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情勢解説

尹大統領・新年あいさつ―金委員長・中央委総会発言

【2024年1月12日】

労働党中央委総会、金委員長発言

金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が韓国との関係について、「敵対関係」と言及し、南北統一は実現できないとの見解を示した。朝鮮中央通信が12月31日、報じた。

報道によると、金委員長は党中央委員会総会最終日の30日、「北南関係はこれ以上、同族関係ではなく敵対的な国家関係、戦争中にある交戦国関係に完全にこう着した」と発言した。

金委員長は、朝鮮側は半世紀にわたり正当かつ合理的な統一路線と方針を提示し、民族から絶対的な支持を得たほか、世界から共感を呼んだと説明。これに対し、韓国の歴代政権は「北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)の政権崩壊」「吸収統一」を推進しており、これまで10回以上政権が交代したが、何も変わらなかったと指摘した。

金委員長はいつになっても統一は実現できないと結論を下したと強調した上で、韓国を和解と統一の相手とみなすことは「これ以上してはならない錯誤」と説明した。

さらに、来年も核兵器の生産を引き続き拡大する土台をつくると強調した。

朝鮮中央通信は「北南関係を冷静に分析し、対南部門での根本的な方向転換に向けた路線が提示された」と評価した。

一方、統一部当局者は4日、「この間の北の振る舞いは、われわれの自由民主主義体制を揺るがそうとする体制転覆戦術の一環」だとの見方を示し、韓国で過去の総選挙前に起きた北朝鮮の挑発の例を列挙し、「わが国民が北による総選挙介入をはっきりと認識し、警戒心を持つことが重要だ」と強調した。

また、ミラー米国務省報道官は3日(現地時間)、ブリーフィングで「依然として北との対話に期待をかけるのか」との質問に対し、「期待するとは言わないが、究極的に対話が朝鮮半島の完全な非核化を達成するのに最も好ましい方式であり、それを継続して追求するのがわれわれの政策」と述べた。

尹大統領、新年あいさつ

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は1月1日、新年あいさつで「今年上半期に、強化された韓米の拡大抑止システムを完成し、北の核・ミサイルの脅威を根本的に封鎖する」と述べた。また「北の核・ミサイル脅威に備え、韓国型3軸体系の構築をよりスピーディーに進める。韓国は相手の善意に頼る屈従的平和ではなく、力による真の恒久的な平和を構築している」と強調した。

韓国型3軸体系とは、北朝鮮の核・ミサイルへの対応体制。ミサイル発射の兆候を探知して先制攻撃するキルチェーン、発射されたミサイルを迎撃する韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)、北朝鮮から攻撃された場合に指導部などに報復攻撃を行う大量反撃報復(KMPR)からなる。

さらに国民が安心できるサイバー環境をつくるとともに、北朝鮮を含むさまざまなサイバー脅威から国家主要機関と民間の主要施設を徹底的に保護するとした。

一方、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は2日、「大韓民国大統領に送る新年メッセージ」と題した談話を発表し、尹大統領の新年あいさつを取り上げ「われわれに、より圧倒的な核戦力確保へ拍車をかける正当性を与えてくれた」と皮肉った。

戦争の危機を全力で阻止しよう

朝鮮労働党中央委員会総会の結論を要約すれば、朝鮮戦争以後、この半世紀以上推進してきた北の統一原則と方途は妥当であったが、理想的な方途として推進してきた平和統一政策は、日毎に強度を増す米国の対北敵視政策と反北反統一政策に追従する南側当局の反民族的で隷属的な態度により、これ以上実現が不可能になったとする総括だ。

北の平和統一政策はそのように総括され、北の対南政策は公式的に変更された。変更の原因は明確に示された。米国の対北敵視政策と韓国政府の対米追従姿勢が変わらない以上、朝鮮半島における戦争は不可避だと判断し、それに対応する準備をこれまで以上に強固に整えていくとするものだ。

朝鮮がこのように統一政策と対南政策で根本的転換をしたとする「深刻な総括」を公開したにもかかわらず、尹大統領は新年あいさつで、変わらぬ対北対決姿勢を露骨に示し、統一部は総選挙への北の介入に警戒心を持てと強調するありさま。米国はといえば相変わらず「対話」を強調するだけだ。

次第に押し寄せる戦争の危機を阻止する唯一の道は、北を刺激し挑発すれば北を屈服させ変化させることができると考える米国の対北敵視政策の無謀と誤判をすぐさま止めることであり、韓国も無条件の対米追従から抜け出て、国民と民族が生きる道を真摯に探ることである。戦争の危機を全力で阻止しなければならない。