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情勢解説

李政権、スピード感もった国政運営…対米・対日外交が試金石

金建希、特検捜査開始

金建希(キム・ゴニ)に絡む疑惑を政府から独立して捜査する特別検察官が7月2日、正式に捜査を開始した。特別検察官の閔中基(ミン・ジュンギ)氏は記者団に対し、「さまざまな疑問にしっかりとした答えを与えられるよう最善を尽くす」と述べた。特別検察官法によると、捜査対象は金氏の輸入車ディーラー「ドイツ・モーターズ」の株価操作疑惑や政治ブローカー、ミョン・テギュン氏と共に国政選挙に介入した疑惑など16件。

「国民の力」臨時トップ、就任会見

「国民の力」の宋彦錫(ソン・オンソク)院内代表は2日、臨時執行部トップである非常対策委員長就任の記者会見を国会で開き、12.3「非常戒厳」宣言について、「責任を痛感し、改めて心から謝罪する」として、「こうした過ちを二度と繰り返さないという覚悟を刻みつけ、再出発する」と述べた。宋氏は院内代表と非常対策委員長を兼任する。

李大統領、就任後初の記者会見

李在明(イ・ジェミョン)大統領は3日、就任1カ月に合わせ、旧大統領府の青瓦台で初めての記者会見を開いた。李大統領は冒頭発言で、「この30日間は一日一日を熾烈(しれつ)に走ってきた時間だった」と振り返り、「生活の苦痛を取り除き、再び成長・飛躍する国をつくることが最優先課題」として、「何より崩壊した国民生活の回復に全力を尽くしている」と述べた。

外交分野では、「(韓国は)国際舞台に復帰した」として、「最大の懸案の一つである韓米の通商交渉も国益中心の実用外交の原則に基づき、互恵的かつ共生可能な結果を導き出すことに最善を尽くす」と強調した。

対北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)政策については、南北軍事境界線付近での拡声器による対北朝鮮宣伝放送を中止し、北朝鮮も韓国に向けた「騒音放送」を停止したことを取り上げ、「朝鮮半島の平和と安定を確保し、国民の日常が揺るがない国の第一歩を踏み出した」と評価。「平和の好循環はいくらでも可能だ」とし、「南北の意思疎通を再開し、対話と協力で朝鮮半島の平和と共存の道を切り開く」との考えを明らかにした。

また、三つの特別検察官チームが発足したことに言及。「正義の統合に向けた道のりが始まった」として、「国民の命令に従い内乱を完全に終息させ、憲法秩序や民主主義を再建することに中心的な役割を果たすと期待している」と述べた。「権力機関の改革もスピード感を持って推進する」とし、検察などの改革を進める姿勢も改めて示した。

そのうえで、「国民との直接的な意思疎通を日常化、制度化して国政運営に積極的に反映する、名実ともに『国民が主人である国』へ進む」と強調した。

李大統領、金民錫氏を首相に任命

李大統領は3日、同日の国会本会議で可決された金民錫(キム・ミンソク)首相候補の任命同意案を承認した。国会はこの日の本会議で、李大統領が首相候補に指名した金氏の任命同意案を賛成多数で可決した。「国民の力」は、金氏が首相に不適格として採決に不参加。金氏は自身の承認案が国会で可決された直後、国民の意思を天のように敬い、大統領を支え、与野党を超えて議員の知恵を国政に反映させるとSNSに投稿した。

金氏は1985年5月、ソウルの米文化院占拠ろう城闘争に参加した学生のひとり(当時、ソウル大総学生会会長)。政界入り後は、国会議員に当選4回。

金首相は4日、ソン・ミリョン農林畜産食品部長官の留任撤回を要求し大統領室前でろう城中の農民団体「農民の道」幹部を訪ね、解決に向けて協議した。農民の道はろう城を整理した。

野党、李大統領に5・9共同宣言の履行を要求

李大統領は3日、公邸で院内の非交渉団体である5野党(祖国革新党、進歩党、改革新党、基本所得党、社会民主党)の指導部と昼食を兼ねた会同をもった。この場で祖国革新党と進歩党は5・9共同宣言の合意事項である「『社会大改革委員会』の設置」を要求した。同委員会は、改革新党を除いた4野党が「共に民主党」と合意した主要政策課題の実行方案を論議するために、市民社会と野党が参与するガバナンス(統治)体系。

大統領室によると、李大統領は「誠意をもって検討する」と答えた。また、参加者から検察改革の進展状況、農林畜産食品部長官の留任問題、労働懸案の解決および労働界との対話推進など、意見と要求が出され、李大統領は傾聴しながら「検討する」「対策を立てる」などと応じた。

民主労総は李大統領が労働関連課題について積極姿勢を示したことに対し4日、声明で「歓迎し実践を求める」と明らかにし、8日には政府の国政企画委員会と政策協議した。

特別検察官、尹錫悦の逮捕状請求

尹錫悦(ユン・ソンニョル)による「非常戒厳」宣言を巡る内乱事件を政府から独立して捜査する特別検察官チームは6日、尹錫悦に特殊公務執行妨害、大統領警護法違反、職権乱用権利行使妨害、虚偽公文書作成などの容疑を適用し、逮捕状を請求した。尹側は「無理な請求だ」と反発した。(逮捕状が10日未明に発行され逮捕)

李大統領支持率、就任後初の6割超

韓国世論調査会社のリアルメーターが7日に発表した調査結果によると、李大統領の支持率は前週(6月23~27日)に比べ2.4ポイント上昇した62.1%となり、同社調査で就任後初めて60%を超えた。不支持率は2.2ポイント下落した31.4%だった。

調査は6月30日から7月4日まで全国の18歳以上の2508人を対象に実施された。李大統領の支持率は就任から4週連続で上がっている。

5・9共同宣言を誠実・迅速に履行すべき

政権出帆から約40日。李政権はスピード感を持って国政を運営している。南北関係においては、拡声器放送を中止し、ビラ散布も主催団体を説得し中止に至った。北側からの対抗措置はなくなり、「対話と協力」の扉を開く上で、評価すべき先行措置となった。内乱清算については、三つの特別検察官チームの発足により本格的な調査が始まった。特に、首謀者・尹錫悦を再逮捕し徹底追及しなければならないのは言うまでもない。社会大改革については、広場と野党の合意である社会大改革委員会の設置を急ぐべきだ。注目されるのはやはり対米・対日外交。まずはトランプ政権による関税攻勢・安保圧迫にどう対処するかが政権の行方を占う試金石となる。主権者・国民の利益と国家主権を守る姿勢で堂々と交渉に臨まなければならない。

いずれにしても、新政権には広場と野党が合意した5・9共同宣言を基本綱領とし、これを誠実かつ迅速に履行することが求められる。幸い、李政権は意思疎通と対話を重視するとし、野党、農民団体、民主労総などを対象に協議を始めた。記者会見における「名実ともに『国民が主人である国』へ進む」との決意と実践に期待する。

※写真-李在明大統領と野党(非交渉団体)との会同

(2025年7月9日)