情勢コーナー

情勢解説

韓米日首脳会談…「韓米日パートナーシップの新時代」「韓米日軍事協力を『新たな高み』へ」…対朝鮮・ロシア・中国「韓米日の軍事協力の強化=韓米日軍事同盟化⇒韓米日軍事同盟の構築」のシナリオ

【2023年8月25日】

韓米日3カ国首脳会談

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領、バイデン米大統領、岸田文雄首相は8月18日午前(日本時間19日未明)、ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで会談。3氏は「韓米日パートナーシップの新時代」を宣言し、韓米・日米同盟の連携強化を通じて3カ国の安全保障協力を「新たな高み」に引き上げることで一致。共同声明「キャンプデービッド精神」、3カ国の中長期にわたる協力の指針を示す「キャンプデービッド原則」、「3者協議に関する公約」を採択した。

韓国大統領室によると、3カ国は「3者協議に関する公約」で、共通の利益と安全保障に影響を与える地域的挑戦、挑発、脅威への対応を調整するために迅速な協議を行うよう約束することで合意した。この公約について、大統領室高官は、共同声明のうち域内外の共通の脅威に対する3カ国の即時協議や協力の部分を別途に取りまとめたものだと説明した。

韓米日首脳は、3カ国間の包括的な協力策が網羅された「キャンプデービッド精神」と、今後の韓米日協力の推進過程で堅持すべき原則が盛り込まれた「キャンプデービッド原則」を通じて、3カ国の協力を制度化するための会議の定例化、協議体の新設などに合意した。具体的には韓米日首脳会談を少なくとも年1回以上開き、これに加え、外相、防衛相、商務・産業相、安全保障担当高官がそれぞれ最低年1回以上の協議を開催する。財務相会議も新設して定例化について協議する方針。安保協力分野では、北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)が発射したミサイル情報を即時共有するシステムを年内に稼働し、北朝鮮の核・ミサイル体制の高度化に対応するために増強された弾道ミサイル防衛協力を推進することで一致。3カ国による共同訓練の定例化でも合意した。

また、3カ国首脳は「キャンプデービッド精神」で、中国の南シナ海での海洋権益の主張を貫く攻撃的な行動について、「インド太平洋海域での一方的な現状変更のいかなる試みにも強く反対する」と表明した。3カ国は対北朝鮮での連携強化も確認した。△北朝鮮の完全な非核化と自由で平和的に統一された朝鮮半島への支持△大量破壊兵器および弾道ミサイル開発計画の資金源につながる北朝鮮のサイバー活動に対する懸念表明△拉致被害者・抑留者・国軍捕虜問題の即刻解決に向けた意志の再確認――などが含まれた。経済安保・先端技術分野では、情報共有の拡大とサプライチェーン(供給網)の混乱に対する政策協力を高めるための早期警戒システムの試験事業開始、米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の交渉妥結に向けた韓米日の協力継続などの内容も盛り込まれた。

会談後の共同記者会見で、尹氏は「(韓国)国民は未来志向的な観点から韓日関係の改善と、韓米日協力が重要だと感じている」と述べた。岸田氏は「日米韓パートナーシップの新時代を開いていく。戦略的連携を一層強化する」と強調。バイデン氏は「米韓日協力の新時代だ」としつつ、「防衛協力を前例のないレベルに引き上げる」と語った。

2国間首脳会談

韓米日首脳会談に合わせ2国間首脳会談が開催された。

韓国大統領室によると、韓日首脳会談で両首脳は、韓日関係の改善を踏まえ、さまざまな分野で協力が進められていることを評価。高度化する北朝鮮の核・ミサイルに対応するため、韓米日だけでなく韓日も協力を強化していくことを確認した。

東京電力福島第1原発の処理済み汚染水海洋放出(放射能汚染水海洋投棄)問題は議題にならなかった。尹大統領は韓米日首脳による共同記者会見で「福島問題はきょう議題にはならなかった」として、「国際的に公信力のある国際原子力機関(IAEA)の点検結果を信頼している」と表明。「ただ、計画通り処理されるかは日本や韓国を含め国際社会の責任のある、透明な点検が必要だ」と強調した。

日米首脳会談では、中国やロシア、北朝鮮への抑止力強化を念頭に、マッハ5(音速の5倍)以上で飛行し、レーダー探知が困難な極超音速兵器に対処する新型迎撃ミサイルの共同開発で合意。バイデン氏は「安全保障環境が厳しさを増す中、米日、米韓日協力を深めたい」と述べた。

韓米日の軍事協力の強化=韓米日軍事同盟化⇒韓米日軍事同盟の構築

韓米日3カ国首脳は、首脳会談で採択・発表した「キャンプデービッド精神」「キャンプデービッド原則」「3者協議に関する公約」を通じて、朝鮮・ロシア・中国を域内外の共通の脅威と設定し、これに対抗するための3カ国の軍事協力を決定的に強化するとともに、脅威を受けた際に軍事協力のための迅速な協議を約束する「枠組み」に合意した。その中で△朝鮮が発射したミサイル情報を即時共有するシステムの年内稼働△朝鮮の核・ミサイル体制の高度化に対応する弾道ミサイル防衛協力の推進△3カ国による共同訓練の定例化をあげた。

カービー米国務省報道官は韓米日首脳会談前に、同会談は3カ国軍事同盟のようなものを狙うものではないとことさら強調した。しかし、首脳会談の結果はどうみても「韓米日の軍事協力の強化=韓米日軍事同盟化⇒韓米日軍事同盟の構築」のシナリオを明確に示したといえるもの。

米国の新冷戦覇権戦略に沿いながら、韓米日3カ国首脳は軍事協力の決定的な強化を宣言した。朝鮮のみならずロシアと中国も強く反発し、域内の軍事緊張が激化するのは間違いない。停戦協定締結70年を迎え、平和協定を展望しながら朝鮮半島の平和が切実に求められるこの時に、朝鮮半島と東アジアに戦争の危機をもたらす「韓米日の軍事協力の強化=韓米日軍事同盟化⇒韓米日軍事同盟の構築」を許してはならない。