情勢コーナー

情勢解説

G7広島サミット…ウクライナ支援・ロシア制裁、中国包囲、対北敵視…陣営対決の新冷戦体制を固める

【2023年5月29日】

共同声明発表

先進7カ国国首脳会議(G7サミット)が5月19~21日、広島市内で開催され、20日に共同声明を発表した。

声明では、北のミサイル発射を無謀な行動だとし、発射を強行すれば迅速で統一のとれた強力な国際的対応に直面すると警告した。

中国の経済的強圧に対応する具体的な措置をあげ、これに共感すると表明。中国を「デカップリング(供給網から排除)」しないとしながらも、非常に重要な供給網において中国に対する依存を減らすとした。

ウクライナ戦争については「包括的で公正で持続的な平和が訪れる時まで、ウクライナに変わらぬ支援をする」と強調しロシアへの制裁強化をあげた。

福島第一原子力発電所の汚染水放流と関連して、IAEAの独立的な検証を支持すると表明。

また「核軍縮・非拡散」の目標を込めた声明「広島ビジョン」を発表した。

中国は猛反発

中国はG7共同声明に対し「強烈な不満と決然とした反対」を表明。中国外交部の報道官は論評で「G7は中国の厳重な憂慮にもかかわらず、中国関連の議題を勝手に扱い、中国を誹謗・攻撃し、乱暴に内政干渉した」と抗議した。

またG7が「経済的強圧(中国の表現は脅迫)」をとりあげたことについては、「独自制裁を大々的に施行し、デカップリングとネットワーク断絶をする米国こそ、経済・貿易を政治化し武器にする真の『脅迫者』」だと応戦した。

韓日首脳が慰霊碑を参拝

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と岸田首相は21日、広島平和記念公園を訪れ韓国人原爆犠牲者慰霊碑を共に参拝した。

G7首脳らは19日、同公園を訪れ原爆慰霊碑に献花し、サミットの日程を開始した。

クァッド首脳会談

米国、日本、オーストラリア、インドで構成する安保協力体・クァッドの首脳は20日、会談後に共同声明を発表。北の弾道ミサイル発射と核兵器追及を糾弾し、安保理決議の順守、挑発の自制、対話に乗り出すことを求めた。

韓米日首脳会談

尹大統領とバイデン大統領、岸田首相は21日、G7サミットを機に首脳会談を持った。

韓国の大統領室は同日、首脳会談では3カ国間の連携を新たなレベルに発展させることで合意したと伝えた。大統領室の李度運(イ・ドウン)報道官は、韓米日が1月の岸田首相の訪米と4月の尹大統領の国賓訪米、韓日が相次いで首脳会談を開催したことなどで関係を強化したことに言及。「(3カ国の)首脳は会談で対北抑止力の強化はもちろん、法治に基づく自由で開かれた国際秩序を強固にするため、連携を強化することで一致した」と説明。また3カ国は北のミサイルの警戒情報の即時共有など安全保障協力とインド太平洋戦略に関する連携の強化のほか、経済安保、太平洋諸国に対する関与など、さまざまな分野での協力を深めることを申し合わせたという。

またバイデン大統領は米ワシントンでの韓米日首脳会談の開催を提案した。会談は早ければ7月にも開催される見込み。

歴史清算を無視した韓米日、核に執着する保有国

日本は侵略戦争と植民地支配に対して謝罪し責任を負わなければならない。同様に、韓国は強制動員被害者に対する謝罪と賠償を日本に要求しなければならない。そして米国は原爆使用に対して謝罪し責任を負わなければならない。同様に、日本はそのことを米国に要求しなければならない。そしてG7の核兵器保有国は軍事対決と核威嚇をやめ核廃絶に責任を持たなければならない。

しかし、韓米日3カ国はG7サミットにおいて、歴史清算を無視し負うべき責任から顔をそむけた。バイデン大統領は原爆投下について一言も発することなく、岸田首相も問うことはなかった。韓日両首脳は慰霊碑を共に参拝するというイベント行為で歴史清算をますます遠景に追いやっている。被爆地の名前を冠した広島ビジョンでは、核兵器の抑止力を評価し核廃絶に背を向けた。

先進国クラブ・G7サミットは、3カ国共助、特に軍事協力を強化するために歴史清算を無視し責任を相互に免罪しあう韓米日と、核兵器に執着し新冷戦対決政策に突き進む米国を軸とする核保有国の姿勢が余すところなく示された一大ショーであったといえる。