情勢コーナー
憲裁、全員一致で尹錫悦罷免を決定…主権者・市民の勝利…終わりではなく始まり

憲裁全員一致で罷免決定
韓国の憲法裁判所(憲裁)は4月4日、昨年12月の「非常戒厳」宣言で国会から弾劾訴追された大統領・尹錫悦(ユン・ソンニョル)に対し、裁判官8人が全員一致で罷免する決定を宣告した。尹錫悦の違憲・違法行為は断罪され、尹錫悦は即刻、大統領職を解かれた。
憲裁は尹政権の政策が野党多数の国会によって実現を阻まれていた事情に一定理解を示す一方で、「これは民主主義の原理に従って解決すべき政治問題」だと指摘。「軍と警察を動員して国会などの憲法機関をき損し、国民の基本的人権を侵害し、憲法守護の義務を投げ捨てた」として、「国民の信任に背いたものであり、憲法守護の観点から容認できない重大な違法行為」だと指弾した。
また「非常戒厳」宣言を必要とする緊急事態は発生していなかったとして、「(過去の軍事政権による)国家緊急権乱用の歴史を再現し、国民を衝撃に陥れ、社会・経済・外交の全分野に混乱を引き起こした」と指摘。「罷免によって得る憲法守護の利益は、罷免による国家的損失を圧倒するほど大きい」と強調した。
憲法と公職選挙法の規定では、大統領の罷免が決まった翌日から60日以内に大統領選挙を実施することになっている。次期大統領選の投開票日は6月3日の火曜日に決定した。
広場と野党、韓統連、罷免決定を歓迎
罷免決定に対し、与党「国民の力」臨時執行部トップの権寧世(クォン・ヨンセ)非常対策委員長は、「残念だが、国民の力は憲裁の決定を重く受け止め、謙虚に受け入れる」とする立場を表明した。
第1野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は国会で立場を表明し、「偉大な国民が偉大な民主共和国、大韓民国を取り戻した」と述べた。
1700以上の市民社会団体で構成する「尹錫悦即刻退陣・社会大改革 非常行動」(非常行動)は立場表明(別掲)を通じて、「内乱首謀者の罷免は主権者・市民の勝利」だとし、「内乱勢力を断罪して内乱を終息させ、主権者・市民の力で社会大改革を完成しよう」と訴えた。
韓統連の宋世一(ソン・セイル)委員長は声明(別掲)を通じ、「憲裁の罷免決定を支持・歓迎する」としながら、内乱勢力の清算・憲政秩序守護・民主政権樹立・社会大改革の課題をあげ、そのための民主連合戦線の構築を主張した。韓統連は4日夕刻、東京のコリアンタウン新大久保で街頭宣伝するなど、宣伝ビラ(ホームページ掲載)を活用し尹錫悦罷免決定を全国で宣伝・広報した。
尹錫悦、罷免承服せず
尹錫悦は4日の罷免決定後、「期待に応えられず、あまりにも残念で申し訳ない」とし、「これまで韓国のために仕事をすることができ、とても光栄だった」とする国民向け談話を発表した。
6日には、自身の支持団体「国民弁護人団」に対し、「若者の皆さんが勇気を失わない限り、わたしたちの未来は明るい」として、「わたしは大統領職から降りたが、いつも皆さんのそばを守る」とのメッセージを出した。
また4日午後5時から約30分間、大統領公邸で権寧世委員長ら与党執行部と面会し、「時間が多くないため、党を中心に大統領選の準備をしっかりして必ず勝利することを願う」と述べた。
これに対し、共に民主党は「内乱の首謀者がまた韓国を揺るがそうとしている」とし、「憲裁の決定に対する承服も、違法な戒厳に関する謝罪もない」と批判する論評を出した。
非常行動、「18次汎市民大行進」実施
非常行動は、1日午後9時から憲裁を取り囲みながら、「憲裁を包囲しろ! 尹錫悦を罷免しろ! 24時間徹夜集中行動」を展開。続けて、3日午後7時に「尹錫悦8対0(裁判官全員一致)罷免のための最終大会」を開催し、その後、徹夜ろう城に入り、憲裁の発表を見守った。4日11時22分、憲裁が罷免決定を発表すると、参加者は一斉に歓声をあげ、勝利の行進をした。
非常行動は、翌5日午後4時から、ソウル光化門で数万人の市民が参加する中、「尹錫悦即刻退陣! 社会大改革! 18次汎市民大行進」を実施した。
非常行動のパク・ソグン共同議長は代表発言で「尹錫悦罷免は終わりではなく、新しい始まりだ」とし、△極右内乱勢力の再執権を阻止する政権交代△内乱勢力清算と社会大改革実現という課題が残っていると強調した。
