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情勢解説

李在明大統領、「光復節」式典で「対北3大基調」を発表

李大統領、「日本との共生・協力を模索」「北への敵対行為を行わない」

李在明(イ・ジェミョン)大統領は8月15日、日本の植民地支配からの解放記念日「光復節」の式典で演説。韓日関係について「両国は長い間、屈曲した歴史を共有してきたため、関係の確立は常に重要な課題だ」とした上で、「過去を直視しながらも、未来に進む知恵を発揮しなければならないときだ」と強調した。そして「国益中心の実用外交を原則として、(首脳間の相互訪問)シャトル外交を通じて頻繁に会い、率直に話し合いながら、日本と未来志向の共生・協力の道を模索する」と表明した。日本政府に対しては「過去のつらい歴史を直視し、両国の信頼が損なわれないよう努力してくれると期待する」と呼びかけた。

南北関係について「現在の北側の体制を尊重し、いかなる形態の吸収統一も追求しない」とした上で、一切の敵対行為を行う意思がないことを明言し、今後も一貫して緊張緩和と信頼回復のための措置を取ると表明した。続けて、南北は敵対関係ではなく、互いの体制を尊重し認めて平和的統一を目指す過程にある特殊な関係だとして、2000年の南北共同宣言、07年の南北首脳宣言(10.4宣言)、18年の板門店宣言、同年の平壌共同宣言を尊重し、可能な内容は直ちに履行する考えを示した。さらに「南北間の偶発的衝突防止と軍事的信頼構築のため、南北軍事合意を先制・段階的に復活させる」とし、北側が信頼を回復して対話の再開に応じることに期待した。

李大統領、在日同胞らに特別メッセージ

李大統領は15日、在日同胞(韓国人)に向け「血と汗と涙の中でもいつも輝く愛国心を発揮した在日同胞の歴史を韓国は永遠に忘れない」とする特別メッセージを発表した。李大統領は「80年前に奪われた光を取り戻したのは在日同胞の献身があったから」とし、「在日同胞は過酷な労働現場で言葉では言い表せない苦痛を体験し、広島や長崎で残酷な被害にあったにも関わらず、常に祖国に助けの手を差し伸べた」と強調した。また、海外で暮らす韓国系住民全体に向けた特別メッセージも発表された。

李大統領、国民任命式で「国民が主人の国へ」

李大統領の「国民任命式」が15日夜、ソウル・光化門広場で開催された。李大統領は「国民に捧げる手紙」を朗読し、「大韓民国の主権者の忠実な働き手として国民だけを信じて『国民が主人の国』『国民が幸せな国』に向かって直進する」と表明した。

「『慰安婦』被害者たたえる日」記念式典開催

公式記念日「日本軍『慰安婦』被害者をたたえる日」の14日、ソウル市内で記念式典が開かれ、被害者・李容洙(イ・ヨンス)さんと国会、政府、市民団体の関係者など約200人が出席した。女性家族部の長官代行を務める申英淑(シン・ヨンスク)次官は「33年前に故金学順(キム・ハクスン)さんが沈黙を破って初めて被害を証言し、その勇気ある叫びは歴史的真実を明らかにする転換点になった」としながら、被害者の苦しみは現在進行形の歴史として残っていると指摘。全ての政策推進において被害者中心主義の原則を堅持し、「慰安婦」問題を最後まで責任を負うべき国家的課題として認識、実践すると誓った。李大統領は映像メッセージを寄せた。

統一部、「南北の信頼回復に集中」

統一部の具炳杉(ク・ビョンサム)報道官は18日の定例会見で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権が推進した南北統一構想「統一ドクトリン」を破棄し、南北の信頼回復に集中するとの方針を述べた。具氏は、李大統領が光復節式典の演説で「北側の体制を尊重し、いかなる形態の吸収統一も追求せず、一切の敵対行為を行わない」という対北3大メッセージを提示したと説明。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の「統一ドクトリン」における「反北吸収統一」と「自由の北進論」を破棄し、平和共存の対北政策の基調を明確にしたものだと説明した。

主権(自主)を発揮し平和を実現しよう

李大統領は光復節式典の演説で△北側の体制を尊重する△吸収統一を追求しない△敵対行為をしないとする対北政策の基調(統一部「対北3大メッセージ」)を明らかにした。さらに南北首脳間の合意を尊重し、特に軍事合意を先制・段階的に復活させるとした。緊張緩和措置を通じて信頼回復を図り対話再開へとつなげようとの構想であり、すでに対北宣伝ビラ散布の中止、対北拡声器宣伝の中止といった先行措置がとられている。基調、構想、措置とどれも大いに評価すべきものだ。

しかし、光復節3日後の18日から韓米合同軍事演習「乙支フリーダムシールド」が大々的に実施されている。一部演習が猛暑を理由に9月に延期されたとはいえ、同演習は核演習を含む対北軍事演習であり、朝鮮が最大最強の敵対行為とみなし警戒する軍事演習だ。対北3大メッセージには「敵対行為をしない」が含まれるが、韓米合同軍事演習は敵対行為に該当しないということなのか。合同軍事演習に対する認識と姿勢はあいまいなままでは済まされない。米国に対し合同軍事演習の中止を提案し実現してこそ、朝鮮の態度変化を展望しながら、平和・統一構想を具体的に進展させることが可能だと言えるだろう。

国民主権の守護を求めて闘った広場の市民は、米国による韓国に対する経済収奪・安保威嚇を許してはならないとして、李政権に国家主権を堂々と行使するよう求めながら、政権の背中を押している。日本に対する歴史正義の実現要求においても同様の姿勢だ。李大統領は23日に東京で韓日首脳会談を、25日(現地時間)に米ワシントンで韓米首脳会談を行う。国家主権すなわち韓国の自主権を発揮する外交こそが、李大統領が掲げる「国益重視の実用外交」であることを明確に示す場である。

(2025年8月20日)

※写真-光復節式典で演説する李在明大統領