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情勢解説

文大統領の終戦宣言提案を支持・歓迎する! 実現のための環境をわが民族の力でつくりだそう!

【2021年10月1日】

文在寅大統領は9月21日、米ニューヨークで開かれた国連総会で一般討論演説を行い、南北米または南北米中が朝鮮半島での戦争終了を宣言することを提案した。文大統領は、朝鮮戦争の終戦宣言こそ朝鮮半島で和解と協力の新たな秩序をつくる重要な出発点になるとの考えを示した。文大統領は国際社会に向けても「朝鮮半島の終戦宣言のために力を集結してもらいたい」と呼び掛け、終戦宣言が実現したときに非核化の不可逆的な進展とともに完全な平和が始まると強調した。来年5月に任期を終える文大統領は、朝鮮半島の平和の始まりは「常に対話と協力だ」とした上で、南北間、朝米間の対話の早期再開を促すとともに、「残りの任期の間、共生と協力の朝鮮半島のために最後まで最善を尽くす」と述べた。

朝鮮中央通信は文大統領の終戦宣言の呼びかけに対するリ・テソン外務次官(23日)、金与正朝鮮労働党副部長(24、25日)の談話を続けて発表。リ次官は時期尚早だとし、「米国の二重基準と敵視政策の撤回は、朝鮮半島情勢の安定と平和保障において最優先的な順位にある」と主張した。金副部長は24日、「相手に対する敵視を撤回するという意味からの終戦宣言は、興味のある提案であり、よい発想であると思う」と評価し、25日には個人的な見解と前置きした上で、「公正性と互いに対する尊重の姿勢が維持されてこそ、はじめて北南間の円滑な疎通がなされるであろうし、ひいては意義ある終戦が時期を逸せずに宣言されるだけでなく、北南共同連絡事務所の再設置、北南首脳対面のような関係改善の諸問題も、建設的な議論を経て早いうちに一つ一つ有意義に、見事に解決することができると思う」と述べた。

文大統領の終戦宣言提案について、プライス米国務省報道官は24日、「南北関係においては南北の対話と関与が良いと信じている」と述べ、米国防総省のカービー報道官は22日、目標は常に朝鮮半島の完全な非核化だとした上で、「終戦宣言の可能性に対する議論は開かれている」と述べた。中国外務省の趙立堅報道官は22日、「朝鮮半島の戦争状態の終結と朝鮮半島の停戦・平和メカニズムへの転換の実現は、朝鮮半島問題の政治的解決のプロセスの重要な内容だ」と述べた。

10・4宣言と板門店宣言で言及され、文大統領が国連演説でも提案し続けてきた終戦宣言は、平和協定締結への筋道をつける具体的な方案であり、評価すべき望ましいことである。また今回、宣言主体の3者と4者を明示したことは、特に米中に当事者としての認識を促したといえる。しかし課題は、終戦宣言の協議が始まり成立へと向かう、そうした対話環境が3者または4者の間で 十分に整っているかどうかだ。南北関係においてはせっかく復旧した通信連絡線が韓米合同軍事演習の強行により稼働せず、ふくらんだ関係改善の希望は一気にしぼんだ。 朝鮮はリ次官の発言が示すように、終戦宣言の前に「米国の二重基準と敵視政策の撤回」が最優先だとしており、米国政府は「終戦宣言を支持する」とは明言していない。中国政府は終戦宣言に前向きだが、いうまでもなく米中は緊張関係にある。こうした複雑な情勢の下で、関係国が終戦宣言へと進むというのは簡単なことではない。

しかし南北が徹底して情勢を主導することで展望を見出すことは可能だ。南北が相互信頼、相互尊重の精神に立ち返り、南側が韓米共助を上回る民族共助の精神を発揮し、南北合意を誠実に実践していく、そのようにして南北関係を主体的に好転させていくことができれば、朝米関係にも好影響を与えるはずであり、終戦宣言に向けた環境が整備されていく可能性は十分にあるといえる。

北側から金副部長が終戦宣言の提案に肯定的な姿勢を示し、さらには南北共同連絡事務所の再設置や南北首脳会談の開催にまで言及した。金副部長の意図は、南北の主導で朝鮮半島情勢を転換させることであり、そのために終戦宣言の提案を一定評価し文大統領に期待をかけている。当然、現政権から次期政権へと平和・統一政策が続くことも望んでいるものと推測できる。文大統領には、残り任期にとらわれず、局面を転換し進展させるために全力をあげ、その成果が次期政権へと引き継がれることが、3回の南北首脳会談を実現し2つの南北合意書を導き出した大統領として、切実に求められている。ボールは南側にある。