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尹政権、国家安保戦略を発表…朝鮮半島の政治軍事的緊張を増大させるばかり

【2023年6月16日】

尹政権、国家安保戦略を発表

尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の安全保障戦略をまとめた最上位の指針「国家安保戦略 自由・平和・繁栄のグローバル中枢国家」が6月7日、発表された。文在寅(ムン・ジェイン)前政権が2018年に「平和・繁栄の朝鮮半島」実現をテーマにした国家安保戦略を出してから5年ぶりの改定となった。

今回は、北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)の核問題への平和的なアプローチを土台に朝鮮半島における平和定着を最優先にした前政権とは異なり、韓米同盟および韓米日安保協力を強化し、北朝鮮に対しても「原則を通じた南北関係の正常化」を推進することを基調として示した。大統領室は前政権との比較表を参考資料として提供するなど、前政権との違いを強調した。

 

南北関係

北朝鮮の核・ミサイルについて、最も優先して対応するべき安保脅威とし、「北の核・ミサイル脅威に能動的に対応するため、韓国独自の対応能力を画期的に補強する」と表明。脅威の高まりで、韓米同盟や韓米日の安保協力がかつてなく重要になっていると訴え、抑止力強化の方針を示した。前政権では韓米日の協力に関連する記述もほとんど盛り込まれなかったが、今回は新しい水準で韓米日協力を向上させるという方針が繰り返し示された。前政権は北朝鮮の核脅威に関して特別な記述をせず、当時の南北首脳会談、朝米首脳会談に触れ、「北の核問題の平和的解決が可視化している」と紹介していた。また、非核化ロードマップの主要段階として朝鮮戦争の終戦宣言と平和協定の締結を掲げていたが、今回はいずれも登場しない。

韓日関係

韓日関係に関連する部分で前政権は「歴史歪曲および独島に対する不当な主張などに断固として対応する」と主張したが、今回は論調を改めた。現政権は「日本と自由や民主主義、人権といった普遍的価値を共有しながら、朝鮮半島と地域・グローバルレベルの協力を強化する」とした。3月の強制動員被害者(元「徴用工」)訴訟問題の解決策発表と、その後の韓日首脳間のシャトル外交復活で、「関係正常化という目標を目に見える形で達成した」と強調し、1998年の韓日共同宣言の精神を受け継ぎ、過去を直視しつつ新しい未来をつくると訴えた。

緊張を増大させる安保戦略

尹政権の国家安保戦略を文政権のそれと比較すればするほど明らかなのは、北に対しては「対話と交渉」ではなく「対決と圧力」、「朝鮮半島の非核化」に対しては「平和的解決」ではなく「拡大核抑止力の強化」、日本に対しては「歴史清算」ではなく「未来志向」、そして「南北(民族)共助」ではなく「韓米共助・韓米日共助」ということだ。

米国に追従し対北敵視政策を継続し日本を含めて強化するだけでは、「南北関係の正常化」を実現することは到底不可能だ。また、北の核・ミサイルの高度化に対して、韓米にはこれを抑制する手段・方法がないこともこの間、明らかになっている。国家安保戦略には、こうした現実を踏まえた具体的な政策が見当たらない。根本的に見直さなければ、朝鮮半島の政治軍事的緊張は増大するばかりだ。