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「米軍と自衛隊の軍事能力を統合」…米国の意図は?

【2024年4月26日】

バイデン大統領と岸田首相の首脳会談が4月10日、ワシントンで開かれ、両首脳は共同声明「未来のためのグローバルパートナー」を発表した。同声明は、米軍と自衛隊の「作戦及び能力のシームレスな(切れ目のない)統合を可能にする」ため、「それぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる」と明記した。陸海空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」の発足(2025年3月)に合わせ、自衛隊と米軍が一体となり軍事行動を展開できるよう指揮・統制体系を整備するということである。それに伴い米軍を軸とする韓米日軍事一体化(事実上の韓米日軍事同盟)が飛躍的に強化され、自衛隊が朝鮮半島に介入する可能性も大きくなったと憂慮の声があがっている。自主時報(4月17日、パク・ミョンフン記者)の記事を紹介する。

1.米軍・自衛隊の運営統合を明示した米日共同声明を分析

4月10日(米国現地時間)米国ワシントンで米日首脳会談が開かれた。ジョー・バイデン米大統領と日本の岸田文雄首相は米日共同声明「未来のためのグローバルパートナー」で、「自衛隊の指揮・統制を強化する上で、自衛隊の統合作戦司令部を新設する計画を含めて防衛力の根源的強化のために、日本が講じてきた措置を歓迎する」とした。

これと関連して駐日米軍と自衛隊の間で△作戦と軍事能力をシームレスに統合△平時・有事の際の運営と計画を強化し指揮・統制体系の向上などを強調した。ここで米軍と自衛隊を統合し運営するという点に注目しなければならない。米軍との連携を通じて自衛隊が軍事活動ができるよう米国が保証してくれたからだ。

いままで自衛隊は米軍と合同訓練、国連平和維持軍活動、武力が必要なところで実弾を使う任務遂行など制限的に軍事活動をしてきた。にもかかわらず戦争放棄・軍隊保有禁止を規定した平和憲法に隔てられ、戦争を繰り広げる意欲を面と向かって示すことはできなかった。しかし今回の米日共同声明で自衛隊が軍隊として機能できるように司令部を設置、自衛隊の指揮・統制を強化することにし状況が異なった。

米国は米日共同声明で米軍と自衛隊の作戦統合を明示しただけでなく、敵基地先制攻撃を明示した日本の反撃能力も認めた。関連して米国は日本が反撃能力を効果的に開発及び運用できるよう両国の協力を深化することにした。

すなわち、米軍と自衛隊の統合運営・日本の反撃能力認定という二つの軸により、米国は平和憲法を事実上、無力化させたのである。

このために今回の米日首脳会談は敗戦以後、日本の最大の変化、転換点と評価される。

朝日新聞は4月12日の社説で「日米首脳会談は、安保分野での協力の深化が前面に押し出された」とし、「日米を地球規模で協働する『グローバル・パートナー』として位置づけた」と評価した。自衛隊が米軍との連携を通じ、全世界どこでも戦争ができる実質的軍隊になったということだ。

振り返れば第2次世界大戦以後、平和憲法を制定するようにしたのはまさに米国だった。そうしていた米国が日本をソ連と中国に対抗する防波堤にすると判断を変えた。米国の黙認の下、1954年「準軍事組織」の自衛隊が創設され、自衛隊は北・中・ロを牽制し米国と訓練するなど武力活動をしてきた。

このような流れの中から出てきた今回の米日共同声明は、自衛隊が「正常的な軍隊」として機能できるよう米国がしてくれたと言える。

関連して特に注目してみなければならないのは、米日共同声明の「防衛・安全保障の協力強化」項目だ。米軍と自衛隊の統合運営を明示し、自衛隊が武力行使できる根幹である米日安保条約第5条を広く解釈したからである。

両国は「核を含むあらゆる能力を使用」する「(米日安全保障)条約第5条の下での日本の防衛に対する米国のゆるぎない献身を再び表明」しながら、「日本の防衛力と役割を根源的に強化し、条約の下で米国との緊密な連携を強化するもの」だとした。

先立つ1951年、日本が米国に駐日米軍基地を提供する代わり、米国が日本を守ってくれるという内容の米日安保条約が締結された。その後1960年1月19日に改訂・締結された米日安保条約第5条には△米国は日本が外部の武力攻撃を受けた際に日本を防衛する義務を負うこと△日本の施政権(立法、司法、行政の三権を行使する権限)下にある領土内で米軍が武力攻撃を受けた場合、日本はこれを防衛する義務を負うなどの内容が込められた。