パク議長は△昨年12月3日、尹錫悦の「非常戒厳」宣言を市民の抵抗と国会の戒厳解除議決で阻止(第1段階)△14日、国会前で200万人が参加する大規模集会が開かれる中、国会で尹錫悦弾劾訴追案可決(第2段階)△南泰嶺と漢南洞で集中行動を繰り広げ尹錫悦を逮捕・拘束・起訴(第3段階)△尹錫悦の法的脱獄(釈放)の危機に抗し非常行動指導部と市民による徹夜断食ろう城で反転攻勢し、憲裁裁判官の全員一致で罷免決定(第4段階)に至ったと、123日間の闘いを整理した。
尹錫悦弾劾審判国会弾劾訴追委員長のチョン・チョンレ国会法制司法委員長(共に民主党)はパク・ウンジョン(祖国革新党)、パク・ソノォン(共に民主党)訴追委員らと共に壇上にあがり、「内乱を擁護し、内乱を扇動し、内乱に加担した者を決して許してはならない」と強調した。
非常行動は社会大改革の12課題△市民が民主共和国の一員となる社会△正義の経済と民生が安定する社会△平和・主権・歴史正義が実現される社会△気候危機の克服と正義の生態系△すべての幸福な生のためのケア中心社会△良好な雇用と普遍的な労働権が保障される社会△生命・安全が守られる社会△すべての尊厳と共存のための性平等・人権社会△言論・情報通信・文化の公共性と表現の自由が保障される社会△食糧主権と食料が保障され地域がいかされる社会△教育と青少年の生に平等を開く社会△内乱の完全な終息と憲政秩序の回復を込めた宣言文を発表した。
再補欠選、「共に民主党」圧勝
再補欠選挙が2日に実施され、共に民主党が自治体首長選と広域・基礎議会選で1カ所(国民の力)を除いて全勝。また、全南・潭陽郡守(郡長)選で祖国革新党は初の自治体首長を誕生させ、釜山教育長選では一本化された進歩系候補が検事出身の親尹候補を破り当選した。
国会議長、改憲提案
禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長(共に民主党)は6日、国会で記者会見を開き、次期大統領選と同時に憲法改定の国民投票を実施することを提案。「非常戒厳」と弾劾によって改憲への国民の共感が強まったと述べ、「3権分立を堅固にするための改憲」を呼び掛けた。
禹議長の提案に国民の力の権寧世委員長は賛意を表明し、「大統領弾劾を機に政治改革に対する国民の熱望が強まっている」と述べた。一方、共に民主党の李在明代表は、大統領の4年2期制導入、戒厳令宣布の条件の厳格化などの改憲の必要性には同意したが、今回の大統領選挙は与党を敗北させ、「内乱を終息させ民主主義を回復することが最優先課題」と述べ、反対の立場を明らかにした。
首相、憲裁裁判官を指名
大統領権限を代行する韓悳洙(ハン・ドクス)首相は8日、10日後に任期が終わる憲裁の所長代行と裁判官の後任に、法制処の李完揆(イ・ワンギュ)処長とソウル高裁の咸尚勲(ハム・サンフン)部長判事を指名した。
これに対し、共に民主党は同日、内乱同調勢力による憲裁掌握の試みだと批判し、「権限争議審判や(効力停止を求める)仮処分申請などの法的対応を検討する」と明らかにした。また韓氏が憲法に違反して権限を乱用したものであり、両名の指名は無効と主張した。
尹錫悦を再拘束し内乱勢力を清算しよう
憲裁が罷免決定を宣告しても、内乱首謀者・尹錫悦はこれを承服するどころか、支持勢力を扇動するかのようなメッセージを発し、「非常戒厳」に対する反省も国民に対する謝罪も一切ない。
与党「国民の力」の指導部は罷免決定後すぐさま尹錫悦を訪問し、同党が内乱勢力であることを一層明確にした。国民の力も尹錫悦と同様、反省も謝罪もなく、何ら責任を取ることもない。何事もなかったかのように平然と大統領選挙に乗り出そうとしている。政党にあるまじき行為と言わざるを得ない。さらには禹議長の改憲提案に便乗して、内乱勢力だとの批判・非難を避けながら戒厳クーデター事態の責任を政治改革の課題にすりかえようと躍起だ。
まさに、尹錫悦罷免は闘いの終わりではなく、闘いの新しい始まりである。検察と裁判所は尹錫悦を再拘束し内乱首謀罪で断罪するよう強く要求する。広場の市民と野党は、国民の力をはじめとする内乱勢力を徹底清算し、内乱勢力の再執権を阻止する政権交代を成し遂げ、社会大改革を実現する道に大きく進み出なければならない。闘いはこれからが正念場だ。
※「非常行動の立場表明」はこちら。
※写真-罷免決定に歓喜の声をあげ勝利の行進をする韓国市民
(2025年4月10日)