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情勢解説

4月総選挙をにらんだ尹政権の露骨なメディア掌握…尹政権は退陣しろ!

【2023年11月24日】

民主党、放送通信委員長を弾劾訴追へ

第一野党「共に民主党」は11月9日、放送通信委員会の李東官(イ・ドングァン)委員長に対する弾劾訴追案を国会本会議に提出した。同党は△放送通信委が、5人の定員のうち3人が空席となっている状態で、主要案件を与党系の委員長と副委員長だけの賛成で議決したことは放送通信法に違反し、△放送通信委がフェイクニュースの根絶を理由に放送局に報道の経緯に関する資料の提出を要求し、憲法上の「言論の自由」を侵害したと主張し、放送通信委員長の弾劾を求めた。

弾劾訴追案は本会議に提出された24時間後から72時間以内に採決されなければならない。本会議では放送3法などの法案が採決にかけられ可決された一方、本会議が終了したことで弾劾訴追案を採決に持ち込めなくなった共に民主党は、訴追案を一旦撤回し、今月30日の本会議にあらためて提出することにした。

KBS社長、制作の自主性の侵害と不当な人事を強行

13日に就任したKBSの朴敏(パク・ミン)社長は翌日、記者会見を開き、文在寅(ムン・ジェイン)前政権で任命された前社長のもとで偏った報道をしたことで、KBSは公共放送の重要な価値である公正性を損ない、国民からの信頼を失ったとして謝罪した。

朴社長は「ここ数年間、番組の司会者が片方の政治陣営の肩を持ったり、ゲストの人選が偏っていたりしたことが少なくなかった」と説明した上で、公正性の確保と信頼の回復を経営の最優先課題として掲げると強調した。

一方、朴社長の就任初日から、これまで与党勢力から「偏向放送」と攻撃されていた時事番組が突然編成から外され、出演者が交代させられるなどの事態が発生。全国言論労働組合(言論労組)KBS本部は「今回の措置は放送法で保障された『放送編成の自由と独立』を侵害したもの」だと反発した。

放送通信委、ニュース専門局の筆頭株主変更推進 

放送通信委は16日、ニュース専門テレビ局の聯合ニュースTVとYTNの筆頭株主を学校法人乙支学院と中堅財閥・有進グループの傘下企業にそれぞれ変更する承認審査計画を議決した。

これに対し言論労組は17日、公的な性格を持つニュース専門テレビ局の民営化の動きについて即時中止するよう求め、「筆頭株主の変更を通じて報道専門局を間接的に掌握し、現政権の急落した支持率を引き上げようとするもの」と批判した。

ニュースを24時間体制で伝え、社会的影響力を発揮するニュース専門テレビ局の公的な性格は放送法にも明記されている。同労組は放送通信委に報道の公共性を破壊する株主変更手続きを即時中止するよう求めた。

尹政権の露骨なメディア掌握

成立した放送3法は、公営放送(KBS、MBC、EBS)の理事数を拡大し、理事推薦権限を放送関連学会と視聴者委員会など外部に拡大する内容を骨子とし、市民による推薦委員会が公営放送社長を推薦できるようにもした。これまで公営放送3社の社長は放送通信委を経て推薦・任命され、放送通信委員は政府と国会が推薦・任命してきた。放送3法は現状を民主的に公開的に改善したものといえる。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が任命した李東官委員長は、李明博政権で大統領府報道官、メディア特別補佐官などを歴任し、メディア掌握を陣頭指揮した人物。朴敏社長は文化日報に記者として入社後、社会部長、政治部長、編集局長などを経て最近まで論説委員として在職した保守系メディア人士。李氏には国会で弾劾訴追案が出される予定であり、朴氏は国会人事聴聞会の承認を得られないまま最終的に大統領が任命した。

尹政権は放送3法の本格施行と李委員長への弾劾訴追を念頭にしながら、メディア掌握を急いでいる。いうまでもなく、これは来年4月の総選挙での勝利、さらには次期大統領選挙における保守執権まで想定した「選挙に有利な環境整備」を狙ってのこと。

尹大統領は「国民はいつも正しい」と民意をくみ取る姿勢を一時見せた。しかし、それが本心でないことを、この間の露骨なメディア掌握はあらためて明らかにした。国民を軽視する尹政権には退陣しかない。