情勢コーナー
IAEA報告書…日本政府に免罪符、屈辱外交続ける韓国政府
【2023年7月14日】
IAEA事務局長、福島汚染水海洋投棄「基準に合致」…日本、準備進める
東京電力福島第1原発の敷地内にたまる放射性物質トリチウムを含む汚染水(※日本政府は「処理水」)の海洋投棄(※日本政府は「放出」)計画を巡り、岸田文雄首相は7月4日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長と首相官邸で面会。計画について、規定の安全基準に合致すると結論付けたIAEAの包括報告書を受け取った。報告書は放出が人体や環境に与える影響は極めて低いとの見方も示した。岸田首相は今後、「夏ごろ」としてきた放出開始時期を最終判断する。
韓国政府、IAEA報告書「尊重」
韓国政府の朴購然(パク・グヨン)国務調整室第1次長は5日、政府ソウル庁舎で行った定例会見で「IAEAは国際的に合意された権威ある機関であるため、そこで(結論を)下したことに対して尊重するという政府の基本的立場は以前から申し上げてきた」とした上で、「今回も同様だ」と述べた。一方、IAEAの報告書の内容については「分析を進めている」として判断を留保した。
韓国政府は7日、汚染水海洋投棄計画の安全性を検証した報告書を公表した。報告書では「計画通り行われれば、(放射性物質の)排出基準と目標値に適合し、IAEAなどの国際基準に合致する」と判断した。韓国政府は韓国原子力安全技術院(KINS)が中心となり、2021年8月から汚染水の海洋放出の安全性を検証してきた。
グロッシ事務局長は8日、訪韓し劉国熙(ユ・グッキ)原子力安全委員長、朴振(パク・ジン)外交部長官、共に民主党の議員らと面談。グロッシ事務局長は抗議行動により仁川空港から2時間余り出ることができず、議員からは痛烈な批判を浴びた。
朝鮮政府、IAEAを非難
朝鮮政府は9日、国土環境保護省対外事業局長の談話としてIAEAを非難する声明を出した。朝鮮中央通信が報じた。
朝鮮は汚染水海洋投棄について、人類の生命と安全、生態環境を危機に陥れると批判。その上で「想像するだけでおぞましい放射能汚染水の海洋投棄計画を積極的にかばい助長している」とIAEAを非難した。グロッシ事務局長については、朝鮮の核開発を批判する一方で日本の汚染水海洋投棄を擁護しているとして「極端なダブルスタンダードの典型」と断じた。
米国政府、IAEA報告書「支持」
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は7日の記者会見で、汚染水海洋投棄について「IAEA報告書は優れた国際機関による専門的な分析に基づいている」と述べ、支持する考えを示した。サリバン氏はまた、韓国政府が処理水の安全性を認める独自の検証結果を発表したことについて「非常に建設的だ」と評価した。
IAEA報告書…与「謙虚に受け入れる」、野「空っぽの報告書」
与党「国民の力」は4日、IAEA報告書に対し、「国際社会の中枢国家として結果を謙虚に受け入れなければならない」との首席報道官論評を発表した。野党「共に民主党」の「福島原発汚染水海洋投棄阻止対策委員会」は同日出した立場文で、「IAEAは国際機関として汚染水の安全性を検証する責任を事実上放棄した」とし、報告書を中身のない「空っぽの報告書」と非難した。野党はハンガーストライキ、座り込み、決意大会など計画阻止行動を展開中。
市民団体と漁業団体で構成する「汚染水海洋投棄阻止共同行動」は8日、「第4回全国行動の日」を開催し反対の声を上げた。
韓日間で計画阻止連帯闘争
野党「進歩党」代表団(団長、カン・ソンヒ議員)が、汚染水海洋投棄計画の撤回を求めるため3~5日まで訪日し、首相官邸やIAEA東京地域事務所などの前でデモを行い、抗議の書簡を伝達した。
共に民主党と無所属の議員(ユン・ミヒャン議員を含む)計11人からなる議員団も10~12日に訪日し、計画阻止のための行動を展開した。日本からは社会民主党の議員らが6日に訪韓し野党と連帯した。(※東京での行動は次号で報告)
日本政府に免罪符を与えたIAEA、対日屈辱外交を続ける韓国政府
福島原発汚染水海洋投棄に対するIAEAの最終報告書が公開されたが、予想通り「処理水が放出されても人と環境に及ぼす影響は微々たるもの」との結論だ。
そもそも、IAEAは核の平和的(民生)利用すなわち原発の安全運用を担当する国際機構に過ぎない。史上初となる原発汚染水投棄による海洋の安全を検証する権威も能力も備えていない。案の定、IAEAは海洋汚染および水産物の安全などを検証するための積極的な措置を取らず、安全性は確認できなかった。さらに、IAEAは報告書で「IAEAと(IAEAの)会員国は報告書の使用により発生しうる結果になんら責任を負わない」と言及。放出は「安全」だと評価しておきながら、責任は放棄した。このような報告書をどうして信頼できるだろうか。
日本政府はIAEAの報告書で安全性が認められたと放出計画を積極推進。IAEAは日本政府に免罪符を与えた。韓国政府は、85パーセントの国民が汚染水海洋投棄に「反対・不安」だと世論調査結果が示しているにもかかわらず、IAEA報告書を「尊重する」、自身の報告書も「IAEAなどの国際基準に合致する」として、なんら対策を取ろうとしない。NATO首脳会議(7月10~15日、リトアニア)を機に開かれる韓日首脳会談で議題に取り上げるべきなのに、大統領室は「議題は決まっていない」「日本側から言及があれば大統領が必要な話をする」と全く他人事。こうした無気力で傍観的な姿勢は対日屈辱外交の延長線上から必然的に生まれたものだ。
米国政府は安全保障上の観点から韓米日3カ国の連携を重視し、無条件で韓日関係の「改善」を後押しする立場で安全性は眼中にない。
韓国の国民世論を背景にした汎国民的な反対闘争と、ますます連携が強まる韓日連帯闘争、そして国際世論の結合で、汚染水海洋投棄を阻止しなければならない。