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情勢解説

五松水害惨事…繰り返される惨事、トップは責任回避

【2023年8月4日】

五松水害惨事 

国務総理室は7月28日、韓国中部の忠清北道清州市五松で起きた地下車道の浸水事故に関する監察調査結果を発表。10日間、5機関を観察した国務総理室は行政中心複合都市建設庁8人、忠清北道9人、清州市6人、忠清北道警察庁6人、忠清北道消防本部2人、工事現場関係者2人を検察に捜査依頼した。あわせて行政中心複合都市建設庁長、忠清北道行政副知事、清州市興徳区警察署長、清州市副市長、忠清北道消防本部長職務代理は人事措置される予定。

容疑としては、市民からの通報もあったにもかかわらず事故前に通行規制などの適正な措置を取らなかった点、事故の原因となった近隣河川の堤防の臨時工事の管理・監督を怠った件などがあげられている。

同事故は15日に起きた。大雨により堤防が決壊して川の水が地下車道に流れ込み、バスや乗用車など17台が浸水。14人が死亡し、10人が負傷した。韓国では7月に降り続いた大雨により、47人が死亡し3人が行方不明となっているほか、住宅や道路などで1万件以上の被害が発生した。

地下車道の浸水事故による犠牲者の遺家族協議会が26日に結成され、合同焼香所の延長運営、聖域のない真相究明と責任者の処罰を要求した。

大統領室によると尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は24日、韓悳洙(ハン・ドクス)首相との定例会合で、「気候変動による異常気象が日常化している」として、関係官庁によるタスクフォースを立ち上げ、災害対応システムを全面的に見直すよう指示した。

トップは責任回避

金栄煥(キム・ヨンファン)忠清北道知事は17日に大統領主宰のオンライン会議でようやく五松浸水事故について謝罪、20日には合同焼香所を訪れ「(自分が)そこ(五松)に行ったからと変わるものはないと思う」と、遺家族の神経を逆なでする発言をした。

また、与党「国民の力」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)大邱市長は15日にゴルフをしていたことが明らかになり、党員資格停止10カ月の処分を受けている。

忠清北道知事と清州市長は今回、監察から外れたが、道副知事と道副市長は人事措置(更迭)される。知事と市長は選挙で選ばれ任期があるからというのが表向きの理由のようだが、理由にはならない。副は正を補佐する立場にあるだけで、正の責任を負わせる必要はない。知事と市長の責任は問われなければならない。

尹大統領は国民の生命と安全を守れ

尹大統領は水害後に「気候変動による異常気象が日常化している」として指示を出したが、昨年も半地下部屋で浸水による犠牲者が出ており、その反省もないまま対応は後手に回っている。大統領はなによりも国民の生命と安全を守らなければならない。朴槿恵(パク・クネ)政権下でセウォル号惨事、尹政権下で梨泰院惨事に続いて五松惨事が発生した。惨事は繰り返されトップは責任を取らない。尹大統領は朴大統領の末路に自身を重ねてみるべきだろう。