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朝鮮が憲法改定…大統領府、「総合的に検討」…李政権は合同軍事演習の中止を
朝鮮が憲法改定
朝鮮が朝鮮半島の北側地域のみを領土と規定する条項を新設するとともに、「祖国統一」に関する内容を削除するなど、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が提唱した「2国家論」を反映した憲法改定を行った。また先代の国家建設・統一業績を削除したほか、国務委員長を「国家元首」と定義し、核兵器の使用権限を初めて明記するなど金委員長の地位と権限を大幅に強化した。統一部が5月6日に公開した新憲法全文で分かった。
統一部が公開した資料によると、旧憲法(2023年9月改定)の序文や本文にあった「北半部」「祖国統一」「社会主義の完全な勝利」など、南北を同族とする関係や統一の概念が全て削除された。
具体的には、旧憲法第9条の「社会主義の完全な勝利を成し遂げ、自主、平和統一、民族大団結の原則で祖国統一を実現するために闘争する」などの部分が削られた。
金委員長は2023年末に南北関係を「敵対的な2国家」と宣言し、24年1月の最高人民会議(国会に相当)では、韓国について「第1の敵対国」と憲法に明記する必要性を強調したほか、領土条項の新設や統一などの文言の削除を指示した。
新設の第2条では「領域は、北を中華人民共和国とロシア連邦、南を大韓民国と接している領土、およびそれに基づき設定された領海、領空を含む」と規定した。ただ、南側の陸上・海上の境界線についての具体的な説明はない。
また「2国家論」が反映された一方で、韓国を「敵対国」とする条項や表現はない。
大統領府、「総合的に検討」
青瓦台(大統領府)関係者は7日、朝鮮の憲法改定について「政府は総合的検討に基づき朝鮮半島平和共存政策を一貫して推進していく」と述べた。
李政権は合同軍事演習の中止を
現在の南北関係は、韓国の「平和共存論」と朝鮮の「2国家論」が相容れられないまま並立し、交流が断絶し遮断された状況にある。
朝鮮の「2国家論」については、「敵対国」とする表現がなかったために「安堵(あんど)」したり、「平和共存論」との共通性が生まれたと恣意(しい)的に解釈する声がある。だが、金委員長のこの間の発言に基本的に変化がないことから、朝鮮側の認識は変わっていないと見るのが妥当だろう。
一方、李在明(イ・ジェミョン)政権が掲げる「平和共存論」については、統一部は「南北間の平和共存の制度化(※補足①)」(南北関係発展基本計画)として目標化し、「体制の尊重・吸収統一の排除・敵対行為の禁止」を対北3原則として定めた。李大統領は機会あるごとに3原則に言及し強調している。
鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官は「2国家論」に関連し、昨年9月に「南北は事実上二つの国だが、永久分断の意味ではない」とし、「暫定的に統一に向かう過程で生まれた特殊関係の中で国家性を認めること(※補足①)」だと発言した。
「平和共存」はあくまでも統一への過程であり、最終目標ではない。「平和共存=永久分断」となってはならず、最終目標はいうまでもなく統一である。
対北3原則は相互関係にあり、憲法条項(※補足②)とも関連するが、なによりも、その具体化と実践が重要だ。特に最優先すべきは「敵対行為の禁止」であり、これは「対北ドローン攻撃の中止と謝罪」程度でよしとするものではない。戦略資産を動員する韓米・韓米日合同軍事演習こそが敵対行為の最たるものであり、朝鮮は強く反発している。国民主権政府を自任する李政権には、国家主権・自主権を発揮し米国と堂々と渡り合い、軍事演習の中止を実現するよう望みたい。それこそが、李政権が「平和共存」の扉を開くための第一歩である。
※補足① 統一部は18日に発刊した統一白書(情勢短信参照)で南北関係を「平和的な二つの国家」と規定したことについて、同部関係者は19日に「平和的な二つの国家」関係は「南北間の平和共存の制度化」に向けて統一部が検討中の構想の一つであるとした上で、「これは北を法的な国家として認めることでは決してない」とし、「北の政治的実体と国家性を認めるという土台の上で政策を推進しようという趣旨」と強調した。「北の政治的実体と国家性は認める」「法的な国家として認めない」とするが、論理矛盾を露呈しているようでもあり、見解が整理されていない。
補足② 韓国憲法は第3条で「大韓民国の領土は、韓(※朝鮮)半島およびその附属島嶼(※とうしょ、島々)とする」とし、朝鮮の存在を否定し朝鮮半島全体を韓国の領土としている。第4条では「大韓民国は、統一を指向し、自由民主的基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立して、これを推進する」としている。自由民主的基本秩序による統一は、朝鮮の体制を否定し吸収統一を意味することになる。
(5月20日)
※写真-今年3月に実施された韓米合同軍事演習「フリーダム・シールド」



