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情勢解説

韓国政府、南北軍事合意の効力停止…尹政権は即時撤回せよ!

【2023年12月8日】

北・軍事偵察衛星発射―南・軍事合意効力停止

朝鮮中央通信は11月22日、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が同日午前に国家航空宇宙技術総局の平壌総合管制所を訪問し、前日夜に発射され、軌道に投入された軍事偵察衛星「万里鏡(※「望遠鏡」を意味する)1号」の作動状況などを確認したと報じた。

金委員長は、太平洋の米領グアム上空で衛星が撮影し22日午前に受信したアンダーソン空軍基地やアプラ港など米軍の主要軍事基地の写真を見た。また「共和国の武力が万里を見下ろす『目』と万里を殴る強力な『拳』の両方を手中に収めた」として、「われわれの威力のある軍事的打撃手段の効用性を高める側面でも、自主防衛のためにも、より多くの偵察衛星を運用する必要性が提起されている」と強調した。「目」とは軍事偵察衛星を、「拳」とは大陸間弾道ミサイル(ICBM)を意味するとみられる。 

韓国政府は22日、北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)の軍事偵察衛星発射を受け、2018年の南北軍事合意における「飛行禁止区域の設定」に関する効力を停止した。韓悳洙(ハン・ドクス)首相主宰の臨時閣議で決定し、訪英中の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が滞在先のロンドンで承認した。韓国は軍事境界線一帯での北朝鮮に対する偵察・監視活動などを再開することになる。

朝鮮は23日、南北軍事合意によって中止していた軍事的措置を復活させると発表。労働新聞は27日、南北軍事合意など南北合意違反の責任は韓国にあると主張し、韓米日・韓米合同訓練を改めて非難した。

韓米日3カ国外相は25日、電話会談を行い、北朝鮮による弾道ミサイル技術を使った軍事偵察衛星発射は国連安全保障理事会(国連安保理)決議の明白な違反だとして強く非難し、3カ国で緊密に連携することも改めて確認した。

国連安保理は北朝鮮の軍事偵察衛星発射を受け、27日に緊急会合を開いたが、常任理事国の中国とロシアが反対し、決議採択など全体としての具体的な対応は取れなかった。

韓国国防部は30日、南北軍事合意について、軍事作戦にさまざまな制限があるため全面的な効力停止が必要だとする立場を示した。

尹政権は軍事合意の効力停止を撤回しろ!

朝鮮の軍事偵察衛星発射を受けて、韓国政府は南北軍事合意の一部効力を停止した。しかし、軍事偵察衛星発射は南北軍事合意の違反ではなく、ましてや韓国も軍事偵察衛星を打ち上げた状況で、効力停止措置は妥当ではない。南北間でこれまで軍事合意の違反があったとしても、軍事合意以後、軍事境界線一帯での南北の軍事衝突やその危険性が減少したのは事実であり、効力停止をする理由も必要もない。

効力停止に伴い早速、南北間で相互の軍事対応が始まる中、韓国国防部は全面的な効力停止が必要だと「火に油を注ぐ」発言をためらわない。

尹大統領の引き続く対北強硬発言、韓国軍にドローン部隊の創設、対北ビラ散布への事実上の黙認などを考慮すると、効力停止の下で偵察・監視だとして対北挑発をするのではないかと憂慮されると同時に、与党に形勢不利とされる来年4月の総選挙に備えて、挑発から引き起こされる軍事衝突を利用した、いわゆる「北風」の整地作業をしているのではとの疑心も湧く。

朝鮮半島の軍事緊張を高める南北軍事合意の効力停止を尹政権は即時撤回すべきだ。