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情勢解説

福島汚染水、尹政権は視察団派遣で放流承認へ?…日本の放流方針は既定路線

【2023年6月2日】

韓国視察団の派遣には合意

東京電力福島第1原発にたまる処理済み汚染水の海洋放出問題を巡り、日本に派遣される韓国の視察団について、外交部は5月9日の国会外交統一委員会に提出した報告書で、「独自に汚染水処理の安全性を重層的に検討・評価する機会が確保された」と説明した。外交部は視察団が汚染水関連施設を点検し、科学的・技術的な分析に必要な情報を把握する方針だと明らかにした。だが、西村康稔経済産業相は9日の記者会見で視察団について、汚染水の安全性の評価・確認を行うものではないと表明し、韓国側と異なる見解を示した。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と岸田文雄首相は7日の首脳会談で、汚染水の海洋放出に対する韓国国民の懸念を踏まえ、韓国政府と機関の専門家らでつくる視察団を派遣することで一致した。

視察団、福島原発を視察

韓国政府の視察団は25日、外務省、経済産業省、東京電力、原子力規制委員会との技術会議を最後に、日本での公式日程を終了した。視察団の団長を務める原子力安全委員会の劉国熙(ユ・グッキ)委員長は同日午後、外務省で記者団に対し「視察に関連する部分は早いうちにまとめ、説明する。今回の視察を通じて確認したこともあり、追加資料も要請した」と述べた。また「資料を受け取ってから分析し確認する作業を進めなければならない。この作業が終わってから最終的かつ総合的な評価内容を公開する」と説明した。21日に訪日した視察団は23日と24日の2日間、福島原発を視察した。

広がる放流反対運動

第一野党「共に民主党」は26日、最高委員会議を開き、福島汚染水放出に反対し、世論喚起を図りながら政府に対する圧力を強めていくことを確認した。院内では国会検証特別委員会構成を促す国会決議案の採択や視察団に対する聴聞会の開催などを推進し、院外では集会や署名活動を展開する方針。

環境運動連合が世論調査会社リサーチビューに依頼した世論調査(全国18歳以上の青年男女1000人を対象に19~22日に実施)の結果(25日発表)によると、85.4%が汚染水放流に反対と答え、性別・年齢・地域・政治志向(保守・中道・進歩など)に関係なく反対が圧倒的に多かった。

韓国政府は放流に反対し日本政府は放流を断念すべき

視察団について、韓国側は「安全性の検討・評価の機会」としたのに対し、日本側は「安全性の評価・確認を行うものではない」と真っ向から否定。深刻な見解差だが、その後どうなったのかは不明だ。

尹政権の対日屈辱外交によりもたらされた「韓日正常化」の波は、予想通りあらゆる韓日懸案に広がっている。汚染水放流問題も視察団という形式行為を通じて、韓国側の譲歩を土台に日本側の主張がそのまま通る方向へと進んでいる。日本の放流方針は既定路線だ。

市民社会団体や漁業関連団体に加えて野党も反対に立ち上がった。国民の反対世論に依拠して汎国民的運動を展開し、日本の汚染水放流を断念させなければならない。