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侵入無人機、ビラ散布…軍事緊張煽る尹政権…地域住民・市民社会、ビラ散布中止を要求
【2024年10月25日】
無人機、平壌に侵入しビラ散布
朝鮮外務省は10月11日夜、朝鮮中央通信を通じて「重大声明」を発表し、韓国が3日と9日、10日の深夜に無人機(ドローン)を平壌市の中区域上空に侵入させ、「反共和国政治謀略扇動ビラ」を散布したと主張。「重大な政治・軍事的挑発行為」と非難し、「南部の国境線付近と大韓民国の軍事組織構造を崩壊させるあらゆる攻撃手段を、任意の時刻に直ちに自己活動させる態勢を整える」とし、韓国の無人機が再び朝鮮領空を侵犯した場合は「警告なく直ちに行動に移る」と警告した。声明とともに無人機やビラの写真も公開した。
これに対し、韓国の金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防部長官は「事実かどうかは確認できない」とあいまいな態度を取った。
その後、朝鮮労働党の金与正(キム・ヨジョン)副部長は3回にわたり声明を通じて、「再び無人機が出現すれば、韓国発の無人機と見なすと共に共和国に対する宣戦布告と見なす」と警告した。
地域住民・市民社会、対北ビラ散布の中止を要求
軍事緊張がピークに達する中、「平和と連帯のための境界(軍事境界線に接する)地域住民・宗教・市民社会 連席会議」と自主統一平和連帯、朝鮮半島平和行動は15日、龍山・大統領室庁舎前で、「境界地域住民、市民社会 緊急記者会見」を開催し、南北対立を煽る尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権を糾弾し、対北ビラ散布の中止と地域の安全を求めた。
記者会見では、境界地域の坡州市、漣川郡、江華道の住民が緊張した情勢に不安な心情を吐露し、緊張を煽る対北ビラ散布と対北拡声器放送の中止を訴えた。
民主労総のハム・ジェギュ統一委員長は「尹錫悦政権をひきおろさなければ平和は実現できない」と主張。朝鮮半島平和行動のチェ・スザンナ共同執行委員長は「9月初めから51回も対北ビラ散布が行われているのに、尹政権は何の措置もとっていない」「無人機事件に対し何の返答もできない政府、国民の安全を優先しているのか」と反問した。
19日にも、ソウル徳寿宮の石壁通りで「こうしていては戦争が起こる! 戦争助長する尹錫悦政権退陣! 反戦平和大会」が自主統一平和連帯と全国民衆行動、尹錫悦政権退陣運動本部により開催され、対北ビラ散布を放置し戦争を助長する尹政権の退陣を求めた。続けて22~24日に平和行動を展開した。
朝鮮、無人機「韓国軍と同機種」
朝鮮中央通信の19日の報道によると、朝鮮国防省は「(韓国軍による)重大主権侵害挑発事件の決定的物証の確保と、これに対する客観的かつ科学的捜査を通じ、明確に確認された」と発表し、機体の写真を公開した。
無人機は平壌市安全局が13日に同市内で発見した。国防省などの専門機関が調査した結果、韓国軍のドローン作戦司令部が運用する偵察機と判断したという。
これに対し、韓国軍は「反論する価値もない」とコメントした。
対北ビラ散布を放置し軍事緊張を煽る尹政権は退陣しろ
尹政権は「表現の自由」と「北の人権問題」を盾にしながら、脱北団体などによる対北宣伝ビラの散布を放置することにより、南北の軍事緊張を極度に高めて戦争の危機を引き起こし、境界地域住民の生命と安全を政府が保障することを放棄した。
無人機について尹政権は事実上、無視を決め込んでいる。しかし、平壌往復350キロメートルを航続するにはジェットエンジンを装着し、滑走路で離着陸し、侵入するには監視レーダーを避けることができるステルス型無人機でなければならないといわれる。こうした無人機を民間で所持し発進させることは不可能だ。朝鮮が公開した無人機の写真は、「国軍の日」に登場した韓国軍・ドローン作戦司令部の無人機に酷似している。
国防部が無人機を飛ばしたとすれば、その目的は何だろうか。単なるビラ散布でないことは自明だ。政権危機を転換させるために、国民の目を他に向けるためにということか、それとも朝鮮労働党庁舎など平壌市内の重要地域を上空から偵察するためなのか。いずれにしても真相が明らかにされなければならない。
無人機の侵入が戦争へと飛び火する可能性が非常に大きいことを考えれば、軍事作戦指揮権を保持する駐韓米軍がこのことを知らなかったとは見なし難い。場合によっては米国の責任も問われよう。
対北ビラ散布に反発した朝鮮は対南ゴミ風船を飛ばすことで対抗し、次に韓国が対北拡声器宣伝放送で応じた。そして今回は無人機侵入である。対立がサイクル化しながら、その強度は高まるばかりだ。対立の始まりである対北ビラ散布を徹底して取り締まることが、南北間の軍事緊張を緩和する唯一の道。しかし、尹政権にそれを望むべくもないなら、尹政権には退陣しかないということだ。
※写真- 無人機侵入に抗議する金与正副部長