、設置更新を不許可とした。「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会(「守る会」)」は県を相手取り訴訟を起こしたが、2022年に最高裁で「守る会」の敗訴が確定した。県は今年1月29日から行政代執行により追悼碑を撤去した。県は「守る会」に対し撤去費用として約3千万円を請求している。

韓国政府「意思疎通している」…群馬県「何も来ていない」

一方、今回の朝鮮人追悼碑の撤去について、韓国の外交部当局者は記者団に「両国の友好関係を阻害しない方向で解決できることを期待している」との立場を改めて示した。別の外交部当局者は23日に「韓日間で必要な意思疎通を行っている」として、同様の立場を表明していた。

これに対し、群馬県の山本一太知事は「(韓国など)外交ルートで何も来ていない」と述べ、上川陽子外相は「自治体の決定事項」としてコメントを回避した。

韓日「友好」…過去の歴史の否定

群馬県が追悼碑の設置期間を更新しない理由にあげたのは、いわゆる「政治的発言」である。しかし、発言は「強制連行の事実を全国に訴え正しい歴史認識を持つようにしたい」「戦争中に強制連行された朝鮮人がいるという事実を記憶することが重要」「日本政府は強制連行の真相究明を誠実に行っていない」など、至極当然の内容であり「政治的」だと非難されるものではない。「朝鮮人強制連行」に排外主義団体が反発し論議が大きくなったからといって、追悼碑を破壊する必要があるのだろうか。

追悼碑の撤去をめぐる韓日両政府間のやり取りは、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と岸田文雄首相がつくり出した韓日「友好」が、未来志向の名のもとに、「友好」を阻害する過去の歴史の消去にあることを如実に示した。