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情勢解説

米国政府が韓国政府を盗聴、流出文書に「ウクライナへの武器供与」…尹政権は「盗聴はない」「文書は偽」と強弁

【2023年4月21日】
米国、盗聴・文書流出

米紙ニューヨーク・タイムズは4月8日(現地時間)、ウクライナ戦争に関する米軍の機密文書がソーシャルメディアに流出した事件と関連し、米国政府(中央情報局CIA)が韓国など同盟国を傍受(盗聴)していたことが明らかになったとした上で、流出文書の中に、韓国の金聖翰(キム・ソンハン)前国家安保室長や李文熙(イ・ムニ)前外交秘書官ら国家安保室の高官が、ウクライナに対する兵器の迂回(うかい)供与を議論する内容も含まれていたと報じた。これはシギント(※通信、電磁波、信号等の、主として傍受を利用した諜報・諜報活動のこと)により確保した情報という。金氏は3月末に辞任し外交秘書官も交代している。韓国政府はウクライナに殺傷能力を持つ兵器を供与しないという姿勢をとっている。

米連邦捜査局(FBI)は13日、今回の文書流出事件に絡み空軍州兵のジャック・テシェイラ容疑者を逮捕したと発表した。

尹政権「盗聴はない」「文書は偽」

韓国大統領室は当初、「確定した事実ではない」「米側の調査を見守る」としていたが、11日に△韓米の国防長官は該当文書の相当数が偽造されたものだと意見が一致した△韓米情報同盟を通じて信頼・協力をさらに強化する△大統領室への盗聴は根拠のない偽の疑惑であることを明らかにすると公式立場を表明した。金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長も、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の訪米準備のため訪れたワシントンで記者団に、「米国がわれわれに何らかの悪意を持って(傍受)したという状況は発見されていない」と強調した。

野党・市民社会団体は糾弾

これに対し第一野党「共に民主党」は「盗聴が事実ならば明白な主権侵害であり安保惨事」だと非難。14日には同党の李在明(イ・ジェミョン)代表が「対等な主権国家として堂々と真相究明を要求し、米国政府は公式謝罪すべきだ」と主張した。野党・正義党は12日、金泰孝氏の発言を取り上げ「善意で盗聴したというのか」と反論した。全国民衆行動は11日、大統領室近隣で記者会見を開き「同盟だと握手しながら背後では盗聴する米国と、これに一言もいえない尹政権は糾弾されて当然」だとし、尹政権に米国への抗議と事件の解明を求めた。参与連帯も「韓米両政府は盗聴疑惑の事実関係を明らかにすべき」との声明を発表した。

対米追従深める尹政権 

米国の韓国政府に対する盗聴と機密文書流出事件。第一に、尹政権は「該当文書の相当数が偽造」「盗聴は根拠のない偽の疑惑」だと主張するなら、その根拠を示すべきである。盗聴された政府が盗聴した政府をかばう必要は全くない。第二に、主権国家として韓国は米国に真相究明と謝罪を要求すべきであり、それに米国は真摯(しんし)に応えるべきである。信頼と協力の韓米同盟と強調するならばなおさらだ。次に流出文書で明らかになった内容、すなわちウクライナへの武器(弾薬)提供について韓米両政府は真相を明らかにすべきであり、供与が事実ならばしかるべき措置が取られなければならない。

尹大統領は今月下旬に国賓として訪米しバイデン大統領と会談する。今回の件で前のめりともいえる対米追従姿勢をあらわした尹政権。3月の韓日首脳会談で示した屈辱外交に続いて、米国に対しても屈辱外交を全面展開することだろう。主権と国益を売り渡し米日への従属を一層深める尹政権を厳しく糾弾しなければならない。