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[記者手帳] 梨泰院大惨事に韓米演習の強行は必要か?
【2022年11月10日】
統一ニュース 2022年11月2日
イ・スンヒョン記者
大韓民国ソウル特別市龍山区梨泰院で10月29日夕方8時30分ごろ、青年ら156人(11月1日午前11時時点)が圧死する大惨事が起こった。
まだ重傷者が多く死亡者はさらに増えるものと予想されるが、どのような理由であれ惨事の被害者に自らの死に責任を負うなんら理由はないのは明らかだ。
理由の如何を問わず、全的に根本的な事故の責任は当然、国民の生命と安全に責任を負うべき国家と政府にある。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も事故の翌30日午前、談話を通じて11月5日までの国家哀悼期間を発表し、「国民の生命と安全に責任を負う大統領として、心が重く悲しみに耐えない」と心境を明らかにした。
大統領は事故の収拾策と共に地域の祝祭、民間行事に至るまで取り消しや緊急点検を実施することを指示し、こうした決定については、すべての国民が緊急であり哀しみの状況だと認識しているため当然受け入れた。
だが、前例のない事故に対し発生から3日過ぎた11月1日になってようやく、世論の動向をみて警察庁長官と龍山区長、ソウル市長らが謝罪の意を明らかにしたのには失望した。
さらに意外であり驚いたのは、10月31日から計画された韓米合同空軍演習「ビジラントストーム(Vigilant STORM)」が強行された事実だ。
大多数の国民が未曾有の大惨事に直面し、日常の平和と安全に対する疑心と衝撃に包まれている中で、大統領は「国民の生命と安全に対する責任」を負うべきだとの意識と意志を持っているのだろうか?
すべての国家行事と地方自治体の行事はもちろん、民間行事まで取り消したり緊急点検を支持したりは真剣に考えてのことだろうかと疑問まで湧く。
ほかでもなく、朝鮮半島における軍事的葛藤と激化が明らかに予想される韓米合同空中演習「ビジラントストーム」が10月31日から強行されたからだ。
6・15南側委員会と全国民衆行動をはじめとする市民社会団体においても、梨泰院惨事に対する国民の哀悼を勘案し最小限の抗議行動へと自制するとの立場を数日前に明らかにしたところに、政府が乗り出してまさに対決的な軍事行動を展開する必要があるのかということだ。
北側も慎重な態度とみえる。
北の外務省報道官は31日に発表した談話で、「米国と南側の持続的で無謀な軍事行動により、朝鮮半島と周辺地域の情勢は再び強対強の対決局面に入った」とし、「ビジラントストームを引き続き強行する場合、引き起こされるすべての結果は米国が責任を負うことになる」と警告した。
米国を脅威だと狙いを定めるだけで、惨事に直面した南側をあえて挙論しなかったとの指摘が提起されている。
統一部の関係者は1日、これに対し「朝鮮半島の緊張を高める原因がまるでわが方の定例的・防御的演習のせいだと北は誤導しており、政府は現情勢が北の無謀な核・ミサイル開発によるものであることを明らかにする」との原論的な立場に言及した。
平和と統一を目標とする戦略的接近は消えてしまい、慣性的な敵視だけ寂しく残ったのではないか、本当にもどかしい状況だ。
原文
http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=206538