米日安保条約第5条は、米国が攻撃される状況で同盟である日本が対応できるという「集団的自衛権」論理を裏付ける。日本は集団的自衛権を広く解釈し、自衛隊が武力を使えると主張してきた。日本に平和憲法を強制した米国が平和憲法の根幹を揺さぶったのである。

ここで一歩踏み出した米国は今回の米日共同声明を通じて「グローバルパートナーシップを構築するためにすべての領域及び次元で協働する」と明らかにし、第5条の範囲を全世界と解釈した。特に「さらに効果的な米日同盟の指揮・統制はとても緊要な地域の安全保障課題に直面しており、抑止力を強化し自由で開かれたインド・太平洋を促進していく」とした。ここには朝鮮半島と東北アジアが含まれるインド・太平洋地域で自衛隊の軍事的役割を高めるという意図が込められた。

米国は沖縄と西南諸島だけでなく、日本と中国が領土紛争中の釣魚島(日本名、尖閣諸島)が第5条の範囲に適用されるとした。米日首脳会談の翌11日、ワシントンで史上初めて開かれた米国・日本・フィリピン3カ国首脳会談では、東シナ海と南シナ海で対中国包囲網を強化することが強調された。

これだけでなく両国は各自、外交・国防担当部署に米日安全保障協議委員会(「米日2+2」)を設置し、これを通じ米軍と自衛隊の協力・連携を発展させることにした。また米日共同情報分析組織(BIAC)を置き、情報収集、警戒監視及び偵察活動で情報共有を深化することにした。 

米日共同声明には△北朝鮮(※正しくは朝鮮、以下同じ)の弾道ミサイル発射を強く非難し前提条件のない外交で復帰するよう要求、日本人拉致問題の解決協力の再確認△ロシアの侵攻を受けたウクライナにゆるぎない支援の合意などの内容も込められた。

このほかに△米国・英国・豪州が共にする安保協議体のオーカス(AUKUS)で日本が量子技術・自律武器など先端軍事技術を共同開発する「ピラー(※柱の意)2」分野に協力することを検討△韓・米・日で毎年、複数領域で共同訓練を実施△2025年から実施される米国・英国・日本の共同訓練の定例化△抑止力強化のためのミサイル、ジェット機など最新武器の共同開発と生産協力△サイバー脅威の共同対応などの内容が込められた。

これらはすべて米国が日本の軍事大国化に翼をつける措置と見られる。

2.米軍・自衛隊の統合…朝鮮半島の危機が高まる

米国の覇権が陰りを見せ影響力が失墜する中、その間、米国の政治圏では日本に軍事的役割を担わせようとの声が高かった。今回の米日共同声明で強調された米軍と自衛隊の間の「シームレスな統合」は、米国の保証の下で自衛隊の役割強化を認める表現と見られる。

日本の視点からは、米軍との連携を通じ自衛隊が軍の役割を認められるようになったという点は歓迎することだ。しかし、だからといって自衛隊が米国の指図に沿ってだけ動く「兵卒」になるのを日本は望むものではない。

日本政府のスポークスマンである林芳正官房長官は4月11日、定例記者会見で「自衛隊と米軍はおのおの独立した系統に従って行動している」とし、「(今年中に出帆させる)自衛隊の統合作戦司令部が米軍の指揮・統制下に入ることはない」と述べた。

岸田首相も自衛隊の統合作戦司令部の新設に関し「どこまでも米日がそれぞれ完結した指揮系統間の調整機能を論議するだけで、米日間で連合司令部を設置しない」と明らかにした。

このような日本の視点は、米国に韓国軍の戦時作戦統制権を引き受けてくれとする尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権など、韓国の親米勢力の視点とは違いがある。米軍の統制にだけ従うというのではなく、自衛隊の自律権を要求しているからだ。

「戦争できる日本」を認めた米国の今回の決定で、遅かれ早かれ自衛隊が朝鮮半島問題に介入する可能性も高くなった。

いままで韓・米・日は主に済州島南方と東海公海上でミサイル防御訓練を実施してきたが、今後は韓国内部で合同訓練をし北朝鮮を刺激することができる。そうなれば北朝鮮と協力する中国とロシアも黙ってはいないだろうと見られる。

つまり、以後、韓米連合司令部と自衛隊が共助を強化すれば、北・中・ロと敵対する韓・米・日の軍事活動が常時化され得る。

今回の米日首脳会談で「韓・米・日対北・中・ロ」の対決構図が一層激化すると予想される。

原文 https://www.jajusibo.com/64769

※写真-日米首脳会談中、会話を交わす両首脳