情勢コーナー
韓米「ファクトシート」、李政権は対米従属から自主外交の道へ
「ファクトシート」発表、国防費増額・武器購入・米軍支援
韓米両政府は11月14日、関税・安全保障分野の交渉結果を盛り込んだ「共同説明資料(共同ファクトシート)」の内容が最終確定したと発表した。ファクトシートにおける関税交渉と対米投資に関する詳細説明は、これまで発表されたものと大きく異なるところはなかった。しかし、この間知られなかった安保関連の公約、すなわち韓米安保同盟の包括的テーマである「同盟の現代化」の名目で合意した事案については、指摘と批判をしておかなければならない。
ファクトシートによると、韓国が国防費を国内総生産(GDP)比で3.5%に引き上げ、米国製軍事装備購入のために2030年までに250億ドル(約3兆9千億円)を支出し、在韓米軍に330億ドル(約5兆2千億円)相当の包括的支援を提供することが確認される。
魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長はファクトシート発表後の記者会見で、330億ドルは駐韓米軍駐留費の支援金と土地、光熱費など直間接費用をすべて合計したものと説明した。しかし、来年の駐留費支援金は国会で承認されたところでは10億ドル(約1千600億円)水準であること、トランプ米大統領が平素から「韓国は1年に100億ドル(約1兆6千億円)出すべき」だと吹っかけて主張してきたことを勘案すると、330億ドルには疑問符が付く。その計算過程がどうなっているのか明らかにすべきだ。
国防費増額についてもなぜ必要なのか説明はなかった。250億ドルについてはF-35Aステルス戦闘機と早期警戒機、各種ヘリコプターを購入するという。言うまでもなく米国は同盟国に国防費負担をさせ、これを通じて自国の軍事産業を支援することが目的であり、結局、韓国はこれに順応してしまった。
さらに問題なのは駐留費支援と国防費増額が示す方向性だ。韓米は「北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)を含め同盟に対するすべての域内の脅威」に対処し、「両岸問題における一方的な現状変更に反対する」と明らかにすることで、中国に対するけん制を公式化した。「同盟の現代化」とは一言で表現すれば、韓国を対中前進基地につくりあげることだが、原潜(政府は「核推進潜水艦」と呼称)建造も含めて、まさにその方向へと進んでいる。こうした動きは対米従属を加速化し域内の葛藤を増大させるだけだ。
市民社会、「ファクトシート」糾弾
ファクトシートの内容に対し市民社会から糾弾の声があがった。
自主統一平和連帯(平和連帯)と「トランプの威嚇(脅威)阻止 共同行動」は15日、ソウル光化門と米大使館一帯で「米国の経済・安保収奪阻止、主権と生存権を守る市民行動」として集会とデモ行進を展開。
各界からの発言の中で平和連帯のイ・ホンジョン常任代表議長は前日に発表した声明を引用しながら、△安保分野の合意も深刻であり、米国の要求を受容し国防費増額と武器購入、駐韓米軍の支援を約束した△対米従属の深化へとつながる核推進潜水艦の導入、韓米同盟の活動範囲の拡張も問題△過去に「北朝鮮の非核化」要求を前面に掲げて平和交渉の扉を閉じてしまった。すでに失敗した道を繰り返してはならないと主張した。
朝鮮、「ファクトシート」とSCМ声明を非難
朝鮮は朝鮮中央通信の18日の論評を通じて「ファクトシート」と韓米定例安保協議(SCM、4日ソウル)の共同声明(14日発表)について非難した。
論評では「われわれの合法的な安全上の憂慮を露骨に無視し、地域情勢の緊張をさらに激化させている」とし、「わが国家に変わりなく敵対的でいようとする米韓の対決的企図が改めて公式化、政策化された。国家の主権と安全利益、地域の平和守護のためのより当為的で現実対応的な措置を取っていく」との立場を示した。
これに対し大統領室は18日、「北側への敵対や対決の意思はない」とした上で、「南北間の緊張緩和と信頼回復に向けて一貫した努力を傾けていく」と述べた。
李政権は自主外交の展開を
米国第1主義を掲げるトランプ政権による関税・投資強要と安保脅威は不当極まりないもので、最大限、糾弾しなければならない。そして、この強要と脅威はあれこれと交渉する事案ではなく、国民主権を守るための自主外交をどれだけ展開し貫徹できるかを示す闘争対象である。いま、主権者国民は国民主権政府を自任する李政権に対し、自らが掲げた政策基調である「韓米同盟重視」と「国益中心の実用外交」のどちらに重きを置くのかを問うている。李政権はこれにこたえなければならない。主権を守るために立ちあがった市民による「光の革命」の中から、国民主権政府が誕生したことを忘れてはならない。
(11月26日)
※韓米合意を糾弾する平和連帯と共同行動のメンバー



