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情勢解説

「徴用工」訴訟問題、韓国政府が解決案を公表…対日屈辱外交を進める尹政権

【2023年1月20日】

公開討論会開催、政府案発表

韓日関係の最大の懸案となっている「徴用被害者(徴用工)」の訴訟問題を巡り、韓国外交部と超党派の韓日議員連盟(韓日議連)の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)会長は12月12日、問題解決に向けた公開討論会を共催した。政府は韓国の徴用被害者が日本企業からの賠償に代わり第三者から弁済を受けることが可能との認識を示したが、被害者側が求めてきた日本の被告企業の資金拠出や日本企業と政府の謝罪などが政府の解決案に含まれておらず、被害者側は激しく反発した。外交部は第三者による弁済を行う場合、政府として原告の被害者と遺族に直接説明し、受け取りの意思を尋ね、同意を求める過程を必ず経ると強調した。主体は政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」とする方向。外交部は討論会での発表内容は「最終案ではない」としながらも、追加開催は明言しなかった。

この日の討論会は徴用問題の解決に向けた事実上最後の意見集約の場で、政府が追って発表する解決策の骨子になるとみられる。

被害者側と野党・市民団体は猛反発

被害者側を支援する市民団体「民族問題研究所」のキム・ヨンファン対外協力室長、「日帝強制動員市民の集まり」の李国彦(イ・グクォン)代表、原告代理人の林宰成(イム・ジェソン)弁護士らは討論会後、記者団に対し、討論会は「形式的」だったと指摘し、旧正月(1月22日)連休以降に政府の解決案に反対する世論の形成に取り組む計画を明らかにした。李代表はメディアのインタビューに答えて、「政府が人権侵害の事件を単なる金の問題に転落させた」と主張。徴用問題は単なる債権・債務の関係ではなく人権侵害事件だとし、「補償は副次的な問題で謝罪が先だ」と強調した。また、韓国政府が韓国企業から金を集めて賠償を肩代わりすれば、日本企業に徴用被害者への賠償を命じた大法院(最高裁)の判決が間違いだとする、日本政府の主張を韓国政府が認める形になると指摘。「強制動員問題に関するわれわれの主張の根拠と論理そのものを韓国政府が自ら崩すことになる」と懸念を示した。

また、野党「共に民主党」・正義党、無所属の国会議員32人と市民社会団体「歴史正義と平和な韓日関係のための共同行動(韓日歴史正義平和行動)」は国会前で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に対し、「非常時局宣言」とする記者会見を開き、「屈辱的な解決案を直ちに撤回せよ」と要求した。

政府案発表後、すぐさま対日外交開始

韓日議連の所属議員10人が12日、松野博一官房長官らと面会するため訪日。与党「国民の力」からは韓日議連の鄭会長や金碩基(キム・ソッキ)副会長ら5人、野党「共に民主党」からは議連の尹昊重(ユン・ホジュン)幹事長や金漢正(キム・ハンジョン)常任幹事ら5人が参加した。朴振(パク・ジン)外交部長官は13日、林芳正外相と新年のあいさつを兼ねた電話会談を行い、徴用訴訟問題などについて議論した。外交部によると、両氏は韓日関係の発展や諸懸案の解決のため、緊密な意思疎通を継続していくことで一致したという。

変わらぬ日本政府の姿勢

岸田文雄首相は14日(日本時間15日)、訪問先の米ワシントンで内外記者会見を行った。韓国政府が徴用被害者訴訟問題の解決案を公表したことに関し、「コメントは控える」と論評を避けたうえで、「早期解決を図る首脳間の合意があり、外交当局の努力を続けてもらいたい」と強調した。首相は今後の日韓関係について「健全な形に戻し、さらに発展させるため、引き続き緊密に意思疎通を図りたい」と表明。同時に、「1965年の国交正常化以来築いてきた友好関係の基盤」に沿う必要があるとし、「徴用工」問題などは同年の日韓請求権協定で解決済みとの立場は譲らない方針を改めて示した。 

対日屈辱外交を進める尹政権

尹政権は徴用被害者訴訟問題を解決するためにとしながら、結局は司法判決を無視し、日本政府・関連企業の謝罪も賠償もなく、被害者の主張と心情を踏みにじる一方的な「解決案」を公表した。新冷戦覇権戦略とインド太平洋政策を掲げて韓米日の軍事同盟化を急ぐ米国の意向を背景に、韓日関係「改善」の名のもとに、日本帝国主義による侵略戦争と植民地支配の歴史清算を無視し、日本政府に対し低姿勢の屈辱的な外交を尹政権は本格的に開始した。しかし、日本政府は「解決済み」の立場を堅持し、米国政府もこれを支持している。民族の自主権と国家主権を放棄し、米国に無条件で追従し日本に全面的に協力する尹政権を厳しく糾弾する。